【ひと】

東日本大震災募金「桜ライン311」を掲げ
自転車でカナダ横断の旅をする中内善和さん


昨年3月11日に起きた東日本大震災のあと、日本国内外でいろいろな形で支援や募金活動が行われている。そのひとつに中内善和(なかうち・よしかず)さんが現在行っている「桜ライン311」がある。今年6月、バンクーバーからVIA鉄道、フェリーなどを使ってニューファンドランドのセントジョンズに到着。ここから自転車に乗って募金活動の旅が始まった。出発から今まで7000キロの道のりを経て、9月1日、トロントに到着した。セントジョンズからバンクーバーまでカナダ大陸横断、まだまだ旅の途中である。


▲中内善和さん

「桜ライン311」とは・・・
「桜ライン311」は、津波で大きな被害を受けた岩手県陸前高田市が昨年10月に立ち上げた。
「風化されないよう後世に震災・津波の恐ろしさを伝えるとともに亡くなった人への冥福を祈る意味もあって、津波が襲った最高到達地点に桜を10メートル間隔で170キロの海岸線に植樹する運動」。これが桜ライン311である。
ざっと1万7000本の桜が必要となる。今年4月に植樹が始まり、現在のところ植樹されたのは約260本ほど。ちなみに津波の最高到達地点は高さ約40メートルもあったそうだ。
「大震災のあとすぐ昨年4月にワーキングホリデーでバンクーバーに来たのですが、そのときはすでに予定が決まっていたので何もできずにこちらへ来てしまいました。でもいつか自分でできる支援をやりたい、と考えていました。ただお金を集めて渡すというのではなく、送り先や使い道がはっきりしているということで、後世に残る桜ライン311に共感したのです」ときっかけを語る。
中内さんは桜ライン311をカナダでの募金活動として独自に「YOSHI ROLLS FOR JAPAN」と名前をつけて訴えている。

四国八十八カ所お遍路の旅から日本全国を徒歩で・・・
中内さんは1982年仙台市に生まれ、長野県茅野(ちの)市で育つ。東京理科大学諏訪短期大学経営科を卒業後、東京へ。震災への支援を思い立ったのも、生まれ故郷であり両親の実家や親戚が東北にあることが大きく影響している。
26歳の時、35日間かけて四国八十八カ所お遍路の旅を行った。歩いた距離は1200キロ。その時、「歩き旅のよさ、人とのふれ合いのすばらしさを知り、考えさせられました」。その後、海外へ出ようと考えたが、「海外に出る前にまず、自分の目で見て日本を知らなければ・・・。外国で日本のことを聞かれてもよく知らない、ということがありますよね」。ということで北海道・稚内からスタートして鹿児島まで、そこからフェリーで沖縄までと4カ月かけてテント生活をしながら日本縦断歩き旅を貫徹した。この時の経験が今回の旅の基礎にもなっている。


▲6月20日、ニューファンドランド州セントジョンズ出発、1日200キロ走行に挑戦。途中、かわいい子供たちと一緒に


▲7月3日、ニューファンドランド。ぬれた服も洗濯して乾き、太陽にお礼を


▲7月6日、ニューファンドランドの WOODY POINT という町でお世話になったレストランの人と記念写真

すべてをプラス志向に
昨年4月、ワーキングホリデーでバンクーバーに来る。「東京でそば打ちの仕事をしていたので、カナダでもそば打ちを広めたいと思っていました」。しかし、実際はその機会はなかったが、日本レストランで働き、旅の資金を貯めた。自転車の長旅は経験がなかったが、周囲の人たちの応援を得て、日本へ帰国する前に今回の「桜ライン311」自転車募金活動を決行したのである。
6月20日、セントジョンズ出発。最初のころは1日100キロほど走り、慣れてくると平均150〜160キロ、最高13時間走り続けて262キロに。天気は、雨の日もあれば晴天もある。「雨を水車のイメージに切り替え、また風の強い日は風車を、太陽が照りつける日はソーラーパネルをイメージして、どれもエネルギーをもらっているのだとプラス志向に考えるようにしました。それからは天気に左右されなくなりました」。目下、1日300キロ走ることを目指している。
これまで事故や盗難に遭うこともなく、病気もせず順調にきたが、一番こわかったのは大型トレーラーの風圧だった。「話には聞いていましたが、実際トレーラーに吹き倒されそうになったときはコントロールができなくてこわかったです」と。


▲7月18日、ノバスコシア州ハリファックスの路上で出会った学校の女性教師が「桜ライン311」プロジェクトに賛同してくれ、その日、ホームパーティーに招待してくれた


▲8月21日、ケベックシティーの旧市街、ロワイヤル広場にて

人との出会い、親切さをしみじみ感じて・・・
日本で歩き旅をした時と同様、今回もあちこちで人の親切さをしみじみ感じた。「震災や津波の話をするとカナダ人はすぐに共感してくれます。本当に親切さをしみじみ感じました。日本人に対しても信頼があるのですね。日本人の先人たちが築き上げてくれたおかげだと思い、感謝しています。そして自分もあとに続くだれかの先人として走り、バトンをつなぎたいと思います」。さらに「この運動を通してカナダ人に日本のことを知ってもらうと共に日本にいる人にもカナダの自然の美しさや素晴らしさを知ってもらいたいと思っています」。
旅の途中、「桜ライン311」に関して各地のマスコミから取材を受けた。ノバスコシア州のハリファックスではグローバルTV、ルーネンバーグではCBCラジオ、プリンスエドワードアイランド州ではザ・ガーディアン紙、CBCラジオ&TVなど・・・。
こういうこともあって、旅ではテント生活をしながらも極力清潔を保っている。「一般的に汚い、臭いイメージがあるのですが、そういうイメージを払拭するためにもレストランや公共の施設を利用して極力清潔にし、ヒゲも毎日そります」。しかし、これからは熊など動物の危険もあることから、できるだけ安いB&Bなどに泊まることにしているそうだ。


▲8月30日、オタワ。尊敬している「片足のマラソンランナー」TERRY FOX の銅像とツーショット。「とてもパワーをもらった瞬間です」


▲8月30日、オタワの国会議事堂前で、話しかけてきてくれたRCMP(連邦警察)の警察官と記念撮影


▲9月4日、トロントのカサロマにて

将来、再びカナダへ?
「日本へ戻ったらまず、旅のきっかけをつくってくれた四国八十八カ所お遍路にお礼参りをし、今度は逆に南の鹿児島から東北へ旅をして陸前高田に桜ライン311『YOSHI ROLLS FOR JAPAN』で集めた義援金を持っていく予定です」
さらに「旅をしていくうちに、将来、カナダで生活してみたいと思うようになりました。特にいろいろな人種が集まり、多様な文化があるトロントが好きです」。今度は日本で基盤を作ってから出直したいという。
これまで気が張っているせいもあって病気になることはなかったが、体重は8キロ減ったそうだ。10月中旬、バンクーバー到着を目指してさらなる旅は続く。中内さんの人生にとってこの経験は何ものにも替えられない貴重な宝物となるだろう。無事到着と楽しい旅であることを祈るばかりである。


▲インタビューで話しながら中内さんが作ってくれた桜の折り紙。「桜ライン311プロジェクトでお世話になった方に作って差し上げています」

【桜ライン311 募金について】
中内善和さんのサイト http://yoshirolls.org/ の「DONATE」のセクションで寄付ができます。BMO(モントリオール銀行)の口座に保管され、支援者である、中内さんがバンクーバーで働いていた「TOJO’s」レストランのオーナーが管理しているそうです。また、他に集めた募金は別の口座が設けてあり、現在4,300ドル集まっています。目標金額は5万ドル!

〈 取材・いろもとのりこ 〉

(2012年9月13日号)

 



 
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