【仏大統領選挙】

社会党オランド候補が僅差で勝利
難題山積みをどうさばくか注目される

〈 リポート・いろもとのりこ 〉

この1週間、注目を浴びたフランス大統領選挙は、5月6日、決選投票が行われた結果、ついに前評判通り前社会党第一書記のフランソワ・オランド氏(57歳)に決まった。投票獲得率はオランド氏が51.67%、ニコラ・サルコジ現大統領(57歳)が48.33%。この数字が予想より僅差だったのは、いかにフランス国民の選択が難しかったかということと、彼らのこれまでの政治経験によるものだろう。


▲オランド候補の選挙キャンペーンをする若い運動員たち(5月4日、地下鉄エコルミリテール駅にて)

記者が2年ぶりにパリへ着いたのは、フランス大統領選決選投票の2日前、5月4日だった。当然、街もマスコミも選挙一色という感じ。ふだんよりポリスの姿が目立つのも「花のパリ」にしては緊張を感じてしまう。
今回の選挙はフランス国内では久々大きな関心が寄せられた。もともと政治好きの国民性と直接大統領を選ぶことができる制度をとっていることもあるのだろう。さらに国内だけではなく、EU圏(欧州連合〕、ヨーロッパ全体、いえ世界中でも関心が高まった。


▲選挙ポスター。パリではポスターは美観を阻害しないようやたら張ることは禁止されている


▲パリ市内投票場のリスト

フランスの在外選挙としてはカナダが投票資格者が最も多く、ケベック、オタワ、トロントなどの投票風景がテレビで盛んに報道されていた。特にモントリオールではフランスからのビジネス関係や留学生も多く、投票場で長い列をつくっていたのが印象的だった。
この関心の高さは、ギリシャに始まり、ポルトガル、スペイン、イタリアでの財政破たんへの不安がこれまで強気だったフランスにも及んできているからである。次期大統領の政策いかんによって、世界経済へ大きく影響することが考えられる。


▲パリ7区にある投票場で投票する選挙民(5月6日午後3時)

官僚出身オランド氏の政治経験に不安も
オランド氏は元会計監査院の検査官から、フランソワ・ミッテラン元大統領の参事官となり、その後ミッテラン内閣の経済問題を担当している。いわゆる官僚出身である。前回の大統領選挙でサルコジ氏の対抗馬として立候補したのは、オランド氏の元パートナー、同じく社会党のセゴレーヌ・ロワイヤル氏だった。2人の間には4人の子供がありながら正式に結婚しなかったのは、お互いの選挙地盤を確保するため、というのがもっぱらフランス国内では当然のように思われている。


▲翌日5月7日、選挙結果を報じるフランスの主要新聞。今回の投票率は80%だった

前回、結果としてロワイヤル氏はサルコジ氏に敗れたが、オランド氏は影の支え役で表には出なかった。口の悪いフランス人は「ロワイヤルは顔で広告塔として出たようなもの。政治力はほとんどなかった」という。反面、オランド氏に対しては官僚的イメージが強く、未だに政治手腕に不安を持つ人も多い。


▲2人の候補の選挙ポスターが張られた掲示板。左がオランド氏、右がサルコジ氏

一方、サルコジ氏はユダヤ人の母を持つ、ハンガリー2世の移民の子どもとして生まれ、パリ第10大学時代はジャーナリストを目指していたそうだ。その後、元大統領ジャック・シラク氏が結成した保守政党に入党。国民議会院(下院)議員に当選。一時シラク氏の元を離れ、弁護士として活動していたこともあった。2007年の大統領選挙で当選したときは、移民の出身で初めて大統領になったことで、フランス国民の多国籍を受け入れる寛容さに驚いたものだった。

今回のサルコジ氏の敗因はどういうところにあったのだろうか。一般にフランス人の53%は保守派で、残り47%が左派だといわれている。それが今回逆転したわけである。ふたりの政策うんぬんより、3分の1が「とにかくサルコジ氏が嫌い」、次の3分の1が「オランド氏を支持する」、残り3分の1は「とりあえずトップが替われば希望が見えるのでは」という理由が結果の大方の見方のようだ。

中にはサルコジ氏に同情する人もいる。「彼が大統領になった2007年のあと、すぐにリーマンショック、ギリシャの財政破たんでフランス国内の構造改革をする余裕もなかった」と。さらに私生活で、大統領になったとたん前夫人と離婚。その後、ずっと年下のモデルで歌手・女優のカーラさんと再婚。これが女性の反感を買ったことも多少あった。しかし以前、ある知性派フランス人女性は「イタリア人カーラはサルコジよりずっと上流階級の出身で教養も高いのよ」と話していたのが印象的だった。

選挙結果が出た現地時間の5月6日午後8時過ぎ、サルコジ氏はパリ・コンコルド広場で支持者に感謝の言葉を述べ、オランド氏はフランス革命の発端となったバスティーユ広場で勝利を宣言。多くの支持者に囲まれ、終始「私はフランスのために心から働きます」を述べ、「ヴィーヴラ・フランス(フランス万歳)」を叫んで締めくくった。

オランド氏にとって、当選はしたものの難題はいっぱい。財政赤字、構造改革、雇用問題、ユーロ圏の問題などなど。もっぱら「今年の秋が山。これを越えられるかどうか・・」といわれ、多い若い層の支持者も彼の政治手腕いかんでそっぽを向くともかぎらない。いずれにしても、当選したからにはフランス国内だけでなく、世界経済向上のため、世界平和のためにも活躍してほしいものである。
(2012年5月6日、パリにて)

(2012年5月10日号)

 



 
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