【インタビュー】

石畳の街並みをつつむアコースティックサウンドの魅力
ギタリスト 山木将平さんのライブコンサートにて


〈 インタビュー&撮影 : デムスキー恵美 〉


ちょうど1年前のトロント・ジャズフェスティバル、その卓越したギター奏法とユーモアあふれるステージマナーで、ライブハウスに詰めかけた聴衆をすっかり魅了した一人の若い日本人アーティストがいた。その人は、アコースティックギターの名手、山木将平さん。まれにみるフィンガーピッキングの妙技と表現力の豊かさが認められ、今夏、ふたたびトロントジャズのステージを踏んだ。


▲ディスティレリー・ディストリクトに設けられた野外ステージで演奏する山木将平さん(2012年トロント・ジャズフェスティバルにて)





歴史が刻み込まれた美しいダウンタウンの一角、ディスティレリー・ディストリクトで再び耳にする、あの美しいアコースティックのサウンド。今年4月には、2枚目のアルバム「The Next SHOw Time」をリリースし、日本のみならず、海外での演奏活動にも意欲を燃やす。ギタリスト&作曲家としてさらに大きく成長した山木さんに、この1年間の音楽活動やこれからのプロジェクトについてうかがった。


▲最新アルバム「The Next SHOw Time」のジャケット。 amazon.com からダウンロード版で発売中

昨年に続き2度目のトロントですが、今回は気持ちに余裕がありましたか。
そうですね、去年は何もかもが初めてのことで手探りの部分が多く、演奏中もさまざまなことを考えながら演奏していましたが、今年はその経験を生かして自分でも楽しみながら演奏することができました。

前回は海外デビューだったにもかかわらず、英語でのMCやステージマナーにも無理がなく、こちらの聴衆にも好評でしたが、今年はさらに磨きがかかっていましたね。
自分では特に英語が上達したという意識はなかったので、そう言っていただけるととてもうれしいです。特に勉強したということはないですが、家でギターを弾いているときなど「こういう時は英語でどう言ったらいいのだろう」とか、いろいろ考えながらMCを入れてみたりという練習はしてきました。通訳を付けたら意味はしっかり伝わるでしょうが、ライブ演奏では、聴いてくれている人たちから直接反応をいただくためには、やはり自分の言葉で伝えることが大切だと思います。

この1年間で特に印象に残った出来事は。
たくさんありすぎて、一つひとつ挙げるのは難しいですが、全体的にはやはり昨年、カナダで演奏したということで、それまで以上に注目していただいたり、応援していただいたことが励みになり、新しいアルバム制作にも意欲がわいた1年だったと言えますね。

ファーストアルバム「North Wind」についてうかがった時、それは北海道の大自然と人間味を音で表現した集大成とおっしゃった。新アルバム「The Next SHOw Time」はどのような構成ですか。
新しいアルバムは、1枚目とはずいぶん違った内容になっています。1枚目では、ギター1本でアコースティックのよさをじっくり聴いていただこうという思いで制作したのですが、2枚目ではいろいろなことに挑戦してみて、1枚目では出し切れなかった自分の別の面を表現してみました。今回はギターを何本も使いました。自分ひとりでリズム、メロディーなどそれぞれのセクションを別々に演奏しておいて、それを録音の段階で重ねるという作業をし、バンド演奏のような曲に仕上げた曲もあります。それからヒップホップベースにしてみたり、エレキでロックンロールインストをやってみたりとかですね。バラエティーに富んだ内容で、気分によって好きな曲を聴いていただけるアルバムだと思います。これでまた自分の世界が広がりました.。
〔注〕SHOwは、ニックネームのSHO(ショウ)とShow TimeのShow(ショー)を重ねたものだそうです。

曲を作るにあたっては、じっくり時間をかけて取り組むタイプですか。それとも短時間のうちに仕上げてしまうタイプですか。
自分の曲の作り方は、曲が頭に浮かんだ瞬間を切り取ってゆく作業ですから、完成するまでの時間は短いです。あまり時間をかけていると曲が変わってしまいますから、長くても1週間、早い時は一晩ですね。

この春には海外でのプロモーション活動も始められたそうですが。
4月には台湾を訪れました。訪れたところは国際色豊かな地域でしたので活気があり、大変良い反応をいただきました。CDはもちろん、たくさん買っていただいたのですが、若い世代はCDよりもネットからダウンロードして音楽を楽しむ人たちが多数派なので、ちょっと戸惑いました。それから、うれしい出会いもありました。そこでお目にかかった台湾の楽器会社の社長さんから台湾製カスタムメイドのギターを提供していただけることになり、いまその到着を楽しみに待っているところなんです。

これからの活動予定について。
9月にはルクセンブルグ行きが決まっています。それからまだ決定はしていないのですが、11月ごろにオーストラリア行きのお話もあります。それが実現すると、今年はカナダを含めて海外4カ国で演奏できたことになるので、とても楽しみにしています。こういった演奏活動やさまざまな新しい試みができる年になりそうで、「自分は今、何かに向かって進んでいるんだな」という予感がしています。

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静かな情熱を込めてインタビューを結んでくれた山木さん。彼の演奏はさわやかな涼風のように優しく心地よい。散策を楽しんでいた人、食事を終えた人たちがギターの音色を聴きつけて集まってくる。用意された席はあっという間にいっぱいになり、石畳に座り込んで聴き入る人々でステージの周りは埋め尽くされてゆく。どんなに高度で複雑な奏法を披露しても、聴く者に威圧感を感じさせないのは、テクニックというよりも、そこには彼の人柄があらわれているからなのだろう。新アルバムが発売されたばかりだが、この日のライブを体験したあとでは、つい次のアルバムのリリースまでが気になってくる。計り知れない可能性にあふれ、常に冒険心を忘れないこの若きギターのマジシャンに心からの声援を送りたい。
(Emi Demski)

(2012年7月19日号)



 
 


 
 
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