【インタビュー】

関西を中心に活躍するジャズバンド「Moment Jazz Trio」
トロント・ジャズフェスティバルで念願の海外デビュー


〈 インタビュー&撮影 : デムスキー恵美 〉

ここ数年、日本で活躍する新進アーティストが海外のステージに招待される機会が増えている。日本で育った特有のサウンドとその音楽性の高さが国際シーンでも注目され、ファン層を広げつつあるなか、今年のトロントジャズ祭には Moment Jazz Trio (モーメント・ジャズ・トリオ)というバンドが来演し海外デビューを飾った。


▲熱演する Moment Jazz Trio の皆さん(6月28日、トロントの The Rex にて)

関西を中心に活動を続けているこのバンドは、「サッポロ・シティジャズ 2011」のパークジャズ・ライブコンテストで見事グランプリに輝いた実力派。6月28日、アルトサックスの山本昌さん、ピアノの竹内正史さん、そして、ベースの泉正浩さん演奏による詩情豊かなサウンドがトロントのライブハウス老舗、The Rex の客席に満ちあふれた。


▲ベースの泉正浩さん

演奏後の感想として、ベースの泉さんから次のような言葉が返ってきた。
「この一年間、カナダ公演を視野に入れて準備してきたのですが、演奏はあっという間に終わってしまった感じでした。もうワンステージあれば、もっと自分たちの本領を発揮することができたかも知れないという印象は残りますが、実際に演奏してみて、やはり日本とは雰囲気が違うなあと感じましたね。日本のお客さんは、審査員のような感じで真剣に聴いてくれます。こちらでは身体を動かしたりして、リラックスして聴いてくれる。会話をしながらも、ちゃんと音楽も楽しんでいる感じだし、音楽を聴くことによって、より会話を楽しんでいるという印象を受けましたね」


▲アルトサックスの山本昌さん


▲ピアノの竹内正史さん

こう語る泉さんに続いて、ピアノの竹内さんからは、「ぼくも文化の違いのようなものを感じました。日本ではまず、身体を動かしながらジャズを聴くということはないし、どちらかというと鑑賞会のような硬い雰囲気がありますね」という率直な意見が聞かれた。

3人の出会い、トリオの誕生についてうかがうと、そこは竹内さんの母親に負うところが大きいようだ。ベースを担いでいる泉さんを見かけた竹内さんの母親が面識のない泉さんに、思い切って話しかけてみたのが2010年の秋。その時、自身の息子とサックス奏者の友人がベーシストを探していることを告げ、いっしょに演奏してもらえるかどうか打診したという。この時の会話が直接、トリオ結成につながった。

「一般的に、バンド結成までにはいろいろな人と演奏を試みて、うまくいったり、だめになったり、なにかと時間がかかるものですが、僕たちの場合は出会ってすぐに意気投合し、出会いとバンド結成がほぼ同時期でしたから、つくづく自分たちは恵まれているなと思いましたね」と語る山本さんの言葉には、この出会いに対する心からの感謝の気持ちがこめられていた。

仲の良い兄弟のように相性もぴったりの3人だが、さて、それぞれどのようないきさつからジャズの道を歩むようになったのだろうか。ベースの泉さんの場合は高校生の頃、好きなエレキベース奏者たちが影響を受けた音楽を調べてみたところ、ほとんどの人がジャズの影響を受けてきたことを知り、さっそくポール・チェンバースを聴いてみたという。さらに23歳の頃には誰よりもスイングしたいと思うようになり、本格的にウッドベースを始めたそうだ。

一方、3歳のころからクラシックピアノを弾き始めたという竹内さんは、ドン・ピューレンのライブ演奏を観て、ジャズピアノの自由さ、面白さを強烈に感じたときの模様を転機のひとつとしてあげてくれた。そして、「サックスとチャーリー・パーカーのCDがそこにあったから」と答えてくれたのは、アルトサックスの山本さん。

2011年夏、サッポロシティジャズでの優勝という大きなイベントを体験したトリオだが、出演にいたるまでのいきさつと優勝後の音楽活動について、山本さんは、「僕が応募を提案したとき、札幌は遠いとかなんとか言って、ほかの二人はあまり乗り気ではなかったです。参加バンドが200組以上と知り、まさかとは思いましたが、もし最終選考の10組に残ったら、優勝目指してとにかく全力投球でがんばろう、ということで二人を説得しました。幸い優勝という名誉ある賞をいただき、本当にうれしかったです。このことがきっかけとなり、関西でも有名なライブハウスから出演オファーをいただくなど、自分たちの音楽活動にもポジティブな変化が起こり始めました」と話し、感動的だった1年前の出来事から現在にいたるまでの日々をふり返った。

6月26日には、2枚目のアルバムがリリースされた。「ファーストアルバムは、どちらかというと自分たちのために制作したものなんです。今という瞬間の音を大切にしたいという意向からタイトルも 『That's a Moment』、ほとんど録り直しなしで収録しました。2枚目のアルバム 『Made for You』 は、これまで聴いてくださった皆さんのために制作したものですから、あえてファーストアルバムからの継続的な内容にしました」。こう説明する泉さんの言葉からは、トリオとして着実に歩み始めた自信のようなものがうかがえる。


▲演奏後、The Rex の前で記念撮影

念願の海外デビューを果たし、再び日本のジャズシーンで活動を再開する Moment Jazz Trio の皆さん。多忙なスケジュールの中で、いま一番楽しみにしていることは、8月上旬から始まるサッポロツアーだそうだ。昨年のコンテスト出演の際に出会った人々の計らいにより実現したという。

これからは海外にも演奏の幅を広げ、「こいつら、すごい!」と言われるようなバンドに成長していきたいという若きアーティストたち。トロントでの演奏で得た経験を新たなステッピングストーンとし、これからのさらなる活躍を期待したい。
(Emi Demski)

(2012年7月12日号)

 
 


 
 
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