【新春インタビュー】

「バムとケロ」シリーズの絵本作家
島田ゆかさん


〈インタビュア・いろもとのりこ〉

「空が広いカナダが好きです」という島田ゆかさん。バム(犬)とケロ(カエル)を主人公にしたほのぼの心温まる絵本シリーズで根強いファンを持つ絵本作家である。制作の場をカナダに移して10年余り。トロント郊外の自宅をたずねてお話をうかがった。


▲バムとケロを手に島田ゆかさん

島田ゆかさんは東京都出身。東京デザイン専門学校グラフィックデザイン科卒業後、パッケージデザインの会社で働いたのち、絵本作家の道へ。1994年に「バムとケロのにちようび」(文溪堂発行)を出版したのを皮切りに「バムとケロのそらのたび」「バムとケロのさむいあさ」「バムとケロのおかいもの」「バムとケロのもりのこや」・・・などいわゆる「バムとケロ」シリーズを7冊出版した。ほかに「ガラゴ」シリーズ(文溪堂)や「ぶーちゃんとおにいちゃん」(白泉社)、「かぞえておぼえる かずのえほん」(すずき出版)などの絵本も出版している。


▲これまでに出版された「バムとケロ」シリーズ。本の大きさは通常の絵本のほか、大型絵本、小型絵本といろいろ出されている

絵本作家へのきっかけは?
「絵を描くことは子供のころから好きでした。お勤めをしたあと、本屋さんでアルバイトをしましたが、そのとき、たまたま児童書のレジ係だったんです。お客さんからいろいろ本のことを聞かれますので、自分でもヒマがあると児童書を見たりしているうちにだんだん絵本っていいなあ、自分でも描いてみたいなあ、と思いはじめたのです」

ゆかさんは、絵本を描くためにはまずお話を作れるようにならなくてはと思い、昭和女子大学が開講するオープンカレッジの「童話の書き方」コースに半年ほど通った。その後、絵本作家になりたい人のための「あとさき塾」というワークショップに通い始める。オープンカレッジの生徒は主婦がほとんどだったが、こちらは半分以上がプロのイラストレーターだった。このワークショップに通った約3年の間に描いたアイデアスケッチを講師(フリーランスの絵本編集者)が出版社に持ち込み、最初の絵本「バムとケロのにちようび」が誕生した。


▲「バムとケロのおかいもの」から・・・

キャラクターのバムとケロはどんな発想から生まれたのでしょう?
「バムはイギリスに旅行に行ったときにブルテリアという種類の犬を見たのがヒントになりました。最初はもっと丸顔でしわくちゃの犬を描いていたのですが、『かわいくない』といわれたので、少しブルテリア風にアレンジして今のような顔になりました。ケロのほうは、本屋さんでアルバイトをしていた時、女の子がカエルのぬいぐるみを上下逆さまに抱いていたのがかわいらしくて、そこからイメージがわいてきました」


▲ゆかさんの絵本に登場するキャラクターたちのぬいぐるみも人気者だ


▲自宅の仕事部屋にて、ゆかさん。原画はすべて手描きによる

ゆかさんの自宅にはバムとケロをはじめ、絵本に登場するキャラクターのぬいぐるみがたくさん同居していて、まるで童話の世界のようである。

その後、順調に毎年のように「バムとケロ」シリーズを出版しながらなぜカナダに移住をされたのでしょう?
「1995年に主人が仕事で4カ月ほど、オンタリオ州オーロラに勤務したのです。そのとき私も初めてカナダに来たのですが、カナダの最初の印象は『空が広い!』でした。東京にいるとあまり空が広いって感じはしないですよね。なにかゆったりとしてのんびりしているのが私の性格にも合っていると思いました。東京での生活は私たちには少し忙し過ぎました」

というわけで、カナダがすっかり気にいった島田夫妻は2001年に移住し、その後は年に1〜2回くらいの割合で日本へ帰国している。しかし、2011年は特別に忙しい年だった。


▲松屋銀座の原画展会場(2011年4月)


▲仙台市の本屋さんのサイン会で(2011年11月)

原画展や東北地方でサイン会をされたそうですが・・・
「2011年は、4月から5月にかけて松屋銀座、7月から8月にかけて京都伊勢丹で原画展を開催しました。フィンランドの絵本作家、ユリア・ヴオリさんとの2人展でした。さらに11月に福島、盛岡、仙台の3カ所の書店でサイン会を開きました。東日本大震災で心を痛めた子供たちに少しでも喜んでもらえて、お店も活気づけられたらいいなあという思いでした」

作品のストーリーにご自分のふだんの生活が反映されていますか?
「ほとんどと言っていいほど、私たちの日々の生活の中で体験したこと、見たこと聞いたことなどがストーリーの基になっています」

英語版を出される予定は?
「以前、アメリカの出版社から2度ほどお話しがありました。しかし表紙の絵を日本で出版したものとは違うもっとインパクトの強いものに変えてくれと言われ、私の絵本は表紙も物語の一部なので、それでは物語も絵本のイメージも変わってしまうと思いお断りしました」

新しい作品についての構想はありますか?
「まだ具体的には何も決まっていないのですが、去年の秋にキングストンのサウザンドアイランドを旅しまして、ふっと『島』をテーマにした絵本を描いてみようかなあ、と構想を練っているところです」

今後もカナダに住んで制作を続けていかれますか?
「今のところ、カナダでの生活がメインなのは変わりません。東京はとても便利なのですが、休みの日はどこも混んでいて息抜きをすることができませんでした。カナダに来て精神的に少し余裕ができて、再びいろいろなものを見つけたり考えたりすることを楽しめるようになりました。自然、特に紅葉は素晴らしいですね。都会の雑踏が苦手な私にはここの生活は合っています」

お母さんの世代から子供まで幅広い年齢層のファンがいる島田ゆかさんの絵本。これからもカナダの生活が反映した楽しい作品が生まれることだろう。

■島田ゆかさんのホームページは、www.bamkero.com です。

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<インタビューを終えて>
まさに「空が広く見える」自宅に住んでいる島田ゆかさん。「表に出ることは得意ではない」と話すようにこれまで日系社会にはほとんど顔を出されていない。自分の分身のようなバムやケロたちのぬいぐるみに囲まれて創作活動を続け、カナダの自然や生活を楽しんでいるように見受けられる。それを優しく支えているご主人の淳一さんの姿が印象的だった。

(2011年1月1日号)

 
 


 
 
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