【世界の街角から】

モロッコ紀行(後編)
サハラ砂漠からアトラス山岳への旅、中世の神秘ただよう都市マラケシ


モロッコの近代都市カサブランカ、イスラム文化の中心都市フェスを訪れた私たちは、そこから南下し、途中ローマ帝国が支配したときの遺跡など見学した後、アトラス高原地帯に入りました。ここではカスバ(Kasbah−高い壁で囲われた昔の要塞)を改造した興味深い構造のホテルに滞在し、奇妙な岩のある谷間(Zig Gorge)を歩きました。


▲サハラ砂漠をラクダに乗って進む筆者のグループ

さらに南下し、アルジェリアとの国境近くにあるサハラ砂漠の入り口の町メルゾーガ(Merzouga)に到着、そこでバックパック一つになり、ベルベル族(Berber−青い目を持つことで知られる)にならって青い布を頭に巻き、砂漠をラクダに乗って行く準備完了。


▲ベドウィンスタイルのテントとキャンプ


▲ベドウィンスタイル・キャンプの洗面設備

この日は快晴で風もなく、記憶の底にあった昔の童謡歌手川田正子が歌った「月の砂漠」のイメージなど思い浮かべながら出発しました。しかし、なぜかこのラクダとは相性が悪く、また古過ぎと思われた鞍(くら)もうまく機能せず、ロマンチックなイメージを味わう余裕などありませんでした。その上、落馬ならぬ落ラクダ(?)まで経験しました。

そのラクダ扱い人の話によると、ラクダの記憶力は抜群で、一度ひどい目に遭わされた人のことは絶対に忘れず、次に会ったときには必ず復讐(ふくしゅう)するそうです。仲直りするためには、そのラクダの前に自分の上着を広げてあやまるしかない。するとラクダはその上着に唾(つば)を吐きかけ、前足で踏みにじったあと忘れてくれるということです。

「もしかすると、このラクダは以前、東洋系の人に悪く扱われたのかも──」「冗談じゃないよ!」ということで、とにかく帰りのラクダと鞍は換えてもらいました。
しかし、砂漠で過ごしたこの一夜、純ベドウィンスタイルのキャンプ、そしてアラブ楽器を使った生演奏を聞きながらの晩餐はこの旅のハイライトの一つでした。


▲トドラ峡谷のロッククライミング岩場

サハラ砂漠を離れ西に進んで行くと、いよいよアトラス山脈が近くに迫ってきます。そこでモロッコ最大の名所の一つ、トドラ(Todra)峡谷を歩きました。砂漠の中に300メートルもの岩山が切り立っていて、観光客目当てのロッククライミングの岩場もあります。そこからアトラス山脈を迂回(うかい)しつつ、さらに西に行くと、モロッコの映画製作の中心地、オアシスの街オウアルザザテ(Ouarzazate)とエイト・ベン・ハドウ(Ait Ben Haddou)があります。


▲映画ロケ地が残っているエイト・ベン・ハドー郊外のカスバ


▲カスバ・ゲストハウスの入り口(エイト・ベン・ハドーにて)


▲タルーダント郊外のアラゴン潅木に登ってその実を食べるヤギの群れ

ここで 「アラビアのロレンス」、「グラディエーター(The Gladiator)」、「ナザレのイエス(Jesus of Nazareth)」などが製作され、今でもそのロケの跡が残っています。


▲アトラス山地ハイキングの途中、通りすがったベルベル人女性


▲アトラス山地ハイキング中に眺めた風景

2日間のトレッキングをするアトラス山岳地域へ行く途中で、小さなマラケシといわれる要塞の街タルウダント(Taroudantt)に寄りました。その郊外にアラゴン潅木畑があり、ヤギの群れが猿のように木に登ってアラゴンの実をむさぼり食べていました。ヤギが木に登れるとは思ってもみなかったので驚きましたが、さらに驚いたのは、そのヤギの糞(ふん)の中からアラゴンの種を集めてアラゴンオイルを抽出する手工業があることでした。肌に素晴らしく良いといわれるその高級オイルは、日本にも輸出されているそうで、日本語のパンフレットもありました。私達のグループの女性はワイフを含めてみんなうれしそうに買っていました。


▲アトラス山地の奇妙に風化した景色

ここでのトレックは、奇妙に風化した山や、近くの泥レンガ造りのベルベル人村などを歩きましたが、トレックというほどのものではなく、散歩に少し毛の生えたハイキングといったところでした。ここからアトラス山地を下り,この旅最終地のマラケシ(Marrakech)に向かいます。


▲メディナ(市場)の入り口(マラケシにて)


▲メディナ広場の屋台で貝料理を売るお兄さん(マラケシにて)

南モロッコの首都といわれるマラケシは、豊富に水があふれるオアシスがあり、昔はラクダキャラバン(隊商)の集まるモロッコ最大の商業都市として栄えました。今は中世期の魅惑的な神秘性を持つ都市として観光客の人気を集めています。フェスのものにひけを取らないここのメディナ(市場)の広場は、夕方近くになると、さまざまな屋台や、曲芸師、手品使い、ベリーダンサーなどが繰り出し、お祭り騒ぎのようになります。

写真を撮るのは気を付けないといけません。私が写真を撮った、顔をなかば覆った魅惑的なベリーダンサーは、実は男性で、追っかけられて、撮影料を取られました。(終わり)

(2012年6月7日号)

 



 
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