【インタビュー】

映画「遺体 〜明日への十日間〜」
君塚良一監督に聞く


〈 Coco Montreal誌より 〉

東日本大震災が発生した2011年3月11日から「最初の10日間」に、岩手県釜石市の遺体安置所で実際に起きた出来事をもとにした映画「遺体 〜明日への十日間〜」。今年のモントリオール映画祭に出品された。君塚良一(きみづか・りょういち)監督に、作品にこめた思いを伺ってみました。


▲映画製作について語る君塚良一監督(Photo by Maxim Rheault)

監督ご自身は「最初の10日間」をどのように過ごされていたのでしょう。

東京に住んでいて、ニュースで災害を知りつつも日常生活を続けていました。その後、原作と出会い、同じ10日間に被災地で起きたできごとを知って衝撃と感銘を受けました。それをありのままに劇映画として伝えるのが、映画監督としての僕の役目だと思った。それが、この映画を作ったきっかけです。

作品の中で、遺体安置所の様子がかなりリアルに描かれていますね。

どの遺体安置所でも、ご遺体の尊厳を守ろうという態度が自然発生的に出て来たのだそうです。何のマニュアルもないのに「きれいにする」「きちんと並べる」ということができるのは、やはり日本人のすごさなのかも知れません。

撮影においては、取材時にモデルになった方たちに「事実は見ていないから描けないと思うけれども、真実は動かさないで下さい」と言われたことを忘れないようにしました。しかし非常に重く、一歩間違えばご遺族を傷つけるような題材です。関係者一同、「これは映画人にできる供養だ」と思い、祈るような気持ちで撮影しました。


▲君塚監督 Photo by Maxim Rheault

邦題は「遺体」ですが、英題を「Reunion」にした思いをお聞かせ下さい。

日本人独得の死生観に、まずは魂が宿っていた体、つまり「遺体=遺された体」に再会したい、というものがあります。悲しみを感じつつも、再会を強く望む日本人の姿を描くなら、「Reunion」というタイトルが外国の方に一番伝わりやすいと思いました。

   *   *    *

「真実を知るのは非常に辛いことだけれど、真実を知れば、被災者の方の心に寄り添う事ができる」と語る君塚監督。この映画を通じ、多くの人が改めて被災地に想いを寄せることを、願わずにいられません。

〈 インタビュア・伊地知奈々子 〉

■君塚良一監督プロフィール

東京都出身、日本大学芸術学部卒業、54歳。脚本家、映画監督、放送作家。テレビでは「欽ちゃんのどこまでやるの!?」「踊る大捜査線」「ずっとあなたが好きだった」など話題作の脚本を多数手がける。映画でも「踊る大捜査線」シリーズの脚本を担当。映画監督としてはこれまでに「容疑者 室井慎次」「MAKOTO」「誰も守ってくれない」などの作品がある。
今回の作品「遺体 〜明日への十日間〜」は石井光太原作「遺体 震災、津波の果てに」(新潮社刊)を映画化したもの。2013年2月23日に日本全国で公開される予定である。出演者は、西田敏行、緒形直人、勝地 涼、佐藤浩市、佐野史郎、國村 隼、沢村一樹、酒井若菜、柳葉敏郎、筒井道隆など実力派俳優がそろっている。

(2012年11月22日号)



 



 
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