【世界の街角から】

のんびり、穏やかな雰囲気
古都・奈良に魅せられて


〈トロント・中村智子〉

先日、「奈良は京都に比べ知名度が低く、うんぬん」という記事をネットで読み、古都奈良の良さをお届けしたく、筆を執った。

京都府には政令指定都市(京都市)があるが、奈良県にはない。規模が大きく、地方都市よりは財政にも余裕のある府県の方が、宣伝やPRに力を入れるのであろう。だから奈良よりも京都の方が若干知名度が高いように思えるのは否めない。が、しかし、奈良の魅力だって京都には負けていない。


▲東大寺大仏殿。建物が大きすぎて、端がカメラに収まりきらなかった


▲奈良公園

第一に、奈良は大阪や京都などの大都市が近いにもかかわらず、非常にのんびりとした所で、奈良では時間の流れがゆっくりなような気がする。かつて都があった場所とは思えないくらいに静かで、穏やかな雰囲気を醸し出している。

知り合いの地元民でさえも「内陸県だし(注=日本で海に面していない県はたったの8県しかない)、奈良にはこれと言って何もない」と言うが、この落ち着いた空気こそが、観光地でありながらも住み心地の良い場所を作り上げているのではなかろうか。事実、奈良に居を構え、大阪や京都へ仕事・学校に行く人達の割合が高い。物価も大都市よりは低いので、住むにはかなり適しているように思える。

奈良といえば大仏さん。これを抜きに奈良を語ることはできないであろう。752年に建立され、世界遺産でもある東大寺大仏殿に安置されている大仏の高さはなんと14.7メートル(マンション5階の高さに相当する)。こんなに大きな大仏を作れる技術が8世紀にあったことに驚く。

大仏殿内には、大仏の鼻の穴と同じ大きさのそれがくりぬかれた柱がある。小中学校や高校の遠足で行った時には、その穴を簡単にくぐり抜けられたのだが、大人になった今となってはお腹がつっかえて無理だろうなあ・・・と考えていたら、私よりももっと大きなお腹の外国人観光客が、穴に入ったはいいが、そこから抜けられずにもがいていた。自分の体型と穴の大きさの目測を誤ったのか、ただのお調子者だったのか。


▲興福寺・五重塔


▲奈良公園の鹿

このほかに私が訪れた場所は、興福寺(東大寺や興福寺は奈良公園内にある)、西大寺(人の顔の倍以上はあるであろう大茶碗でお抹茶を頂く、大茶盛=おおちゃもりで有名なお寺)、平城宮大極殿と橿原(かしはら)神宮。一時期、日本ではパワースポット巡りというのがはやったそうだが(今もまだはやっているのかもしれないが)、寺社仏閣を訪れると、自然と背筋が伸びて神聖な気持ちになるから不思議だ。困った時の神だのみと言うが、お賽銭(さいせん)をあげて拝むその一時だけでも願いがかなうような気がする。本来は困った時だけではなく、定期的にお参りするのが望ましいのだろうが・・・。


▲西大寺


▲橿原(かしはら)神宮の鳥居


▲企業役員総出のおはらいとそのあとのお屠蘇(とそ)。名古屋から貸切バスで来たという団体さん(橿原神宮にて)


▲平城宮大極殿

また、石舞台古墳や高松塚古墳のある明日香村も見逃せない。学生時代に、語学研修を兼ねた合宿に参加した際に何度か明日香村を訪れたのだが、日本百景にも選ばれそうなくらいに、のどかで美しい景色が広がっている。村の空気は澄み切っていて、夜には満点の星空を望むことができる。

さらには、近くに清流があるので地元で収穫されたお米のおいしいこと! その清流はおそらく村を通り抜ける明日香川の支流かと思われる。周辺には棚田もたくさんあり、まさに日本の景勝地だ。それにしても、明日香村で食べたあの艶やかな炊きたてご飯の味を、私は今でも忘れることができない。カナダに住むとおいしい日本の白米がなおさら恋しくなる。

次にまた奈良を訪れる機会に恵まれたら、今度は桜で有名な吉野にも行ってみたいと思う。このように、京都とはまた一味も二味も違った趣のある奈良は、昔も今も人々を魅了し続けてやまない。

(2012年10月4日号)

 



 
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