【企業訪問】

デジタル化に対応、事業の多角化を推進
富士フイルムカナダ・小清水信彦社長に聞く


写真業界はデジタル化の影響で世界的に変遷を遂げている。従来のカメラ、フィルムはデジタルカメラの進出によりマーケットが大きく塗り替えられた。その真っ只中にいる富士フイルム。新たなビジネスを創出するためにどのような戦略を練っているのだろうか。ミシサウガ市の富士フイルムカナダ社をお訪ねし、小清水信彦(こしみず・のぶひこ)社長にお話をうかがった。


▲富士フイルムカナダ社の小清水信彦社長

富士フイルムカナダ社は、ミシサウガに本社を置きオフィスと倉庫を持っている。その広さは26万スクエアフィート。また、バンクーバーとモントリオールにそれぞれ支店がある。社員は全体で200人強。うち日本人は3人である。
取り扱っている製品は、デジタルカメラ、プリント、映画フィルム、印刷会社用フィルム/プレートなどが主となっている。
小清水社長は昨年3月に着任、ちょうど1年が経過した。
「じつは、以前、1991年から95年までカナダに駐在していました。あのころは、事業の主力はフィルムでした。いわゆる『銀塩フィルム』と呼ばれるものです」
当時のフィルム業界には、イーストマンコダック、富士フイルム、AGFA、コニカの4社があった。そのうち、世界で最初の写真システムを開発したイーストマンコダックはつい最近、デジタル化への対応の遅れなどが原因で経営破たんして再建を目ざしている状態。AGFAは写真から撤退して印刷関係に転向、コニカも写真から撤退した。そうした中で、富士フイルムは Photo 事業を継続している。
世界中に販売網を敷く富士フイルムの会社全体の年間売り上げは2兆円。デジタルカメラの売り上げの占める割合も年々大きくなっている。


▲「X」シリーズの高精細電子ビューファインダー搭載カメラ「X−S1」


▲クラシック調の本体デザイン、世界唯一のハイブリッドビューファインダーを備えた「FinePix X100」


▲レンズ交換式プレミアムカメラ「X-Pro 1」


▲防水機能を備えたデジタルカメラ「XP」シリーズの「XP50」

富士フイルムが、現在、製造販売しているデジタルカメラとしては、「FINEPIX」シリーズのコンパクトカメラ、「X」シリーズの高精細電子ビューファインダー搭載カメラ「X−S1」など。また、レンズ交換式プレミアムカメラ「X-Pro 1」、防水機能を備えたデジタルカメラ「XP」シリーズなどが話題を呼んでいる。旅行先やイベントなどで容易に買えて手軽に撮影できる簡易フイルムカメラ「写ルンです」シリーズの人気も依然として健在だ。
「たしかに、1990年代当時と比較すると、デジタルカメラの普及とともに普通のカメラ、フィルム、プリントの売り上げが急落しています。年間売り上げが前年比で半分、次の年はその2分の1、さらに次の年はその4分の1といった時期がありました。そうした中で、プリントはデジタルカメラからも使うお客様がいるので、横ばいまたは10%減と持ちこたえました。結婚式、旅行、イベント、子供など、ちゃんとデジタルカメラで撮った写真をプリントして保存あるいは人に贈るといった面で需要があります。プリントしてフォトブックやカードにして付加価値を高めるメリットもありますね」
富士フイルム社(古森重隆社長)は、現在、写真・映像のほかに医療、印刷、産業用機材など事業の多角化を図っている。また、グループ会社としてプリント、ファックス、コピーの機能を有する Office 用複合機を取り扱う富士ゼロックスがある。


▲将来カナダでも扱う予定の化粧品「ASTALIFT」(アスタリフト)

また、多角化の一例として、化粧品があげられる。フィルムの製造には乳剤の化学技術を使用するが、これを化粧品にも応用しようというのである。日本でスタートして4年、現在、「ASTALIFT」(アスタリフト)のブランドで日本国内をはじめ、中国、香港などで販売が行われている。将来はカナダでもこの化粧品を扱う予定だという。
富士フイルムでは、レントゲン(X線)フィルムから、世界に先駆けてレントゲン画像のデジタル化を実現し、デジタル画像診断システム「FCR」を築いた。さらに内視鏡システム、血液診断システム、超音波画像診断システムなどの医療機器を開発するなど、人々の健康に関わる「予防」「診断」「治療」の3つの領域でもビジネスを展開している。
「最近、患者さんの顔を診(み)ないでコンピューターのほうを見っぱなしのお医者さんもいらっしゃるという話も聞いたことがあります。デジタル画像なので、町のお医者さんでの専門的な診断がむずかしい場合は、大病院にネットを通じて画像を送り診断してもらうようなネットワークも普及しています」
ここで、富士フイルム社の製品の特色を小清水氏にうかがってみた。
「写真では、何と言っても画像の鮮明さだと思います。弊社は長年にわたってフィルム、画像の研究を重ねてきたので、その成果とでもいえましょう。とにかく『鮮やかな色』が特長です。プリントする場合もノウハウがあるので、鮮やかな写真が出来上がります」
「化粧品 ASTALIFT は、肌や人間の体にいい成分であるコラーゲンを吸収させる化学技術がたいへん優れています。使い続けると肌が若々しくなります。『うるおい成分』が肌にハリと潤いを与えるのです」
さらに医療関連の機器については、こう語る。
「現在、モントリオールのメディカル代理店で弊社のX線フィルムとデジタル画像診断システムを販売しています。今後は、内視鏡、超音波診断システムも取り扱う予定もあります。弊社の優秀な技術が売りですので、医療関係はもっともっと将来性があると見込んでいます」
富士フイルムは、将来に向けてどのようなビジネス構想を抱いているのだろうか。
「デジタル製品をさらにハイエンド、高級な製品として開発していきます。カメラでいえば、値段も張るがそれだけの価値のあるハイエンドのデジタルカメラをこれからもどんどん出していきます」
小清水氏の口調から、デジタル時代の最先端をめざす企業人の強い姿勢が感じられた。

【小清水信彦氏略歴】
1956年、神奈川県秦野(はだの)市生まれ。1980年、京都大学経済学部卒業、富士フイルム入社。営業部、輸出部を経て、1991年から1995年まで富士フイルムカナダ社に勤務、社長のスタッフとしてフィルム関係の仕事を担当。1997年−2003年フィリピン・マニラ事務所所長。2003年−2011年本社事業部で活躍したのち、2011年3月1日、富士フイルムカナダ社長として着任、現在にいたる。

■富士フイルムカナダ社のウェブサイト: www.fujifilm.ca

〈取材・色本信夫〉   (2012年3月29日号)

 
 


 
 
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