【世界の街角から】

ペルー紀行(その3)
マチュピチュへの鉄道とマチュピチュ村


〈 いろもとのりこ・記 〉

クスコからマチュピチュ村までの距離は約110キロで、汽車を利用するのが一般的になっている。汽車には、オリエント急行風の高級な「ハイラム・ビンガム」(往復約$600)や一番人気の高い「ビスタドーム」(往復約$180)などがある。私たちは車両の上部がガラス張りになっていて景色がよく見えるビスタドーム(Vistadome)を選んだ。もちろん値段も決め手になったのだが・・・。〔注:文中の$マークはすべてカナダドルです〕
通常、汽車はクスコの市中から車で20分くらいのポロイ(Poroy)駅から出るのだが、2月に雨が続いて鉄道線路に支障が出たため、クスコのワンチャック駅から途中までバスで行くことになった。そのため全行程は汽車より1時間ほど多くかかった。こんなことはよくあることだそうだ。しかし、けがの功名というか、バスから村々の農村風景を見ながら行けたのでよかった。
いくつかの山を越え、バスに揺られること2時間あまり、オリャンタイタンボ(Ollantaytambo)という汽車の駅に到着。全体の約半分を来たことになる。そこは両側が断崖絶壁の岩山で、ふもとに濁流のウルバンバ川が流れている。バスから汽車に乗り換え。その川に沿って汽車はマチュピチュへ下って行く。


▲マチュピチュ遺跡の下を流れるウルバンバ川に沿って汽車は走る。周囲は標高4,000〜6,000メートル級のアンデス山脈


▲クスコとマチュピチュを結ぶペルーレイル鉄道の車両

■サービス満点「ビスタドーム号」
全席指定の汽車「ビスタドーム号」は客席すべてにテーブルが設置され、飲み物や軽いスナックがサービスされる。車窓からの景色は、段々畑や昔のインカ道が見え隠れする。また、切り立った岩山のところどころに細い滝が流れていて乗客の興味をそそる。いよいよマチュピチュ近しと思わせる。


▲汽車の中でサーブされるスナック

ビスタドーム号の車内では地元の民話を元にした鬼の面をかぶったカラフルな装束の男性が通路を所せましと踊り、時にはお客を連れ出して一緒に踊る。さらに先ほどスナックを配って回った男女の乗務員がこんどは ファッションモデルに早変わり。にわかファッションショーである。とっかえひっかえペルー特産の衣装を披露したあとは、「いかがですか?」の売り込みに。これらのショーはマチュピチュからクスコへの帰途に行うことが多い。


▲「ビスタドーム」では乗務員がモデルに変身してファッションショーが行われる


▲民族舞踊の余興も・・・

■日本の温泉町を思わせるマチュピチュ村
2時間ほど汽車に揺られてやっとマチュピチュ村の駅へ到着。標高3,400メートルのクスコから2,400メートルのマチュピチュ駅に降りると、気のせいか呼吸が楽になる。駅には宿泊するホテルの従業員が迎えに来てくれていた。まずはウルバンバ川の支流、アグアス・カリエンテス川の橋を渡り、すぐ前にある観光案内所で翌日のマチュピチュ入山許可証を購入する。〔注=アグアス・カリエンテス(Aguas Calientes)は「温泉」の意味〕


▲マチュピチュ村のウルバンバ川支流、アグアス・カリエンテス川。橋の右側には汽車の駅、左側にはホテルやレストラン、お土産店などがある

入山許可証なるものがまためんどうで、シーズンのときは数カ月前に予約しないと手に入らないとか。というのも入山者の数は1日2,500人と限定されているからである。インターネットで購入できるとあったので、トロントから何度か試してみたが「今はVISAが使えません」とか、宿泊するホテルにたのもうとしたらトロントにはない特定の金融機関を通して料金を送ってくれ、と言うし・・・。結局、シーズンではないことと、翌日の入山ということで予約なしに直接、マチュピチュに到着してから購入することにした。
観光案内所に行くと、入山許可証はまだ十分余裕があるようで簡単に手に入った。大人一人128ソレス(約$64)とけっこうな値段である。世界遺産を維持するための経費もかかるし、重要な収入源だから仕方ないのだろう。ここではUSドルは受け付けず、ソレスのみ。
マチュピチュ村はどことなく日本の温泉町のようだ。お土産屋がひしめくメイン通り(パチャクテク通り、車は通れない)の坂道を5〜6分上って行くと予約していたホテル「La Cabana」(ラ・カバーニャ)に到着。コロニアル風の中庭のある小さなホテルである。チェックインのとき、朝食付きで、午前5時からサービスすると言われた。さすが山のホテルである。


▲まるで日本の温泉街のような細い上り坂の両側にお土産店などが並んでいる。3月はシーズンオフでちょっと人通りが少なかったが、7月〜9月のシーズンになると観光客で混雑するという

■険しい山々に囲まれた露天温泉
到着した日は、遺跡には行かないので、のんびり温泉に入ることにした。ホテルから歩いて5分ほどで入り口に到着。タオルは入り口付近のお土産屋で1枚3ソレス($1.50)で貸してくれる。水着は持参してきたが、持っていない人には水着の貸し出しもしている。温泉の入浴料金は1人10ソレス(約$5)。


▲ホテルからメイン通りを歩いて上がった所にあるマチュピチュ温泉

入り口からさらに渓流沿いに坂道を5分ほど上って温泉にたどりつく。大小7つくらいのプールのような温泉風呂が並び、それぞれ湯加減がちがっていた。日本人にはぬるいと感じる湯が多いが、やはり一番人気があるのはその中でも熱めの温泉プール。険しい山々に囲まれての露天温泉は格別である。日本とは少々雰囲気は違うものの何となく疲れが取れるような気がしてくる。関節炎に効果があるという話も聞いた。成分はわからないが、なめてみると少し塩っぱかった。

■土砂降りから一転、青空に・・・
前の晩から雨が降り出し、いやな予感がよぎる。翌3月5日の朝、5時ごろ目が覚めると外は土砂降りの音。「一生に一度の機会なのに、やっぱし今日はダメか」とあきらめていたら、6時ごろ雨がやんで雲が切れ始めた。ホテルの朝食を済ませ、チェックアウトして急いでマチュピチュ遺跡行きのバス停へ。朝5時半から運行しているというバス停にはもう大勢の人が並び、バスは次から次へと出発していく。空は青空に変わり、こちらの気分も明るくなった。


▲マチュピチュ村から遺跡の入り口まで往復しているバス


▲日光のいろは坂よりもっときびしい急斜面をバスは13本のジグザグ坂道「ハイラム・ビンガム・ロード」(写真左側)を上って行く

日光のいろは坂よりもっとすごい傾斜の坂道、ハイラム・ビンガム・ロードを13回曲がりくねって約25分で遺跡の入り口に到着した。午前7時前だった。切り立った峰々にかかっていた雲も切れて、太陽の光がまぶしい。もう何日間も雨続きだったというから、まさに奇跡のような好天だった。


▲バス停で見かけた地元の女性たち。背中からかけているショールは日本の赤ちゃんを背負う「しょいこ」と同じで子供を背負っている

次号はペルー紀行の最終記、マチュピチュ遺跡の中をたっぷり案内しよう。(つづく)

(2013年4月18日号)



 



 
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