【自然と生きる】

バンクーバー島・田舎暮らし(その3)
フィルバーグ・フェスティバル


〈 BC州コモックス ヒル厚子 〉


私の住むBC州コモックス(Comox)は人口わずか1万2千人あまりの小さな田舎町である。温暖な気候と美しい自然、新鮮な魚介類と農作物に恵まれた土地であるためか、近年はリタイアメントのメッカとなっている。こんな小さな町にも7月末から8月初頭にかけての連休(BC Day long weekend)には何万人もの観光客がどっと押し寄せるお祭りがある。それがフィルバーグ・フェスティバル(Filberg Festival)である。


▲コモックス町役場


▲マリーナ公園


▲娯楽用ボートが並ぶコモックス・マリーナ。遠方にコモックス氷河が見える

フィルバーグ邸の由来
コモックスには数千年前から先住民コモックス族が居住していた。1500年代後半からヨーロッパ人がたびたび訪れた歴史があるが、実際に移り住み始めたのは1860年代である。穏やかな湾、周囲の直径2メートル以上もある巨木の森林は木材輸出に最適の条件を提供した。これに目をつけて巨額の富を築いた人物のひとりがボブ・フィルバーグ(Bob Filberg)である。フィルバーグは当時BC沿岸最大の材木会社 Comox Logging & Railway Company のマネジャー兼最高責任者であった。


▲フィルバーグロッジ公園の入り口


▲公園内の鹿。鹿は町中でよく見かける


▲公園の岸辺側。満潮のときは水がすぐそこまで来る。後方はボーフォートの山並みとコモックス氷河

1929年に彼と妻フローレンスは、この美しいコモックス湾に夏の別荘を建築した。しかしそのあまりにすばらしい立地条件と環境に惚れ込んだため、1935年にはここを定住の住まいとし、二人の子供たちもここで育った。海ぎわにはスイミングプール、奥には馬屋や広大な庭と次々に改築をすすめ、夏の別荘は豪邸へと変身した。


▲フィルバーグ邸


▲フィルバーグロッジ公園内。四季を通じて花が咲き乱れ、静かで美しい場所である


▲乗馬用の馬屋だった小屋

家族は1977年にボブ・フィルバーグが死去するまでこの家に居住した。巨額の富を築いたものの、フィルバーグ家には不幸が続き、ボブ・フィルバーグの遺言により、ほとんどの所有地と財産はバンクーバー財団法人に寄贈された。土地はゴルフ場になったり妻の名のレクリエーションセンターが建築されたりしている。

フィルバーグ邸を含めた豪邸跡はフィルバーグロッジ公園としてコモックス町が管理している。その維持費のためには十分な遺産が残されているという。公園は普通の日は朝8時から日暮れまで無料で提供されているが、イベントの日には入場料がいる。ほかに結婚式や野外コンサート、グルメディナー、絵画展など年中忙しく使用されている。

フィルバーグ・フェスティバル
フィルバーグ・フェスティバルはコモックス最大のお祭りである。今年は8月3日(金)から6日(月)までの4日間開催される。同じ週末にマリーナ公園ではノーティカル・フェスティバル(Nautical Festival)も開催されるため、静かな田舎町は突然活気づく。フィルバーグロッジ公園にはカナダ全国から120人以上のアーティストが集まり、絵画、陶芸、彫刻、クラフト、美肌プロダクトなどを売る。

一区画はコンサート会場となっていて、クラシックからジャズ、ポップ、ハードロックまでさまざまなミュージシャンが入れ替わり立ち替わり音楽を奏でる。その間に岸辺は満潮になり干潮になる。干潮の岸辺を子供たちが歩き回る。食べ物の出店の前に長い列ができる。フィルバーグ邸の一部を利用した Tea House レストランではアイスクリームが飛ぶように売れる。

バンクーバー島の人々が、これまた「MUST」と薦める誰もが一度は行ってみなければならないお祭りのひとつである。入場料は、大人1日券15ドル、前売り13ドル、4日パス40ドル、12歳以下無料。

ノーティカル・フェスティバル
ノーティカル・フェスティバルは「海洋祭り」とでも訳すのだろうか。これは埠頭近くのマリーナ公園でフィルバーグ・フェスティバルと同じ週末に開催される。フィルバーグ・フェスティバルには入場料がいるが、こちらは無料。自家製イカダのレース、コンサート、アーティストのブース、食べ物の出店などを含め、海兵隊カデットのパレード、海を利用したさまざまな催しが一日中繰り広げられる。子供たちにはこの方がずっと面白い場所かもしれない。

コモックスという町
コモックスのお祭りがすばらしいのは、何といっても美しい景観を伴うからであろう。三方を海に囲まれ、目の前にはボーフォートの山並みとコモックス氷河が並ぶ。空には白頭鷲が弧(こ)を描き、海面には突然シーライオンが顔を出す。清潔でかわいい街並みのダウンタウン。田舎町とは嘲笑できないグルメのレストランもある。娯楽用の豪勢なボートやドラゴンボート、カヤックを眺めたり、パドルボード族が海の上を歩くように渡っていく様子を見るのも面白い。

一方の漁船用の埠頭では、夕方になると漁船が入港し、新鮮な魚やエビが入手できる。コモックス版の天橋立(あまのはしだて)であるグーススピットという砂州は、海水浴や焚き火で賑わう。周囲には商業の中心であるコートニー市やレトロな村のカンバーランド村もある。

ワイナリーから有機農場、戦闘機ファンには空軍の博物館もある。バンクーバー島で最古最大のストラスコナ州立公園もすぐそこである。秋から春にかけての雨、雨、雨を除いて文句なしというのが私の感想である。 ぜひ一度足を伸ばしてこの楽園の醍醐味を味わっていただきたい。

(2012年7月19日号)

 



 
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