【世界の街角から】

パリのケーキ屋さん「LA PETITE ROSE」
お菓子作り一筋、オーナー・パティシエの渡辺美幸さん


パリの街を歩いているとなんとケーキ屋さんが多いことだろうと気づく。ケーキ専門店もあれば、パン屋と兼ねているところもある。それぞれきれいな飾り付けで思わず食べたくなるほど。さすが世界に誇るお菓子王国だ。渡辺美幸さんがオーナー・パティシエをしている「LA PETITE ROSE」もそのひとつ。日本で店を出すことでも大変なのに、まして本場のパリで日本人女性がケーキ屋さんを出すというのは、京都に外国人が和菓子屋を出すようなもの。しかし、お菓子作り一筋の道を歩いてきた美幸さんを見ていると「女性経営者としてがんばっている」という印象より、自分の作ったお菓子が喜ばれればいい、それだけを追求してきたように感じる。そんな彼女の気持ちが伝わってくるようなていねいなお菓子作りが地元にすっかり根着いているのである。
渡辺美幸さんは兵庫県加古川市の出身。大阪で1年間調理師学校に通い、料理全般を学んだあと、ホテルニューオータニ大阪の洋菓子部門に3年間勤務。その後、洋菓子研究家のアシスタントなどを経て、1998年パリに。そして2003年12月、「LA PETITE ROSE」をオープンさせる。美幸さん、37歳の時だった。


▲「LA PETITE  ROSE」のオーナー・パティシエ、渡辺美幸さん


▲地下鉄villiers駅前にある「LA PETITE ROSE」。サロン・デュ・テにもなっている

パリに来たきっかけは?
パリに住むようになる6〜7年前に旅行で初めてパリに来たのです。そのとき、料理学校「コルドンブルー」に行っていた女性と知り合いになりまして、パリのお菓子屋さんをいろいろ案内してくれました。お菓子のすばらしさはもちろんですが、歴史や文化に心を打たれ、いつかここでお菓子を学びたい、と決心しました。実際に来れるまで長い月日がかかりましたが、その間フランス語の勉強などもして準備をしていました。

パリに来て店を出すまでどのような修業をされたのでしょう?
まずは3カ月くらい、語学学校に行きました。やはり言葉は何を学ぶにも大事ですから。その後、製菓学校として有名な「ル・ノートル」(お菓子・高級お惣菜店も経営)で1週間のコースを2つ取りました。それから6区にあるケーキ&パン屋「ジェラール・ミュロ」に見習いとして入れてもらいました。半年ほど見習いをやって、そのあとは学生アルバイトの資格で約3年半ほどそこで働きました。


▲パリジャンが好むフルーツタルト


▲マカロン(上段)は9種、チョコレートは約30種作っている


▲贈り物に喜ばれるチョコレートの詰め合わせ

自分で店を出そうと思ったきっかけ、そしてなぜパリに?
フランスでは正式に外国人が働ける労働許可証をなかなか出してくれないんですね。日本に帰ってお店を出すという選択肢もあったのですが、どうしてもパリに残りたかったのです。そのためにはもう自分で店を出すしかない、と決心したのです。やるだけやってダメだったら日本に帰ればいいし・・・。

この場所を選んだ理由は?
たまたまお願いした不動産屋が最初はこのすぐ近くの別の売り物件のお菓子屋を紹介してくれたんですが、そこは私には大きすぎたんですね。その店を見に行ったときにこの店の前を通ったら張り紙がしてあって「健康上の理由でしばらく休業します」とありました。この店くらいがちょうど大きさもいいな、と思ったのですが・・・。それから1週間くらいたって不動産屋から「あなたが気に入っていた店が売りに出ました」と連絡があったのです。開店資金は父親に借りたり、銀行でローンを組みました。

実際に自分の店を持っていかがでしたか? 客層は? 心がけていることは?
最初の1年間はお客がつくまでたいへんでした。でも、お客さんから「おいしかったよ」とわざわざ言いに来てくれたりすると励みになりますね。客層は地元の常連さんとこの近辺にはホテルもある関係で観光客の半々ですね。ケーキ作りに関しては特に日本を意識することはありませんが、心細やかなていねいな仕事を心がけています。他店より少し甘さひかえめかもしれません。


▲チョコレートケーキとショートケーキ


▲トュイル(左)などクッキーの詰め合わせ

美幸さんの店では現在、5人のフルタイム、4人のアルバイト従業員が働いている。そのうちパティシエは4人。全員が日本人である。タルトやシュークリーム、エクレア、ムース類、チョコレートなどふだん店で売る品物の他にパーティーやウエディングケーキの注文も受けている。目下の悩みは厨房が手狭になったこと。これらの品物を作りこなすため、2交代制をとって、美幸さんは夜6時から明け方4時ごろまで厨房で仕事をしている。「お菓子が私の恋人です」と、断言するほど根っからのお菓子好き。「今、もっと広い厨房の店に移るかあるいは2号店を出すか、すでに探しています」。これからもますます美幸さんの作るお菓子が人の心を豊かにし、幸せにしてくれることであろう。

◎「LA PETITE ROSE」/ 11 bd de Courcelles Paris 8区
◎営業時間 / 午前10時〜午後7時30(水曜休み)、8月はヴァカンスのため休み

(リポート・いろもとのりこ)

 



 
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