【世界の街角から】

フランス西北部ノルマンディーを訪ねて(1)
セーヌ河口の港町、ル・アーヴル(Le Havre)


〈 いろもとのりこ・記 〉


パリのサン・ラザール駅から汽車で約2時間、セーヌ川沿いに西へ行ったイギリス海峡に面したノルマンディー地方にル・アーヴルの港町がある。昔からイギリスをはじめ海の交通の要所として栄えた。それゆえに第2次世界大戦では壊滅的被害を受け、一部を残してほとんどの町並みが焼けてしまったという。そのせいか古い町なのに、ヨーロッパ特有の歴史の古さが感じられない。


▲世界遺産になっているル・アーヴルの町の中心地。正面の高い塔はサン・ジョセフ教会

しかし、戦後、世界的な建築家、オーギュスト・ペレによって約20年間にわたって再開発させ、2005年にはその都市計画が認められて世界遺産に登録されたそうだ。ヨーロッパの都市としては異質な世界遺産といえよう。今年5月半ば、そんなノルマンディーの地方都市、ル・アーヴルを訪ねてみた。


▲町の中央部にある巨大な戦没者慰霊像


▲ル・ヴォルカン(Le Volcan)。内部はアートセンター

町の中心は市庁舎から南にのびているパリ通りで、戦後再建された建物が並ぶ。初めて見る人がぎょっとするのが白い大きなコンクリートの火山、ル・ヴォルカン(Le Volcan)。中はアートセンターになっているそうだが、改装中で見ることはできなかった。外はもっぱら子供たちの遊び場になってる。


▲町の北部は急な高地になっているためケーブル電車が走っている


▲朝市は市民の社交場にもなっている


▲地元の人に人気があるシーフードの店「Paillette」


▲新鮮な「海の幸の盛り合わせ」

その近くに市場や集合住宅、戦後再建された近代的な教会「サン・ジョセフ教会」、季節の花が美しいサン・ロック公園などがある。毎週日曜の朝には常設市場の隣に朝市が立ち、地元の人たちの社交場にもなっているようだ。港の近くには獲りたての魚介類を売っている魚市場があり、朝早くから買い出しをする人たちでにぎわう。


▲ショッピングセンター「Docks」。貯水池で子供たちのヨットレッスンが行われていた


ル・アーヴル駅のすぐ南、貯水池をはさんで海側に最近、倉庫を改良して作られたショッピングセンター「DOCKS」がオープンし、若い人たちに人気がある。意外にもその近くに日本庭園「Jardin Japonais」があるが、ふだんは開いておらず、何かのイベントの時や予約のみオープンするようだ。そこにはル・アーヴル港と大阪港が姉妹港であることが記されていた。

■印象派画家の作品が結集、「マルロー美術館」(Musee Malraux)

港町ル・アーヴルのもうひとつの顔は、フランスの印象派画家たちのゆかりが深いことであるる。代表的な印象派画家、クロード・モネはル・アーヴルの浜辺を好んで制作の場所にし、「印象−日の出」が誕生した。モネが大きく影響を受けた対岸のオンフルール生まれのブーダン、ル・アーヴル生まれのデュフィなどもこの町から影響を受け、愛した画家たちである。


▲ル・アーヴルのマルロー美術館


▲モダンな美術館内部

ル・アーヴルの町の西南端、海岸のそばにひときわ目立つ建物がある。マルロー美術館。フランス有数の印象派コレクションを所蔵している。創設したのは、ドゴール政権時代、文化相を務めていた作家アンドレ・マルローで、1961年にオープンした。なんでも第2次世界大戦で受けた市民の大きな打撃と深い悲しみを癒やすため、というのが創設のきっかけだったとか。さすがフランス的! 中都市にしてはずいぶんりっぱな美術館・・・という疑問も納得した。


▲ブーダンの作品展示コーナー

その後、1999年に改装し、さらに2004年に印象派を中心に大きなプライベート・コレクションの寄贈を受けて改装、2006年に再開されて現在に至っている。特にブーダンの作品は200点以上所蔵されているそうだ。館内のずらり並んだブーダン作品コーナーには圧倒される。そのほか、モネはもちろん、ルノワール、シスレー、デュフィ、ボナール、クールベ、コロー、ドラクロワ、マティス、マルケなどフランスの近代美術を代表する画家たちの作品が展示されている。これだけの名画に囲まれれば自然と気持ちも豊かになれるというもの。


▲モネーの睡蓮シリーズの絵も・・・

この美術館で一番うれしいのは、これだけ貴重な作品の数々が展示されているのに、重々しさがなく、開放的な造りで、気楽に鑑賞できること。そういえば怖い目つきで見守る監視員も目立たなく、写真の撮影もフラッシュをたかなければどうぞご自由に、という大様さ。本当に市民が楽しめるように配慮されていることがうかがえる。
館内にモネが好んだ海の風景が見えるカフェがある。

【マルロー美術館 Musee Malraux】
◎場所:2 Blvd. Clemenceau, Le Havre
◎オープン時間:月〜金曜午前11時〜午後6時、土&日曜午前11時〜午後7時(火曜&主な祝日は休館)
◎入場料:大人5ユーロ(約CAN$6.50)、学生3.8ユーロ(約CAN$5.00)

(2012年7月19日号)



 



 
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