【自然と生きる】

バンクーバー島・田舎暮らし(その2)

カウチンベイとその周辺「カウチンバレー」



〈 BC州コモックス ヒル厚子 〉

前回はバンクーバーアイランド・ダンカン(Duncan)の町をご紹介したが、今回はカウチンベイ(Cowichan Bay )です。先住民カウチン族の居住区のあるこの地域は総称してカウチンバレーと呼ばれる。ナナイモの南50キロ、ビクトリアの北50キロ地点にあり、ダンカン、シュメイナス(Chemainus)、ノースカウチン、カウチン湖、レディースミス、カウチンベイなどの小さな町々が点在する。


▲漁船やレジャー用のボートが並ぶカウチンベイ


▲カウチンベイの大きな入り江に位置する静かな波止場。周りには一泊300ドル以上の高級B&Bやリタイアメント・コンドミニアムなどがある


▲カウチンベイの村の中心地にはこんな感じの小さなレストランやコーヒーショップが・・・。のどかな海を眺めながら獲れたての魚料理は格別

その中心地はダンカンで、まずはダンカンの町を見物してトーテムポールやレストランなどを楽しんだ後は、静かなカウチンベイへと足を伸ばすのが良い。ダンカンの町からトランスカナダ・ハイウエーを少し南下した後、カウチンベイ・ロードに左折してカウチンベイの村まで約10キロあまりである。

この地域にはさまざまなワイナリーも点在しているので、ワイン通はあちこち寄り道ができる。私の住むコモックス(Comox)にはワイン試飲グループなるものがあって、毎月一回、それぞれの家を回りもちで参加者が1本ずつワインを持ち寄り試飲会をする。

毎回テーマがあり、たとえば「バンクーバー島のワイン」となると、皆が島を巡ってお気に入りのワインを持ち寄る。茶色のバッグに入れて銘柄を分からないようにして飲み比べる。主催者となった家はワインに合ったチーズやスナックを準備することになっている。どのフルーツの味がするかなど細かに書き込むメモ用紙まで渡される。

この会にしばらく参加していろいろワインについて学んだり、おいしいワインにめぐり合うことができた。ワインばかりではなく、バルサミコ酢まで作っているところがある。カウチンバレーの「Zanatta」というワイナリーだと聞いたので行ってみたが、めぐり合うことはできなかった。

カウチンバレーは山あり海あり、川あり湖ありの実に美しい地域である。数え切れないほどのパークやトレイルがあり、春から秋にかけては魚釣り、キャンプ、ハイキングなどアウトドア派の人々で賑わう。

その中でもカウチンベイは「MUST」と皆にすすめられた場所である。日本の小さな漁村を想わせる小さな小さな村だが、港には各地から訪れたボートが所狭しと停泊する。カヤックやカヌーのレンタルもあって静かな湾を周遊できる。ホエールウオッチングや魚釣りの船も出ている。港でちょうど漁師の船が帰ってきたところだったので、タコを買った。カウチンベイはただ海沿いを歩いたり、のんびりとベンチに座っているだけで癒やされる場所である。


▲すべてが木組みの珍しい橋「キンゾル・トレッスル」。かつて木材を運ぶ鉄道が通っていたが、その後、廃墟と化し、2011年7月もとの姿に復元された

のどかなカウチンベイで一夜を明かした後、珍しい木組みの橋というキンゾル・トレッスル(Kinsol Trestle)、またの名をコクシラリバー・トレッスル(Kokshilah River Trestle)を見学に行った。キンゾル・トレッスルは高さ44メートル、長さ188メートルの木だけで組んだ橋である。バンクーバー島が木材輸出のピーク時であった1911年に巨大森林のあったバンクーバー島北西部とビクトリアを結ぶ鉄道を敷く計画で着工。1920年に完成した。


▲高さ44メートルのキンゾル・トレッスルからの眺め。下では川辺まで歩くトレイルもありピクニックができる

すべてが木組みというのがすごい。さすが材木の産地バンクーバー島だが、100年前の材木ラッシュで、直径2メートル以上もある大木の森林がほとんど消え去ってしまった現実は悲しい。 

最後に汽車がこの橋を渡ったのが1979年である。その後、廃墟と化したが、2009年に復興運動が始まり、ついに2011年7月28日、もとの姿が復元された。現在はビクトリアを出発点とする「トランスカナダトレイル」の一部で、南はショーウニガンレイク(Shawnigan Lake)側から、北はカウチン側から到達できる。まだ去年オープンしたばかりで道標が整備されていないので、地元インフォメーションセンターでよく尋ねてから出発するのがよい。

最後の数キロは舗装されていないのでホコリもすごい。トランスカナダハイウエーのコクシラ・ロード分岐点からは約13キロである。森林の中に渡された息をのむような木組みの橋は一見の価値がある。ピクニックテーブルも設置されているのでぜひお昼持ち込みで楽しんでいただきたい。健脚の人はトランスカナダトレイルを少し奥まで歩いてみるのもよいだろう。


▲シュメイナスの海が見える公園前。ここには野外コンサート場もあって美しい

アウトドアを満喫した後にちょっとした文明を楽しめるのがシュメイナスの町だ。ここには有名な劇場がある。バンクーバー島の町々ではシュメイナスの町で夕食を食べた後、劇場で演劇を鑑賞して帰宅するという半日ツアーの広告をよくみかける。リタイアした人々が多く住む場所だからだろうか。こういう余興に人気がある。


▲シュメイナスの壁画・1


▲シュメイナスの壁画・2


▲シュメイナスの壁画・3

ダンカンが「トーテムポールの町」であったように、シュメイナスは「壁画の町」である。町中のビルの壁に絵が描かれている。これも歩道の黄色い足跡のペイントをたどって町を一回りできるようになっている。海の見える公園には野外コンサート場があり、クラシックから民族音楽までいろいろな音楽を聴くことができる。実にきれいな町である。


▲シュメイナスの壁画・4


▲シュメイナスの壁画・5

カウチンバレーは行けば行くほど魅力の増す場所である。自転車で冒険する人々、トランスカナダトレイルを歩いて通り抜ける人々、ワインやレストランをエンジョイする人々、劇場や歴史をたどる人々、大自然に囲まれた小さな町々を巡りながら、私たちは本当に美しい大地に生きているのだなとあらためて実感した。

(2012年7月5日号)

 



 
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