【世界の街角から】

娘の結婚式場選択のためアテネへ
そしてエーゲ海サントリーニ島でバケーション 


〈 トロント・牧野憲治 〉

今回のギリシャ旅行は、私達の娘が来年ギリシャのアテネで結婚するので、その式場の選択が主目的でした。


▲私達が選んだアテネのミュージーアム結婚式場の野外宴会場

ギリシャは、ご存じのように、現在ヨーロッパ経済危機の震源地と見なされ、世界の注目を浴びています。なぜこうなったのかとの理由は、著名な政経学者たちが、ああでもある、こうでもあると述べていますが、ティムホートン(Tim Hortons)コーヒー会話的結論は、要するに彼らは税金も払わずに身分不相応な生活をエンジョイしすぎた、ということでしょうか。
彼らの大先輩の思想家アリストテレスによれば、「人はすべからく自分の社会への貢献度によって報酬を受けるべきである。その基準は最終的に法律で定められる」。これは今ベストセラーになっている ハーバード大学教授、 Michael Sandel の著書『Justice』の受け売りです。この思想は古すぎるにしても、今のギリシャはこの正反対のところにあるようです。

サンデル氏は今や、政治哲学者としてスーパースターとなり、日本での講演会も人気を集めたそうなので、ついでにもう少しこの本の受け売りをしますと、社会正義とは4つのカテゴリーに分けて考えられる。
1.最大多数の最大幸福を達成する(社会主義的) 2.人間の持つ最も重要な権利、個人の自由を最重要視する(自由主義的) 3.宇宙と人を創った神の教えに従う(宗教主義的) 4.人間のみが持つ理性を磨き上げ、それを100%使って、判断、選択、行動する(近代哲学者イマヌエル・カント的)
一昔前のカナダ首相トルドー氏(Pierre Trudeau)がとなえた「Just Society」(正義のある社会)とはどのあたりを指していたのでしょうか。

さて、International Marriage (国際結婚)は今や日常茶飯事ですが、これに Inter-Religious Marriage (異宗教間結婚?)の要素が絡んできますと、俄然(がぜん)複雑化してきます。私達の友人のユダヤ人の友人の息子がカトリックの女性とトロントで結婚したとき、ユダヤ教のシナゴグ(Synagogue)で式を挙げるか、カトリックの教会で挙げるか折り合いがつかず、結局、結婚式を両方で、つまり2回挙げたそうです。

私達の娘はカナダ人で無宗教、彼女のフィアンセはギリシャ系カナダ人ですが、生まれたときすでにギリシャ正教の洗礼を受けています。彼は特に宗教的ではないのですが、区役所の係りの人に来てもらって10分間で結婚するのはどうも味気ない、やはりカラフルなギリシャ正教会での式を、ということで娘も賛成しました。
問題は、彼女は洗礼を受けないと教会に入れないことが、その後、分かったことです。この形式的のみにせよ洗礼を受けるということが、どういうことを意味するのか検討を続けています。前述のユダヤ人の友人は、「お前さん達は宗教的にはナッシングだ。ギリシャ正教会で式を挙げ、あとはまた今までどおりのナッシングに戻ればいい。心配することないよ」などと無責任なアドバイスをくれました。
「冗談じゃないよ、私達はナッシングじゃない。選択によって既存のどの宗教にも属さないだけだ」と言いましたが、分かったかどうか。彼に言わせれば、形式的に洗礼を受けても神を冒とくしたことにならない、そもそも彼女にとってその神は存在しないのだから冒とくしようがない(ちょっと詭弁的)ということなのでしょうか。もっともユダヤ教はキリストを神の子とは認めていない。

アテネでは、娘のフィアンセの両親(アテネ在住)が前もって選別してくれていた4つの候補式場を、娘とフィアンセを含めた6人で訪問し、イベント マネジャーから説明を受けました。なにしろその週は日中気温40度前後でしたので、訪問は1日1カ所、あとは近くの海で泳ぎ、氷割りのウゾ酒とメゼス料理(前菜)を味わいながら訪問の成果を検討,比較するということにしました。

4つの候補のうち2つはホテル、あとの2つは結婚式を含めたイベント場でしたが、最終的に「ミュージーアム」と呼ばれる古めかしい大邸宅を改造したイベント場に傾きました。私達を迎えてくれたオーナーはアメリカで財をなし、ギリシャに帰り、この大邸宅を買い取ってイベント場に改造した人で、アンソニー・クイン演じる、映画「その男ゾルバ」(Zorba the Greek )のゾルバを彷彿(ほうふつ)とさせる豪快な人物でした。
ギリシャでは常に物事がなかなか予定したようにいかないという感があるので、この人が指揮をとれば大丈夫かなと思ったのも選択の理由の一つでした。この一週間後に実際の結婚式にオブザーバーとして招いてくれたので、式の進行具合を見たり,試飲、試食ができ、それも判断の助けになりました。


▲宴会が始まり花嫁花婿が花火とともに登場

この仕事(?)がひとまず終わって、フィアンセの両親と4人でサントリーニ島(Santorini)に今度は本格的バケーションということで出かけました。この「世界最高の島」(BBC2011年アンケートによる)と評されている島は、アテネの南東方向約200キロの所にあり、空を飛んで行くこともできますが、私達は車と一緒にフェリーで渡りました。フェリーの所要時間は高速船でアテネの港ピレウス(Piraeus)から約4時間半。

サントリーニ島はかつては円形の島だったそうですが、紀元前の大昔に大爆発を起こして半分くらいが海に沈没し、その環状噴火口の半円が現在海上300メートルの崖(がけ)となって南エーゲ海に臨んでいます。この崖っぷちに白亜のホテル、別荘、アパート、たまに青いドームのギリシャ正教会などがびっしり詰まって建っています。
私達のこぢんまりしたホテルもここにありましたが、部屋のバルコニーから眺めおろすと真っ青に広がる南エーゲ海、そこに浮かぶ玩具のように見えるクルーズ船、左右に連なる白亜の建物など「世界最高」のタイトルも的外れではないなとうなずけました。クルーズ船から何隻もの小さなボートに乗って観光客がはるか下の港にやって来ますが、そこからケーブルカーかロバに乗って登ってくるのが見えます。


▲サントリーニの私達のホテル、ここから88階段登って朝食ベランダに向かう筆者のワイフ


▲ホテルの部屋から見る眺め

今回はいつもの旅行でやるハイキング、トレッキングはなしということでしたが、私達の部屋から朝食用のホテルバルコニーまで88段もの階段を登り、街へ出るためにはさらに80余の階段を登って行くので、これを一日数回、気温30−40度でやると、けっこうその代用になったという感じがしました。

▲朝食ベランダでくつろぐ筆者(右端)と娘のフィアンセのご両親


▲サントリーニの海水浴場のひとつ、ペリッサ(Perissa)のブラックビーチ

サントリーニ島は想像していたよりはるかに大きく、全島73平方キロ(ゴルフ場100個位)。私達が滞在した島の首都フィラ(Fira)、特にサンセットで有名なオイア(Oia)、気に入ったビーチとレストランがあったカマリ(Kamari)など、いろいろな地域があります。また レッドビーチ、ホワイトビーチ、ブラックビーチなどそれぞれ趣が違って面白いのですが、カリブ海のような砂浜ではなく、岩や石が多く、簡単に海に入れません。慣れていない私達には足底を保護し滑り止めにもなるスリッパを持ってくればよかったと思いました。


▲部屋のベランダで夕日を見る


▲オイア(Oia)の街


▲オイアで立ち寄った画廊から外の海を見る


▲オイアのギリシャ正教会の青いドーム

サントリーニはまた豪華なサンセット(日没)でも有名ですが、それを見るのは、観光宗教(?)の儀式のようなもので、その時刻が近づくと、毎夕、皆そわそわと好みの場所を見つけて陣取り、ワイン、シャンパン、ウゾ酒などを片手に待機します。


▲オイアの漁村。ロブスターを食べたレストランが右手に見える


▲メゼス(前菜)料理の数々

私達の食事は、まず氷割りのウゾ酒、ワインとメゼス料理数皿の繰り返しが多かったのですが,メゼス料理は各レストランで内容、料理の仕方に変化があり、飽きませんでした。一つ、特に思い出に残ったのは、オイアの街見物のあと近くの漁村で食事をしたとき、氷の上に横たわる巨大なロブスターを見て指差したところ、これは目方では200ユーロだが160ユーロに負けてやるといわれ、バーゲンに弱い私がフィアンセのお父さんの顔を見たとたん、お互いにうなずき合い「よし、いこう!」ということで決定。ゆで上がって出てきたロブスターのとてつもなく硬い爪と格闘したことです。


▲ニューヨークで活躍しているギリシャ人ジャズトリオがサントリーニで演奏


▲この快速船で持ってきた車とともにサントリーニから帰る

島で最後の夜、ニューヨークで活躍しているギリシャ人のジャズグループの演奏があるというのでまた170数段の階段を登り、さらに世界中から集まる観光客で雑踏する曲がりくねった細い坂道を登って演奏会場の教会に行きました。
このトリオは ビブラフォン、ベース、ドラム という変わった組み合わせでしたが、そのドラマチックな演奏ぶり、お互いの見事に息の合った掛け合いの巧みさなどがジャズど素人の私にも通じ、なるほど本場のニューヨークで活躍できるというのはこういうことかと感動しました。
彼らのリーダーのビブラフォン奏者は、「一昨日までニューヨークで演奏していて今晩はサントリーニで演奏している。何か不思議で、神秘的な感じさえする」と感想を述べていました。彼らにとってギリシャに帰って演奏するのはやはり特別な意味があるのだと思いました。

(2012年9月27日号)

 



 
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