【世界の街角から】

パリ郊外に建つシャンティイ城(Chateau de Chantilly)
コンデ美術館、馬の博物館、フランス庭園・・・


〈 リポート・いろもとのりこ 〉


パリから北へ近郊電車(RER)で約30分ほど行ったシャンティイ(Chantilly)市にあるルネッサンス時代の香りを漂わせた建物がシャンティイ城である。広大な敷地に、美術館になっている城、庭、森、そしてとても厩舎(きゅうしゃ)とは思えないような立派な建物の馬の博物館などがあるユニークなお城である。


▲運河に囲まれたシャンティィ城

パリ郊外のお城といえば、日本人には最もポピュラーなのがベルサイユ宮殿やフォンテンブロー城。これらに比べると知名度や華やかさは落ちるが、シックな味わいのあるお城として人気を保っている。ただ、車の便があれば問題ないが、電車で行く場合、駅「Chantilly Gouvieux」からお城の入り口まで約2キロある。森の中を通っていく気持ちのよい散歩道があるので、ハイキングのつもりで歩くのもいいだろう。


▲お城は現在、「コンデ美術館」として公開されている

シャンティイ城は最初、16世紀のルネッサンス時代に「グランシャトー」と「プティシャトー」の2つの城がモンモランシー家によって建てられたが、グランシャトーの方は1789年のフランス革命期に破壊されてしまった。その後、ナポレオン帝政が倒れ、王政復古で即位したルイ・フィリップの五男、オマール公によって1870年ころ昔の面影を保った現在のお城に復元された。19世紀まで城の所有者であったブルボン−コンデ家には貴重な絵や調度品のコレクションがあり、現在、お城は「コンデ美術館」として公開されている。


▲ルネッサンス様式の城内


▲歴史を織り込んだタピスリー


▲館内の図書室。貴重な蔵書3万冊が収められている


▲ベルサイユ宮殿の庭園の原型となったフランス式庭園の一部

美術館にはラファエロの「ロレッタの聖母」ほか2作品、ピエロ・ディ・コシモの「美しきシモネッタ」、プッサンの作品など名画のほかに陶器やタピスリーなど傑作の調度品が数多く展示されている。館内のクラシックな図書館にも圧倒される。約700点の写本と3万冊の蔵書があるそうだ。
広大な敷地内に庭園と運河がある。庭園はベルサイユの庭園を設計したル・ノートルの手によるのもので、シャンティイがベルサイユの原型だといわれている。シンメトリックな幾何学的庭園は典型的フランス庭園である。


▲お城と見間違えるほど立派な厩舎(きゅうしゃ=馬小屋)。ここで馬術ショーが行われる

さらにこのお城でユニークなのはりっぱな厩舎(馬小屋)があること。駅から行くと最初にこの建物が見えるので、これがお城だと思ったら、なんと馬専用の建物だった。現在は馬の博物館として調教のデモンストレーションや馬術ショーを披露している。また、この建物の前にはフランス最古の「シャンティイの競馬場」があり、調教場が併設されている。来年の凱旋門賞はロンシャン競馬場の改修工事のため、このシャンティイ競馬場で開催される予定だそう。


▲厩舎の建物にはちゃんと馬の彫刻が・・・


▲城の垣根の向こう側はシャンティイ競馬場になっている

それからもうひとつ、このお城の名前をとった有名なものがある。デザートに添えるクレーム・シャンティイ(ホイップクリーム)はかつてこの城の宮廷料理人、ヴァテールが考案したことでお城と同じ名前がついている。今でもお城のレストランでは、デザートに「本物のクレーム・シャンティイ」としてメニューに出している。
ヴァテールに関しては、映画にもなったエピソードがある。城主コンデ公が太陽王と呼ばれたルイ14世を招いて豪華な宴(うたげ)を開いたとき、料理の指揮にあたったヴァテールは王に供する魚が届かなかったことに責任を感じ、自殺をしたのである。お城には2カ所レストランがあり、ひとつはコンデ美術館となっている城内に、もうひとつは庭園内 Hameau(小集落)にあり、どちらでもランチとティーを取ることができる。
いろいろ話題の多いシャンティイ城は日本の姫路城(兵庫県)と姉妹城になっているそうだ。いずれにしても豪華な造り、膨大なコレクションを見ていると、時の権力の大きさを感じられずにはいられない。文化とはそうした巨大な力があって育った時代もあったのだ。

■シャンティイ城への交通アクセス:パリ北駅から近郊電車(RER)で Creil (クレイユ)行きに乗り、Chantilly Gouvieux で下車(電車の本数は大変少ないので前もって調べておいた方がよい)。快速で25分、各駅停車だと45分かかる。
※駅からお城まで約2キロあり、バスもあるが本数が少ない。行きはタクシーで行く手もある。
■城(コンデ美術館)のオープン日時:4月上旬〜11月1日は午前10時〜午後6時、11月2日〜4月上旬は午前10時30分〜午後5時(火曜休館)
■入場料:城=大人14ユーロ(約18カナダドル)、馬小屋=11ユーロ、馬のショー=21ユーロ(火曜以外、1日2回行われる)
www.domainedechantilly.com (城)
www.museevivantducheval.fr (馬小屋)

(2012年6月14日号)



 



 
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