【ひと】

ファッションイベント・クリエーター
企業家を目指す倉掛俊大朗さん


今年3月30日にトロント市内のグレートホールで東日本大震災支援の義援金募金イベント「IRO 〜A Night of Fashion and Music for Japan〜」が開催され、大勢の人が来場、大盛況だったのはまだ記憶に新しい。当日はバンド演奏、その他のミュージックパフォーマンス、ファッションショーなどが華やかに繰り広げられた。これらをコーディネートし、イベントの代表を務めたのが、ファッション業界で活躍してきた倉掛俊大朗(くらかけ・しゅんたろう)さんだった。このイベントは彼がトロントに来てわずか3カ月余りの行事。その行動力と集客力には驚くばかりである。


▲倉掛俊大朗(くらかけ・しゅんたろう)さん

そして12月9日、再び新しい感覚のファッションイベント「HANABI Market and Show 2012」を前回と同じグレートホールで開催する。イベントに向けて企画にエネルギーを燃やす倉掛さん。ファッション企業家を目指す倉掛さんにとっても大きな登竜門になるだろう。

■門前の小僧、服飾業界3代目
倉掛さんは福岡市生まれの博多っ子。27歳になったばかりの若き駿馬のような存在である。実家は福岡で祖父が企業した「まるとく」という洋服店。現在市内に3店舗構えている。彼はその店の3代目に当たる。
「小さいころから縫い子さんの間で遊んでいましたから、服飾の世界にすんなり入れました」。とはいえ、16歳までは「本当は絵が好きだったので画家になりたかったのですが・・・」と反発した時期もあったようだ。


▲ベルギーのアントワープ市庁舎前にて

地元の高校を卒業後、日本の大学には進まず、イギリスへ。ウインチェスターとロンドンで大学に入るために語学学校に通う。その後、ロンドンのファッション系の大学、セントラル・セント・マーティン(Central Saint Martins College of Art and Design)のコースに通う。さらに世界的に有名なベルギーのアントワープにあるファッション系の大学、アントワープ王立芸術アカデミー(Royal Academy of Fine Arts)で2年間学ぶ。
ファッションというと一般的にはミラノやパリ、ニューヨークを考えてしまうが、倉掛さんは、「発表の場だとそうかも知れませんが、ファッションデザイン、制作を学ぶのであれば、僕が学んだロンドンやアントワープが優れているのです」と言う。

■東日本大震災が人生に大きく影響
2007年、ベルギーから日本へもどった倉掛さんは、東京でスウェーデンに本社がある大型ファッションブティック「H&M」に就職し、日本での進出第1号店の立ち上げに参加した。香港で研修を受けたのち、ビジュアルマーチャンタイザー、新店舗立ち上げの責任者などを丸3年間務めた。
「そのころちょうど3・11の大震災に東京で遭いました。東北ほどではありませんが、東京でもかなりの揺れがあり、連日の余震に人生を考え直さざるを得ませんでしたね。この先、いったいどうなるのだろう、一寸先はだれも分からないわけです。それだったら思うように生きていこう。自分を可能な限り試してみたい」と。
そこでH&Mを退社し、とりあえずワーキングホリデービザでトロントへ。昨年12月のことである。トロントを選んだのは、「ワーキングホリデービザで来やすかったことやニューヨークに近いこと、東京やニューヨークに比べてファッションが成熟していないだけ将来性があると思ったからです」。
実際、トロントに来て、「とても住みやすいです。イギリスやヨーロッパと比べて人種のことをあまり感じませんし、気負うこともありませんから楽ですね」。3月トロントで大震災のチャリティーイベントを催したのは震災の影響を受けたことが大きい。
トロントではロサンゼルスに本社があり、日本やイギリスにも支店がある「Forever 21」というファッション系会社に入社。販売などを担当したが、数カ月でやめ、現在はフリーで動いている。


▲今年3月30日トロントで開かれた東日本大震災支援の義援金募金イベント「IRO 〜A Night of Fashion and Music for Japan〜」のファッションショーのフィナーレでデザイナー/モデルさん全員集合!(撮影:平田 誠)


▲3月30日のイベントを指揮する倉掛俊大朗さん(撮影:平田 誠)

■ファッションイベント・クリエーター
倉掛さんが目指すのはファッションデザイナーではなく、あくまでも経営者としての企業家である。「学校ではもちろん、デザイン画からミシンを使って服も作りました。しかし、もともと商売人の家系ですから、商売感覚が先立つんです。市場に受け入れられるデザインはどのようなデザインかと思ってしまうのです」。ちなみに好きなデザイナーは山本耀司(ようじ)さんだそうだ。
さて、12月9日に倉掛さんとしては2回目のファッションイベントを開催するわけだが、今回の目的を、「クリエーティブなデザイナーをプロデュースしたい。デザイナーの発表の場を作ってあげ、僕も彼らと共に発展していくことです」と語る。 「参加するデザイナーは前回と同じ人たちプラス何人か加わると思います。今、そのために駆け回っているところです」。イベントを企画し、いろいろな人や企業と渡りをつけ、コーディネートするのは大変なエネルギーが必要だ。しかし、「根っからこういう仕事が好きなんですね」と、笑う。だからこそ、動き回ることが苦にならないのだろう。

■将来はトロントで起業を
ビザなどの関係でいったん日本にもどるかもしれないが、いずれはトロントでファッション関連の企業を起こすことを考えているそうだ。「トロントは成熟していないだけに可能性がいっぱいあります。僕自身、この街が好きですし、是非ここで起業したいですね」。
とかく、「今の日本の若者は内向きで、冒険を好まない」と言われるが、倉掛さんのようにアグレッシブで常に挑戦し続ける若者がいることに「日本も捨てたものではない」と、勇気づけられる思いがするものだ。夢が実現するよう声援を送りたい。
http://www.kurakake-market.jp/ 

「HANABI Market and Show 2012」
◆日時:12 月9 日 (日曜日)
マーケット:午後1時〜午後6時
ファッションショー&ミュージック:午後7 時〜午前1 時

◆会場:The Great Hall
    1087 Queen Street West, Toronto (Dovercourt Road の東南角)
    収容人数:500 名

◆入場料:前売り$15 / 当日 $20 (19歳以上に限る) Alcohol Available

◆主催:KURAKAKE COMPANY
◆チケット販売&協力 :Atelier May, Guu, Brand New Way

※マーケットとファッションショーの参加者を随時募集しています。興味ある方は次のアドレスへ連絡を。
kurakakecompany@gmail.com

〈 取材・いろもとのりこ 〉

(2012年10月25日号)



 
 


 
 
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