【新刊紹介】

がんを宣告された4人の子を持つ母の奮闘記
「天国のママから届いた最後の贈り物」(講談社)
マリー・ロール・ピカ著/ふじもとのりこ翻訳


「フランス中が泣いた! 余命2カ月のシングルマザーが子供たちのために行政と闘った愛あふれる感動の実話(リアルストーリー)」──本書の帯に記されている紹介文である。これだけを読むと病(やまい)に冒された母親が子供たちのために必死で生きていく重いイメージを持ってしまう。しかし、著者マリー・ロール・ピカの天性の明るさが、深刻な内容にもかかわらず、時にユーモアさえ加えて書かれていることにいっそう引き込まれていく。そして、今いろいろな悩みを抱いている人たちも、彼女の壮絶な苦しみと闘いに比べれば「取るに足らない」と感じるのではないだろうか。

マリーはパリ近郊の小さな村に生まれ、結婚して4人の子供に恵まれる。彼女の生い立ちが不幸であったせいか、いっそう子供に愛情をそそぐ。夫が育児に協力的でなかったことを除けば平穏な暮らしだった。そんな暮らしが一変したのはマリーが36歳のとき。がんが見つかり、さらに転移を知らされ、余命が短いことを宣告されたことからである。自分が亡き後、成長した彼らが母親についての質問の答えとなるようにこれまでの人生、がんとの闘い、いかに子供たちを愛し、彼らのことを思ってきたかを記録として残すために書いたのが本書である。

2008年3月、マリーは胆管がんが見つかり化学療法の治療を始めるが、結果はかんばしくなく、ついにその年の10月脊髄に転移したことから、余命2カ月を宣告される。4人の子供たちは11歳、9歳、5歳、2歳とまだ母親の手が必要な年齢である。マリーが一番心配したのは、子供たちの将来のこと。自分の死後、彼らがこれまでと同じ学校に通い、同じ友達と遊べることを希望した。運よく4人の子供を引き受けてくれるすばらしい里親がみつかったが、そこに行政の壁が立ちふさがる。

法律的手続きは簡単には変えられない。そこでマリーはマスコミに訴えるという大胆な行動に出る。短い余命を前に子供たちの幸せを考え、夫と離婚、シングルマザーとなって子供たちを守ろうとする。

本書は第1章の「発覚」から第19章の「さよなら、子供たち」まで、真実を飾り気なくさらけ出している。そこに読者は心をゆさぶられるだろう。時には一生隠しておきたいことまでも「本当の母の姿を知ってほしい」という思いから、ためらいなく書かれている。そして最も強く感じるのは、やはり第10章にもある「母は強し」である。

子育てに悩む時、また人生につまずいたとき、この本との出会いは大きな励みとなるだろう。先日、本書は日本図書館協会の選定図書に選ばれた。

訳者のふじもとのりこさんは、翻訳家、ライターとして活躍しており、モントリオールに在住中は、日加タイムスのリポーターとして数々のインタビュー記事や紀行文を寄せてくれた。本書が読みやすく、次々とページをめくりたくなるのも訳者の力によるところが大きい。

「天国のママから届いた最後の贈り物」
マリー・ロール・ピカ著/ふじもとのりこ翻訳
発行所:講談社    価格:1400円(税別)

読者プレゼント
e-nikkaでは本書「天国のママから届いた最後の贈り物」を1冊、読者にプレゼントします。
ご希望の方は、お名前、住所、電話番号を明記のうえ、編集部「 info@nikkatimes.ca 」までご応募ください。締め切りは8月17日(金)です。希望者が多数の場合、抽選でお一人様を当選にさせていただきます。

(2012年8月9日号)

 
 


 
 
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