【インタビュー】

一休和尚の詩を基にした映画「The Red Thread」
ギネス・ライダー監督に聞く


ギネス・ライダー(Guinness Rider)監督。モントリール生まれのカナダ人だが、名前からお察しの通りアイルランド系である。42歳。これまでに日本で3本の短編映画を製作している。現在は国際的な映画製作および商業プロジェクトの脚本家&監督として活躍している。3月9日、トロントダウンタウンの国際映画フェスティバル会場、tiff. Bell Lightbox で行われた「アイルランド映画祭」に出席するためにトロントを訪れたライダー監督。最新映画「The Red Thread」の製作に向けて熱き心意気をうかがった。


▲次作「The Red Thread」について語るギネス・ライダー監督(3月9日、トロントにて)


▲tiff. Bell Lightbox で開催のアイルランド・フィルム・フェスティバルに参加したギネス・ライダー監督

黒澤明監督「乱」を見て日本映画に引き寄せられる
もともと映画を見るのが好きだったライダー監督は16歳のとき、学校を1日抜けて黒澤明監督の「乱」を見た。そのときの衝撃は今でも強烈に脳裏に残る。
「これまで見た映画とは全くちがっていました。シェークスピアと通じるものがあるけれど、またちがった感覚があり、とりつかれたように4〜5回見に行きました」
そのころはまだ、将来、映画製作に携わることになるとは考えていなかった。ふつうに高校卒業後、モントリオールのコンコルディア大学で英国文学を学んだ。卒業後、教職課程をとって教師の資格を取得した。
1994年、24歳のとき初めて日本へ行く。


▲作品「River」の1シーン


▲「The Red Thread」の基になった一休和尚「狂雲集」の英語版


▲作品「Mol an Oige」に出演している長女の想良(そら)ちゃん(右)と次女のタラちゃん

深い日本とのかかわりあい
ライダー監督が最初に行ったのは宮城県仙台市。
「公文(くもん)教室で英語を教えました」。約7カ月間仙台に住んだあと東京へ。ここで彼の人生を大きく変える出会いがある。現在「The Red Thread」のプロモーターとして奮闘しているライダー夫人、榎本美保さんにめぐり合ったことだ。
約1年間日本に滞在したのち、モントリオールへ戻る。
2000年、再び日本へ。美保さんと結婚し、杉並区阿佐ヶ谷に住む。
日本では俳優で監督の奥田瑛二さんの事務所で3年間働き、奥田さんの監督作品「少女〜AN ADOLESCENT」(2001年)製作に携わった。「このときの経験、そして奥田さんの影響は大きいですね」と語る。
「その後、パナソニック、ソニーなどのミュージック・ビデオを製作したり、アート系企業Zeroフィルム、On the Road Filmsなどで映像製作を経験、コマーシャルの事務所、さらにデマンド、エンジンなどの企業で映像製作に携わっていました」
2007年に監督として初めての短編映画「River」を製作。主演は浅野和之と坂井真紀。この作品は世界の3大陸の映画祭に選出された。「坂井さんはとてもフリーな感覚の人で、雰囲気もフリーなのがとても好きです」。この映画のプロデューサー、山口晋さんにも大いに勉強させられたそうだ。
それから東京の社会縮図を仏教比喩で表現した「Cycle」、子供主演のおとぎ話「Mol an Oige」、サミュエル・ベケットのラジオ番組を基に作った「Twine」などの短編作品がある。

今なぜ「The Red Thread」製作なのか・・・
2009年再びモントリオールへ戻ったライダー監督。TVや映像関係の仕事をこなしながら次作「The Red Thread」(赤い糸)の製作に向け、奔走している。
「この映画は一休宗純、いわゆる一休和尚の詩を基にしたものです。この詩集のひとつのテーマは性であり、彼のいう『色欲を純愛に変えることは、金の山よりも価値のあることです』にもとづいています。一休さんの作品に初めて出会ったのは最初に日本に行ったときで、英語と日本語が対訳になっている詩集でした。ものすごく自由があふれ、私の気持ちとすっかり一致したのです。『The Red Thread』は禅の影響も少しあります」
一休宗純(1394〜1481)は室町時代の臨済宗の僧侶で、一般的にはとんちの優れた和尚さんとして知られている。反面、禅僧にもかかわらず、奔放な性格は世間を驚かせた。そこがライダー監督の一休宗純に魅かれた要因だろう。
「The Red Thread」の登場人物は5人で、うち3人だけがセリフがある。現在役者を選考中だそうだ。この夏に撮影を開始し、秋前には完成させる予定。映画の時間は約10分。
「内容はミステリアスで抽象的かもしれませんが、一休宗純の自由思想を感じてもらうような映画に仕上げるつもりです。現在人にとって自由な感触、考え方はとても大切です」
ここでストーリーをツラツラ書くより、実際に映画を見て、人それぞれに感じとってもらうことの方が大事だろう。

ライダー監督は「The Red Thread」の他にもう一作、アイルランド系モントリオールに焦点を当てた映画「Storyteller」を製作準備中である。 モントリオールでは美保さんとの間に5歳の長女想良(そら)ちゃんと生後3カ月の次女タラちゃんの4人家族で住む。想良ちゃんの第1ランゲージは日本語、次に英語、そしてフランス語も話すそうだ。2人の娘のことを話すときはすっかり優しいパパぶりを発揮するライダー監督。今後の活躍が期待される。

www.guinnessrider.com

〈インタビュア・いろもとのりこ 〉

(2012年3月15日号)

 
 


 
 
(c)e-Nikka all rights reserved