【世界の街角から】

ケニアのマサイマラ(パート3)
マサイ族の生活を見学/ロッジ滞在をエンジョイ


〈 トロント・石原功一&千秋 〉

マサイ族

マサイの村を訪れた。アフリカ全土40余の種族の中でも「マサイ族」は大半を占める。案内をしてくれたのは、マサイ族のしるしである赤いショールをまとったジュリアス。スラリとしたなかなかのイケメンだ。ケニアでの主言語は「スワヒリ語」だが、彼は流ちょうな英語も話す。
歓迎の歌で迎えてくれたのはマサイの女性と子供たち。殿方は狩りにでも出かけているのだろうか? 一夫多妻の大家族は共に生活をする。


▲マサイ族の村。女性と子供たちが歓迎の歌で出迎えてくれる


▲マサイ族の家の中。ガイドのジュリアスが持っているのは彼専用のミルクの入れ物

昔から、「牛10頭を所有する男は、一人嫁にすることができる」と言われているそうだ。男の子は、生まれた時に雌牛(めうし)一頭が親からプレゼントされるらしい。それをいかに増やすか! とすると、ここでもやはりカネの力がものを言うということだろうか。

この一族、女性は働き者で何でもこなす。飲み水は5キロ離れた川から、瓶(かめ)を頭に載せて汲んでくる。なんと、家々を建てるのも女性の仕事。牛糞(ふん)で固めた壁は各々個性的な違ったデザインだ。ちなみに、においは全くない。男性は・・・火おこしか、狩りをするだけで、少々怠け者だとか。
中に入るも、もちろん電気はなく真っ暗。石のかまど、牛の皮が敷かれたベッドなどがこぢんまりと納まっている。
主食はミルク。そして、時にヤギの血、牛の血などを飲む。味はそれぞれ全く異なり、ヤギが一番美味しいと言う。


▲ティッシュ代わりに使われる木の葉。とてもソフト、しかも良い香り

トイレはもちろん青空の下で堂々と・・・。ジュリアスが、とてもマサイ族にとって大事なものと言って木の葉を指さす。聞いてみると天然のトイレットペーパーだそうだ。とても柔らかく、いい香りがした。胸元に入れてパフュームにもするそうだ。

いきなり、ジュリアスが跳躍をし出した。テレビなどでよく目にする光景だ。マサイの男にとって、高く跳べるのが勇者の証し。他から敬われるのだという。プロポーズの時にも跳ぶのだろうか?

ロッジ

我々が滞在したロッジ「ムパタ」(日本企業経営)にもマサイの人々が何人か働く。ここでは、水の供給、所有するサファリカーを救急用としてあてがうなど、近隣のマサイ族との共生がはかられている。

ロッジは全23部屋が独立したコテージになっている。スイートルームには屋外のジャグジーがある。
ロッジのデザインテーマは、「風を感じる」。部屋の窓は完全密閉式でないので、就寝中も時々風を感じることができた。解放的な大きな窓はサバンナに面しており、ハイラックスなどの小動物も、時折、顔を出す。


▲ムパタのロッジのスイートルーム外観。それぞれ独立したコテージになっている


▲部屋の中から風を感じて・・・。ムパタ・スイートルーム


▲ロッジの岩場にいるハイラックス。たくさんいる

ある日のこと。サファリから帰って来てテラスに出ると、何だか様子が変だ。足元にハンガーが転がり、乾かしていたはずのTシャツがない・・・! 更にタートルネックのセーターが・・・!
これは、ヒヒの仕業らしい。彼らは固く閉ざされた部屋のドアでさえ、器用に開けて侵入するということだ。
ところで、なくなったTシャツは丘の下の方に捨てられていた。ヒヒ様、デザインが気に入らなかったのか、はたまたサイズが合わなかったのか――お気に召さなかったよう。


▲ロッジの敷地内を我が物顔で歩き回るヒヒ


▲ヒヒの襲撃から免れたフリース。ハイネックは外すのが難しいらしい

標高1,800メートルに建つこのロッジでは、電気は自家発電である。朝5時〜10時、夕方6時〜10時30分の稼働で消灯となる。
昼夜の寒暖の差がかなりあり、就寝時の寒さが気になるところだが、夕食から戻ってくると、布団の中には湯たんぽが! これはかなりうれしく、暖かかった。日系経営のロッジならではのおもてなしには恐れ入った。


▲夜には欠かせない湯たんぽ。部屋のキーホルダーになっている棒はマサイ男子護身用のこん棒ルング

布団に潜り込み目を閉じると、闇(やみ)の中に動物の声だけが響く。近くでは、ハイラックス、ヒヒ、遠くでは、もしかしたらリカオンか――。世間から閉ざされた感に心地よい酔いのようなものを感じる。

通信環境もあまりよくない。部屋には電話もない。朝は、希望した時間に係りの人がドアをたたいて起こしてくれるモーニングノックのサービス。
これはいい機会だ。せっかくの休暇、この際、一切誰とも連絡を取らないままで、しばし日常を忘れてやろうと思う。

旅の五日目、日頃の仕事から解放された気のゆるみと、たまった疲れが一気に出たのか、発熱して寝込んでしまった。 ロッジの近くには専属の看護師が常に待機している。的確な診察の後、薬を処方してもらった。ケニアでは看護師さんも薬の処方ができるらしい。
更にうれしかったことに、日本人スタッフの心配りで、おかゆと味噌汁を用意してくれた。美味しかったこと!
ちなみに医療費は、2回の往診と薬代込みでUS$15程度と驚きの安さだった。


▲警護のレンジャー(左)と共にマラ川へのウオーキングツアーに出かける石原功一・千秋夫妻

ムパタが建っている丘から敷地を通ってマラ川までの往復5キロのウオーキングツアーに参加した。ムパタの敷地内といえども、そこはマサイマラ。野生動物たちが行き交っている。
案内人のマサイ族のジュリアスのほかに、用心のためライフル片手にレンジャーが同行。マラ川までの道中に植物や動物の説明を受けながら移動した。憶病者のディクディクやおなじみのインパラの群れと遭遇。


▲マラ川で遊ぶカバ。口を開けるとかなりの迫力

マラ川には、2家族のカバたちがのんびりとくつろいでいた。カバは、テリトリー意識がとても強いらしく別の家族のカバが近寄ってくると一斉に雄叫(おたけ)びのような鳴き声で威嚇していた。
行きは、下りだったが帰りは急なのぼり。ロッジにたどりついたころは、へとへとだった。部屋のジャグジーにつかりながらのビールとワインは格別だった。

食といえば、ロッジのレストランでも伝統的な料理を出してくれた。東アフリカの代表的な主食である「ウガリ」は、とうもろこしや小麦から作る。かなり腹にたまる感じで、長く空腹を感じない。
ポピュラーな青野菜は、各家庭で栽培できるという「スクマウィキ=ケール」。日本で青汁の原料として使われているもので、ほうれん草のような触感。そして、ビーフやチキンなどのシチュー。日本人の味覚にもなじみやすい味付けだ。


▲ケニアの郷土色盛り合わせ料理。左からウガリ、スクマウィキ、チャパティー、トマトサラダ、真ん中はシチュー仕立て

2012年暮れから2013年正月にかけてマサイマラでの7泊8日の滞在は、日常から解放され、自然に身をまかせ、動物との出会いはもちろんのこと、現地の人々のぬくもりをも十分に感じることができた。真っ白な歯を見せて屈託なく笑う笑顔が忘れられない旅となった。〈おわり〉

【動画】石原功一撮影「ライオン家族の朝食」はこちら
    http://flickr.com/gp/koichiishihara/d8n0oN

(2013年3月28日号)



 



 
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