【東日本大震災】

津波生存者の笑顔を写真に・・・
「3.11肖像写真プロジェクト」展、JCCC現代ギャラリー


東日本大震災の被災地を訪ね津波の生存者たちを写真に撮る「3.11肖像写真プロジェクト」の代表、小林伸幸(こばやし・のぶゆき)さん(東京都中野区野方)が、現在、トロント日系文化会館(JCCC)現代ギャラリーで写真展を行っている。


▲小林伸幸さん。トロント日系文化会館現代ギャラリーにて

小林さんは、「3.11肖像写真プロジェクト」のメンバー写真家たちの作品を集めて、今年1月7日から27日まで国際交流基金トロント日本文化センターで写真展を開き大好評を博した。今回、再び資生堂カナダ社(藤井恵一社長)のスポンサーシップ協力を得て、トロント日本映画祭(TJFF)の開催時期も含め写真展を開いているものである。
6月7日、現代ギャラリーで小林さんにお話をうかがった。

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写真家、小林伸幸さんは2011年3月11日の東日本大震災に大きく心を痛め、どうしても被災地を訪れてみたいと思った。震災から1カ月後の4月10日からカメラをかついで岩手、宮城、福島の3県を精力的に巡る。当初、被害状況や被災者の様子など悲惨な場面を撮っていた。
「ぼくは本来、コマーシャル・フォトグラファーなので、撮影しているときに、自分は報道写真家とはちがう、ニュース性としてお涙頂戴的な写真は撮りたくないと感じるようになったのです。では、ぼくがいちばん出来ることは何か。彼ら自身の未来を撮りたい、笑顔を撮影したい──ということでした。写真家仲間やいろいろな分野での協力者が集まり、『3.11肖像写真プロジェクト』がスタートしました」


▲「3.11肖像写真プロジェクト」で、いちばん最初に撮影に応じてくれたTシャツの女性


▲それぞれのポーズで・・・生存者の皆さんの写真

当然のことながら、震災直後の当時は、笑ってはいけないのではないかという懸念があったという。
「撮影の最初の人は女性で、彼女はオレンジカラーのTシャツを着て撮影会に来ました。最初はサングラスをかけていて暗い表情でした。2時間がすぎたころ、『撮ってください』と言ってきました。そしてカメラを向けると、笑ったのです。震災に遭ってから初めて笑顔になれた。これがきっかけとなって、次から次へと笑顔の写真申し込みが出てきました」
撮影した人の数は、合計すると、なんと1080人だという。じつに壮大なプロジェクトといえよう。
「このプロジェクトを始めるにあたり、皆さんが辛い時期にあって、少しでもかっこいい姿で笑顔をしてもらい、それを撮ることにしたのです。そのためにメイクもしてもらいました」
「3.11肖像写真プロジェクト」には、プロの写真家、メーキャップアーティスト、グラフィックデザイナー、NPO(非営利団体)ボランティアの人たちが協力してくれた。創業140周年を迎えた資生堂からは肖像写真撮影でメーキャップに使うための化粧品が寄贈された。小林さんたちは被災地を巡り、地域の人たちに参加してもらい、無料で撮影を行った。
その後、いったん東京に帰り、プロジェクトの調整をして、2011年6月から再び被災地に赴く。
「東京から戻ったときに、被災者の皆さんはとても喜んで歓迎してくれました。『私、あのころ、こんなに笑っていたのね。自分もまだがんばれる』と希望を持ってくれるようになったのです」
こうして昨年12月まで長期間にわたり、東北のさまざまな土地を回り、多くの被災者に会い、笑顔を撮り続けた。1080人の写真のうち、今回JCCC現代ギャラリーで展示されているのは、ポートレートが112点、それに震災被害地の現場のスナップ写真が20点ほど。多くの支援者から寄せられた折り鶴も展示されている。


▲会場には支援者から寄せられた折り鶴も展示

JCCCに行く機会があれば、ぜひ現代ギャラリーに寄って被災者たちの笑顔を鑑賞することをおすすめする。展示期間は、6月1日(金)から30日(土)まで毎日オープン。入場無料。
【JCCC現代ギャラリー】
6 Garamond Court, Toronto
416-441-2345
www.jccc.on.ca

〈 取材・色本信夫 〉

(2012年6月14日号)



 
 


 
 
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