【ひと】

シェフと料理教室の2本立てで活躍
フランス料理・橋本渚さん


最近トロントでは、フランス料理系のレストランで働く日本人の料理人が増えている。橋本渚(はしもと・なぎさ)さんもそのひとり。しかし、料理人で自宅に料理教室を持っている人となるとあまり聞いたことがない。約1年前、要望に応じて自然のなりゆきから始めた料理教室。その評判が人づてでだんだん広がって、クラスはすぐ満員に・・・。少数精鋭主義がその理由のひとつであろうか。そんなシェフと料理教室の先生という2つの顔を持つ橋本さんの横顔をご紹介しよう。


▲トロントのフランス料理レストラン・シェフ、橋本渚さん

■趣味の食べ歩きがこうじて料理人に
橋本さんは1973年、東京生まれ。高千穂大学を卒業後、銀座のイタリア料理レストランにシェフを目指して就職。「当時はバブルがはじけて、ふつうの会社勤めにはあまり興味がわかなかったですね。学生のころから食べ歩きが好きで、学生にしては料理を作っていたほうです」。というわけで料理人になる第一歩を踏み出したわけである。
このレストランには、知り合いが服部栄養専門学校を通じて紹介してくれたことで入ることができた。「ここでは料理の基礎からいろいろ勉強させてもらいました」と話す。

5年間勤めた後、2000年、28歳のとき、ワーキングホリデービザでトロントヘ。
「よその土地の空気も吸ってみたいという気持ちと英語を勉強したいという気持ちもあってトロントに来ました。以前ワーホリでトロントに住んでいたという人にも会ってトロントの事情を聞き、『勉強するのならトロントがいい』と言われたこともトロントを選んだきっかけのひとつです。カナダでは一番大きな都市ですし・・・」
手に職のある橋本さんはまず、ダウンタウンのリトルイタリーにあるカフェに職場を見つける。
その後、マウントプレザント通りにあるフランス系料理店「Celestin」に入り、ここで5年間腕を磨く。

その間、グラフィックデザイナーの知亜紀(ちあき)さんと結婚。9歳の男児と5歳の女児のパパでもある。 現在は昨年4月にオープンしたアベニュー・ロードの「Left Bank Bistro」で腕を振るっている。このレストランは、トロントでは日本人フランス料理シェフとして知られる田丸雅行さんが料理長として活躍している。

■料理教室「COO」オープン
一昨年10月ごろ、日本人の奥様たち数人から「料理を教えてほしい」という声が橋本さんの耳に入った。レストランの仕事は午後からで、昼間はあいていたことから「やってみるか」と、ほんの数回のつもりで始めた。ところが、それが評判となってだんだん人数やクラスも増えてきて料理教室「COO」が軌道にのってきた。教室は橋本さんの自宅である。


▲自宅の料理教室で指導する橋本さん。「カジュアルなスタイルのほうが生徒さんがリラックスしてやれるんです」

基本的には3回の授業で1コースとしている。曜日は月曜と土曜の午前11時から午後1時までの2時間。この間に作ったものを昼食としていただく。1クラスの人数は6名。よく目の届く人数である。この日以外に「どうしても教えてほしい」という要望で人数が集まれば、別の曜日にクラスを持つこともあるそうだ。


▲シュー生地の練り具合を生徒たちに見せる


▲焼き上がったシュー生地


▲先生のデモンストレーションのあと、注意事項などを聞いて実際に生徒たちが作る

メニューは生徒さんたちの希望もあるが、できるだけ手軽にできて、しかも工夫が感じられるものを心がけている。「今までで反応がよかったのは、意外にローストチキンだったんです。特に目新しい料理ではないのですが、焼き方のちょっとしたポイントやソース、飾りつけなどが好評でした」と。そこがプロのなせる業だろう。
今のところは生徒さんは女性が圧倒的に多いが、メニューに「ラーメン」を取り上げた時は男性も参加したという。意外と「男のためのクッキング教室」を開けば受けるかもしれない。

▲評判がよかったローストチキン ▲ソースや盛り付けにも工夫を・・・ローストチキン
   
▲サラダ風生ハムとメロン ▲さばのグリル、サクサクアーモンド添え


■カナダ人の世界にも広げて・・・
料理教室は、教えるその時だけではなく材料集め、下準備(たとえば時間がかかる煮込み料理は別に前もって煮込んでおくなど)けっこう手間がかかるが、自由がきくのがうれしい。それに「料理教室はリアクションがあって、わかりやすいんです。おいしい料理ができると『わぁ〜』って感じだし・・・。レストランではお客さんの反応がすぐにはわかりませんからね」と。

今のところ生徒は日本人だけだが、「カナダ人の知り合いも習いに行きたい、と言っているのですが・・・、という声もあって、今後はカナダ社会にも料理教室の輪を広げていけたらいいなあ、と思っています」という橋本さん。
「トロントで自分のレストランを開きたい、という計画は?」の質問に「今までそのことは3万回くらい考えました。しかし、いざ実行となると大変です」。実際にレストランで働いているだけにその苦労も理解できるのだろう。当分はレストランと料理教室の2本立てで行くようだが、いつかどちらか1本に絞る日がくるのかもしれない。
いずれにしろ、トロントにおいしい食文化を広めてくれるにちがいないのは確かである。

※橋本さんの料理教室については、ブログやfacebookを参照してください。
Blog:coocookingdesignstudio.blogspot.ca
Facebook:http://www.facebook.com/CooCookingSutdio

〈 取材:いろもとのりこ 〉

(2013年1月17日号)



 
 


 
 
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