【世界の街角から】

その歴史はなんと600年以上前にさかのぼる
パリ市民の生活を支える地下下水道を見学


〈 リポート・いろもとのりこ 〉

パリを訪れた人は皆、パリが他の古い大都市と比べて通りがすっきり見えるのを感じることだろう。美観をそこなう電柱や電線、電話線などがすべて地下に埋められているからである。それと、通りのわきからチョロチョロ水が出てごみをきれいに洗い流している光景もおなじみになっている。これらはすべて下水道のおかげである。


▲パリ市内の通りは下水道をはじめ電線ケーブルなどすべて地下に埋められている


▲建物の高さと窓のサイズがきれいに統一されている

パリの下水道、といえば日本人がすぐに思いうかべるのは、ビクトル・ユーゴ作「レ・ミゼラブル」(1862年作)だろう。この作品は今なおミュージカルなどで幅広いファンを集めている。ヒロインのジャン・バルジャンが下水道を通って逃げていくシーンは印象深い。

NHKの人気番組「ブラタモリ」では以前、東京・西新宿の広大な下水システムをリポートしていた。もちろん一般の人は中に入って見ることはできない。しかし、ここパリでは一部を「下水道博物館」として公開している。わかりやすくパネルで説明し、本物の下水を見ることができる。「花のパリ」といえども、生活の基盤はこの下水道システムにあるのだから、本当はここから見るべきなのだが、地味なせいか観光客にはあまり人気がない。

■パリ市内、地下に2100キロの下水道
パリの下水道の歴史は1370年にさかのぼる。当時、Hugus Aubriot というパリの行政をつかさどっていた人が、パリの汚水が道路に垂れ流しになっていて不衛生だったり、伝染病が流行したことに心を痛め、まずモンマルトルから下水処理を地下で行うための工事を始めた。


▲パリ市内シテ島近くのセーヌ川。下水は浄化されてここに流れている。向こうに見える橋はポンヌフ

その後、「太陽王」と呼ばれ、さまざまな改革を果たしたルイ14世(1638〜1715)の時代に、パリの中心を流れるセーヌ川に沿って下水道の工事が着手された。これをナポレオン1世(1769〜1821)が受け継ぎ、30キロの下水道が完成した。

さらに19世紀、ナポレオン3世(1808〜1852)の時代、セーヌ県知事を務めたオスマン男爵が行ったパリ大改造計画によって下水道が飛躍的な発展を遂げた。下水道の設備を整え、この時にすでに600キロに及ぶ下水道が完成。また、街づくりにも大きな功績を残した。

東西南北と大通りを建設し、景観を良くするため建物の高さを制限し、同時に交通網の整備も進めた。現在のパリの街並み、景観はこの当時に造られた建物がほとんどそのまま残っている。もちろん、外部内部ともに改造されているが、建物の高さは法律でそのままにしなくてはいけないそうだ。

その後、1914年から1977年の間に下水道は1000キロになり、さらに現在は2100キロにも及んでいる。この下水道を通って集められた汚水は施設で浄化され、セーヌ川に流されている。と同時に電線、電話線などもこの地下を通っているのである。

■セーヌ川のアルマ橋たもとから・・・
この下水道博物館は、エッフェル塔の近く、セーヌ川にかかるアルマ橋のたもと(左岸)にある。「VISITE DES EGOUTS DE PARIS」のサインがあるのですぐにわかる。


▲パリの下水道(Egout)博物館のサイン。このすぐ横に入り口がある

入場券売り場横の階段から地下へ降りると、まずパネルなどでセーヌ川と下水道の仕組みを解説。さらに奥へ進むと浄化槽があり、実際の下水道の上を歩いて行く。汚水の臭いを心配したが、案外臭いはなかった。ところどころ、真上の地上道路名の標識があるのが現実的で面白い。


▲浄水システムを絵で解説


▲下水道へと向かう


▲右下は下水道


▲セーヌ川につながる下水道。ジャン・バルジャンはこういう所を通って逃げたのだろうか


▲下水道の上にはいろいろなパイプがはりめぐらされている


▲19世紀から20世紀にかけて行われた下水道の工事風景

それにしてもすべてを地下に埋めてしまう、という壮大な都市づくりがあったからこそ、美しいパリの街の景観があるのだ、とつくづく感心してしまった。

パリ下水道博物館 VISITE DES EGOUTS DE PARIS
■住所:アルマ橋のたもと(93 quai d’Orsay )
■開館時間:午前11時〜午後5時(10月1日〜4月30日は午後4時まで) 木曜&金曜休館
■入場料:4.20ユーロ(約5カナダドル)
※メトロ最寄り駅:Pont de l’Alma

【編集部より】「世界の街角から」の過去の「パリ」「フランス」関連のリポート記事はアーカイブにあります。「今週のトピックス」目次の下、「過去のトピックス」をクリックして「世界の街角から」の項をご覧ください。

(2012年5月17日号)

 



 
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