【世界の街角から】

ペルー紀行(その1)
新旧が混在する首都、リマ


〈 いろもとのりこ・記 〉

今年3月初め、今回の旅行の最終目的地、世界遺産のマチュピチュを目指してペルーへと向かった。もともとは夫の長年の憧れの地であって、私自身はそれほど興味はなかったが、血圧の高い彼の万が一を考えて付き添いとして行くことになった。 まず降り立ったのは、トロントからエアカナダ直行便で8時間の首都リマへ。南半球のペルーは夏にあたり、日中は26〜28℃と暑い。雪景色からいっぺんに太陽がまぶしい南米の街に。ただ時差がないのは助かる。地図を見てもトロントとペルーはほぼ縦に一直線になっている。通貨はソル(Sol 複数はソレス Soles)で、1カナダドル=約2ソレス。ホテルや大きなレストランはUSドルも受け付けている。この紀行文中の$マークはすべてカナダドルとする。

■歴史建造物が建ち並ぶセントロ(旧市街)
スペイン人フランシスコ・ピサロによって築かれたリマの中心街、セントロ(Centro)はほとんどが16世紀に建てられた建造物が多い。スペイン系の街造りの特色と同様にアルマス広場を中心に周囲に歴史的建造物やコロニアルスタイルの建物が建ち並んでいる。


▲リマの旧市街セントロ、アルマス広場のカテドラル


▲民族衣装がかわいい地元の女性(アルマス広場にて)


▲料理博物館

まず、ど〜んと目に入るのが、カトリック教会のカテドラル。ペルー最古のカテドラルだけあって荘厳な大聖堂である。そして衛兵が立っているペルー政庁、すぐ近くにサン・フランシスコ教会修道院、リマ大司教宮殿博物館、ラ・ウニオン通りに面したラ・メルセー教会などいずれも圧倒されるような建物ばかり。
ちょっと変わった建物にペルー政庁と同じ通りで広場のすぐそばに2011年にオープンした「ペルー料理館」というのがある。ペルーのインカ帝国時代の食物、ペルーで採れる産物、ペルーの代表的な料理などを写真やレプリカ、調理器具などわかりやすく展示している。入場料は3ソレス(約$1.50)。ここはあまり混んでいないので、ほっと休憩するにも適している。月曜休館。

■新市街、ミラフローレス
人口800万人に近いリマは近年、急速に発展しているようだ。その代表的なのが旧市街の南に位置する新市街、ミラフローレス(Miraflores)である。海沿いにハイウエーが通り、高い断崖の上には新しい高層ビルが並ぶ。比較的裕福な人々が住み、治安は旧市街よりよい、とされていてホテルも多い。私たちもこの地区のホテルに泊まった。
この地区で観光客がまず訪れるのが「ラルコ・マル」(Larco Mar)ショッピングセンター。海岸沿いに下りて行く不思議な造りで、ブランド・ブティック、見晴らしよいレストラン、カフェが並んでいる。値段は観光地値段で一般の市民が利用するところよりかなり高値である。


▲リマの新市街ミラフローレスの「ラルコ・マル」ショッピングセンター


▲「恋人たちの公園」のあつ〜い彫刻

このショッピングセンターから海岸沿いの散歩道を北へ歩いて7〜8分くらいのところに海岸公園「恋人たちの公園」がある。真ん中に度肝を抜かれるような大きな像(恋人同士が抱き合ってキスをしている)があり、天真爛漫(てんしんらんまん)さを感じて笑ってしまう。
現在、この地域は海岸沿い一体の緑化運動をすすめていて大規模な工事計画が実行されている。

ワカ・プクヤーナ遺跡とレストラン
ミラフローレスの街の中にワカ・プクヤーナ(Huaca Pucllana)という紀元後から600年頃に栄えたリマ文化の遺跡がある。見学ができ、土器やミイラなども見られる。ここでユニークなのは、遺跡の中にレストランがあって、夜はライトアップされた幻想的な雰囲気の中で食事が楽しめることだ。日本の人気TV番組「世界ふしぎ発見」でも紹介されたせいか、日本人客が多い。
丁寧なサービス、ペルーの代表的料理「セビッチェ」(Ceviche)や魚料理がおいしい。セビッチェは魚介類のライム汁漬けのようなもので、材料は店によっていろいろ異なる。セビッチェ専門の店では15種以上あるとか。このセビッチェのおかげでペルー滞在中、日本食が全く恋しいとは思わなかった。必ずレッド・オニオンが添えられる。
www.resthuacapucllana.com


▲ワカ・プクヤーナ遺跡の中にあるレストラン


▲白身魚のセビッチェ

レストラン BRUJAS DE CACHICHE
ミラフローレスの中心にあり、泊まったホテルから歩いて10分ほど。円形のロータリーに面した大きな一軒家で、中もかなり広い。ペルーの伝統料理が売りで、ランチはビュッフェ、夜はアラカルトメニューになっている。お勧めはセビッチェ4種が別々の器に盛られて供される「Tabla de Ceviches」(2人分、47ソレス=約$23)、白身魚(Mero)、エビとマンゴ、イカ・タコ・エビ、マッシュルームの4種である。魚介類の炊き込みごはん「Arroz con Mariscos」(40ソレス=約$20)もパエリア風でおいしかった。こちらも一皿でたっぷり2人分の量。
www.brujasdecachiche.com.pe


▲BRUJAS DE CACHICHE レストランの外観


▲「Tabla de Ceviches」(4種のセビッチェ)

ペルーではめずらしく、つき出しにオリーブやセロリ、赤ピーマンのサラダ風が出され、ホームメイドのソースがおいしい。値段はオードブルが$10前後、メインは$20前後と味、雰囲気とサービスの点から見るとリーズナブルでおすすめしたいレストランだ。
ペルーはじゃがいもの原産地として有名。ジャガイモは数百種類もあり、ポテト博物館があるくらいだ。実際、いろいろな種類のじゃがいものを食べた。なかにはさつまいもに似た食感のものもある。そのほかコーン(とうもろこし)の種類も多く、白くて大きな粒、黒いコーンなどもある。カボチャや豆類の野菜のスープはどこでもおいしい。穀物類の種類も多く、米はよく使われている。肉ではアルパカやクエ(食用ねずみ)がユニークだが、アルパカは牛に似ていておいしいとは思わなかった。クエは挑戦する勇気はなかった。鶏肉は無難な食材で、グリル料理が多い。
名前が通ったレストランはほぼトロントと変わらない値段だが、地元のサラリーマンが利用するランチ定食屋では、飲み物、サラダ風オードブル、メイン料理、デザートのフルコースで10ソレス(約$5)と、日本の500円ワンコイン定食並みに安くておいしかった。

■アートな雰囲気ただようバランコ地区
ミラフローレスのすぐ南に位置するバランコ(Barranco)地区はコロニアル風の建物が並び、アーティストが多く住む地域といわれ、そのせいかどことなくヨーロッパの香りがするおしゃれな地域になっている。市庁舎、教会、図書館などに囲まれた広場が中心になっていて、観光局もあり、りっぱな地域案内のパンフレットをもらえる。最近、観光に力を入れているようで対応も親切だ。


▲リマの南、バランコ地区の中心の広場。左の図書館内に観光局がある


▲バランコの散歩道。橋の下に海岸に通じる道が・・・


▲バランコ地区。海岸へ下りて行く道の両側にはレストランが連なる

広場から海岸に向かってレストランやカフェが並び、海を眺めながら食事のできるところもある。また広場の近辺には電気博物館やアートショップ、レストランシアターなどがある。セントロとは全くちがったエリアで、私は個人的にはこの地域がリマで一番好きだった。


▲バランコの海岸。遠くにミラフローレス地区のビルが見える


▲ミラフローレスやバランコの海岸には至るところに津波避難ルートのサインが出ている

このほかにもミラフローレス地区の北隣りにサン・イシンドロ地区というのがあり、高級住宅地、高級ホテル、カジノ、高級ブティックがあるそうだが、ここには訪れなかった。

■交通事情と治安
リマではタクシーにメーターがついていない。したがって、運転手の言い値になるわけである。だから乗る時はまず、値段の交渉をする。地元の人も皆そうしている。リマの空港からミラフローレスまでは16キロだが、ハイウエーがないので早くて30分、道路が込み合っていると1時間近くかかる。それでもグリーンタクシー(運転手が緑色のチョッキを着ている)は50ソレス(約$25)と決まっているので、このタクシーが一番安心できる。またはホテルに常駐するタクシーも信用できるが、値段の交渉は必要である。
とにかく他の中南米とおなじく運転はすさまじく荒っぽい。よくあれで事故が起きないものだと感心するほど。道路にレーン(車線)はあっても無視。割り込みするのは当たり前で、クラクションもよく鳴らす。

市営高速バス「メトロポリターノ」
便利で早くて安い専用レーンのある市営高速バス「メトロポリターノ」。
リマを南北に走る専用レーンのある市営バス「メトロポリターノ」は2011年に開通して以来、便利で安くて早い市民の交通手段になっている。1人2ソレス($1)でセントロ、イシンドロ、ミラフローレス、バランコを結んでいる。市内移動にはもっぱらこれを利用した。最初はチケット(カード式)を購入するのにとまどうが、係り員が必ずいて親切に教えてくれるし、モタモタしていると全部やってくれる。


▲リマ市内を南北に走る高速バス「メトロポリターノ」

観光ポリス
リマ市内は20年前はテロの心配や、強盗など治安は大変悪く、地元の人も夜歩くのは危険なくらいだったという。しかし、現在はフジモリ元大統領のテロ対策や経済発展政策とともに治安はかなりよくなってきたという。観光客も大きな収入源とされ、街のあちこちに「観光ポリス」が立っていて目を光らせている。そのせいか、リマに4泊したが、一度も危険を感じたことはなかった。むしろ、道を尋ねると親切に教えてくれる人が多かった。とはいえ、安心は禁物。世界中どこにでもスキをねらっている人はいるものだ。

次回は、インカ帝国の元首都で、現在はマチュピチュへの拠点になっているクスコを紹介しよう。
(つづく)

(2013年4月4日号)





 
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