【世界の街角から】

ハワイ・カウアイ島(前編)
リフイの町で味わうスローライフ


〈 トロント・中村智子 〉


昨年11月末、寒いトロントを脱出し、常夏の島へ10日間の旅に出かけた。「ガーデンアイランド」の異名をとり、宝石のような島ともいわれるハワイ・カウアイ島。


▲カウアイ島のとあるビーチ。美しいビーチが至る所にある


▲ハイビスカスは年中咲き乱れている

カウアイ島は、ハワイのメジャーな四島の一番北に位置する気候変動の激しい島だ。一日のうちに数回あるかないかのスコールと晴れたり曇ったりの繰り返し。ある日は一日中風が強かった。が、気温は恐らく20度を下回ったことはなく、毎日半袖、短パンとサンダルで快適に過ごした。花が咲き乱れ、小鳥が一日中さえずり、まさに楽園。トロントはさぞかし寒かろうに、と思わず変な優越感に浸ってしまった。


▲鮮やかな色調の小鳥


▲リゾートのフロントはこのように吹き抜けになっているので環境に優しい。フロント脇には、レモンスライスの入った飲料水が無料で常時置かれている


▲カウアイ島から見る夕日


▲山と海と椰子の木のコラボレーション。タイガーウッズもプレーしたことのあるゴルフ場がこの辺りにあるらしい

今回、ハワイアン航空のオアフ島ホノルル−カウアイ島リフエ間のフライトに初めて乗った。リフエ(Lihue)は、カウアイ島東側にある主要空港のある町。島を管轄する役場などもある。地元民は「リフイ」と発音する。カウアイも「カワイ」と発音している。
フライトは、実質たったの20分であったにもかかわらず、機内でトロピカルフルーツジュースなるものが出た。ちなみに、ハワイアン航空はスターアライアンスメンバーではないものの全日空と提携しているので、全日空のマイレージを貯めることができた。

アメリカに行くたびに痛感するのが、何でもかんでもばかでかいことだ。ハワイもしかり。カナダに移住した当初は、カナダは何でもスケールが大きいなあとびっくりしたものだが、悲しいかな、今となっては「(レストランの食事など)アメリカよりも値段が高いのに量が少ない!」と文句を言うまでになってしまった。

宿泊するリゾートの送迎バスに乗って、リフエ空港から海に面したリゾートまで約10分。カウアイ島ではレンタカーが欠かせない。滞在2日目にタクシーを使ってリフエの町やビーチに行ったが、結局、タクシーの往復料金と一日レンタカー料金は同じであった。島内の駐車場はリゾート以外はどこでも無料。ちなみに、正規の宿泊料金とは別にリゾート料金を課すリゾートは駐車料金無料で、課さない所は有料。リゾートにもよるが、1晩20ドルくらいである。

それから、この島ではよほどのことがない限り、駐車違反などで牽引(けんいん)されることはないそうだ。ある時、レストランの駐車場に止めていたはずのレンタカーがなくなっていた(実は、単に止めていた場所とうり二つの場所が同じ駐車場内にあり、それは身体障害者用スペースだったので、てっきりそれで牽引されたのだと思い込んだだけの話だったのだが・・・)。
大騒ぎした揚げ句、レストランスタッフの手を借りて、警察に電話までしたとんでもなく大迷惑な観光客になってしまった。その際、「もう十何年も営業しているけれども、身体障害者用スペースに普通の車が止まっていようがなんだろうが、うちの駐車場から車が牽引されたなんて聞いたことがない! カウアイ島内でも故障車が牽引される以外にはそうめったにあることじゃない!」とスタッフ全員がびっくりしていた。ご迷惑をおかけしてすみません。

一応、ハイウエーと名のつく道も、制限速度は最高でも時速40マイル(65〜70キロ)。島全体がこんなスローペースなので、当然、地元民もゆっくりしゃべりゆっくり生活する。前述のリゾートのバー兼ラウンジでさえも、なんと午後6時で閉まるのだ。何も毎晩飲み会をしようと思ってカウアイ島に来たわけではないが、このご時世に午後6時で閉まるバーが存在することに、カウアイ島民がいかにマイペースかを思い知らされた。

アメリカ本土からカウアイ島に移住して来て、スローライフを楽しんでいる人達も何人か見た。彼らいわく「本土の人々が追い求める、高価な車や家や、高級レストランで毎日毎晩食事をするぜいたくな生活に執着さえしなければ、カウアイ島では楽しくのんびり暮らせるよ。その日暮らしとは言わないけれど、中古車と普通に食べて飲む収入さえあれば、この島では十分だからね」。
確かに、北米本土のストレスフルな生活になじめない人や興味のない人がカウアイ島に来てスローライフを目いっぱい楽しむのにも納得がいく。世界第二位の広さを誇るカナダも、同じく寒いグリーンランドの島ではなく(デンマークと領有権を巡って現在係争中)、トロピカルアイランドを一つくらい購入してくれたらいいのに・・・。
ほかにも、生まれも育ちもカウアイ島の日系人のおじさんは、「カウアイは物価が高いからハワイ島民の間でも敬遠される嫌いがあるけれども、僕は過去25年間スーツを買ったことがないし、長ズボンも持っていないよ。アロハシャツが正装だから、結婚式もそれでOK。必要なものがあればたまに飛行機でホノルルへ買い物に行ったらいいだけの話だ。最近は航空券が高いから頻繁には行けないけどね」。なるほど、カウアイ島民はシンプルでマイペースに暮らしているのか。
それから、島で出会った地元民は見事に全員がめちゃくちゃゆっくり話す。彼らはゆっくりしゃべっているという意識はなく普通にしゃべっているのだろうが、北米本土から来た者にとっては、最初はおちょくられているのかと疑うくらいにスローだ。

ところで、カウアイ島の物価だが、家一軒の値段はGTA(グレータートロントエリア)の平均のそれよりも高いそうだ。スーパーの野菜も全くもって新鮮でないうえに、トロントの2倍はする。ハワイは、ココナツ、トロピカルフルーツやタロイモなど、島で取れる数少ない農作物以外はすべてアメリカ本土からの輸入に依存しているため致し方ないが、田舎なのにこんなに物価が高いとは、という感が否めない。ちなみに、カウアイ島の自給自足率は低く、洪水などの自然災害が生じて島が孤島となった時に、島民全員が確保できる食料はたったの4日分しかないそうだ。?


▲アヒ(まぐろ)を酢でマリネードした料理の上にカイワレが添えられている。カイワレはカウアイ島の至る所で見られる

食事といえば、カウアイ島ではたくさんの新鮮な魚を堪能した。毎食ほぼ魚しか食べなかった。肉はいつでも食べられるから、新鮮な魚は食べられる時に食べよう!というのが、トロントに来てからの私の標語となっているからだ。カウアイ島のレストランでよく見かける魚は、主にアヒ(まぐろ)とマヒマヒ(ドルフィンフィッシュ)。これがまた肉厚で、新鮮なので臭みが一切なくおいしい。当然ながらお刺し身で頂ける。日本のように「魚社会」が浸透しているのが妙にうれしかった。

カウアイ島には、ピリ辛料理はあまりない。全般的に口当たりのいいマイルドな味のものがほとんどなので日本人には好まれると思う。と言いながら、私のカウアイ島一番のお勧めレストランは、ワイルア(Wailua−カウアイ島の東側で、リフエから車で北に約10分くらいの小さな町)にあるMonico’s Taqueriaというメキシカンのお店。http://monicostaqueria.com/
もともとメキシカンが大好きな私は、カウアイ島滞在中、このお店に足しげく通った。フィッシュタコス、フィッシュブリートなど、フィッシュのつくものは冗談抜きですべて絶品。外側はこんがりと、そして内側は刺し身状態で出されるアヒの絶妙な焼き具合が何とも言えない。トルティーヤから、グワカモレから何から、すべて手作りで新鮮な素材を使っているのがよくわかるお店である。スタッフもフレンドリーでどんなに忙しくてもてきぱきとサービスをしてくれる。キッチンのおじさん達まで帰り際には手を振ってくれる、味もサービスも満点のお店だ。


▲マカデミアンナッツ入りアイスクリームケーキ「フラパイ」


▲マイタイ(左)と地ビール。「カウアイ島の夕日を眺めながら食事を!」がうたい文句のレストランにて

カウアイ島のデザートはフラパイ(Hula Pie)が定番。パイと聞いて、最初はアップルパイを想像したが、要はハワイ特産マカデミアンナッツが散りばめられたアイスクリームケーキのこと。これで$9(US)。これだけ大きいのが一人前となると、デザートというよりは、食事の後にがっつりおやつを食べる感覚に近いと思う。だからカウアイ島民は大柄な人が多いのか!
ハワイのお酒といえばマイタイ(Mai-Tai)。ラム酒とパイナップルジュースなどのフルーツジュースが混ざったお酒だ。甘いので女性には受けると思われる。カウアイ島の地ビールもいけた。ココナツ風味の地ビールは、カウアイ島ならではのもの。ビール好きにはたまらない。
後編では、カウアイ島の大自然を主にフィーチャーしたいと思う。〈つづく〉

(2013年2月21日号)



 



 
(c)e-Nikka all rights reserved