【食べある記・トロント編】

一品ごとにシェアして食べられるサービスが好評
独創的フランス料理店「ICI」(イッシ)


トロント大学近辺にあるハーボード通り(Harbord St.)にはおしゃれで味が評判のフランス料理やイタリア料理の店が増えてきて、ちょっとしたグルメ街になっている。中でも2年半ほど前にオープンした「ICI」(イッシ=フランス語で「ここ」の意味)は、週末は1カ月ほど前から予約でいっぱいというほどの人気ぶりである。
「Nouveau Classique」(ヌーボー・クラシック)をうたっているように、全くコンテンポラリーというわけではなく、フランス料理の基本の味を守りながら、独創あふれる料理と盛り付けを供する。この店ならではの味わいだろう。オーナーシェフのジャン・ピエール・シャレさんはフランスでも最もグルメな都市として知られるリヨンの出身。トロントでは有名フランス料理店「Le Select Bistro」や「Auberge du Pommier」で腕をふるっていて、料理業界では知る人ぞ知るのシェフである。
ハーボード通りとマニング・アベニュのコーナーにある ICI は、普通の住宅を改装した感じ。店内は24席とこぢんまりしたカジュアル風。とても有名シェフの店という気どったところはない。奥がオープンキッチンになっていて、シェフはお客の様子を見ながら料理を作るタイミングを計れるようになっているようだ。


▲ハーボード通りとマニングのコーナーにあるレストラン「ICI」(イッシ)


▲全部で24席のこぢんまりした店内。オープンキッチンではオーナーシェフ、ジャン・ピエール・シャレさんが料理をしながら客席に目を注いでいる

この店でユニークなのはメニューの冒頭に「PARTAGER」(フランス語で「分ける」の意味)と書かれていること。最初はどういうことだろう、と思ってしまう。それは料理の一つひとつをお客同士で分け合うということ。1品ごとにお客の人数分の小皿が配られ、料理は一度にどんと供されるのではなく、1皿ごとにサービスされる。ということもあって、予約は1組4人がマキシマムである。1皿ごとに皿を取り替える手間も大変だろうが、お客はいろいろな料理を味わえる楽しみがある。特に日本人にはうれしい。
まずは、この店自慢のタルタルステーキを・・・。生牛肉のハンバーグだが、普通のタルタルとは全く違うスタイルだ。どかんと生ハンバーグを載せるのではなく、薬味類を加えて小ぶりにまとめていて食べやすい($24)。


▲ICI 風タルタルステーキ、ポテト添え。ほかに2種のタルタルステーキがある

メイン料理はいずれも独創的で付け合わせも手がこんでいて、パッと見た目には材料が想像できないものもある。それだけ次に何が出てくるか楽しみでもある。きわめつきは「ブイヤーベース」。小鍋か深い皿に魚介類がそのままの形で入っているのがふつうだが、魚介類はすでにソースになっていて、白身魚と付け合せのみ(大$32、小$22)。
タルタルステーキ以外はすべて分量が大と小に分けられているのもお客に配慮した心遣いだろう。鴨(かも)料理、イカ、ロブスター,エスカルゴ、フォアグラ、スカロップ、子牛、牛肉、ラムなどの料理があり、いずれもクリエーティブさにあふれている(大$20〜$36、小$14〜$24)。


▲ICI スタイルのブイヤーベース


▲イカとアボカドのフライ、グリーンソース添え


▲スカロップの梨、ロブスター添え


▲ラムのカネロニ添え

デザートで一番人気はスフレ(グランマニエとチョコレートソースの2種)($16)。ふわっと軽いのでお腹がいっぱいでも入ってしまう。他にレモンタルト、クレーム・ブリューレなど。


▲スフレ、グランマニエソース

ふつうのコース料理とはちがうので、必ずしも人数分、前菜やメイン料理をとる必要はない。ウエートレスのにこやかなサービスもたいへん気持ちよく、料理の味の良さと共にいい気分にさせてくれる。

【ICI Bistro】
■場所:538 Manning Ave.(Bathurst の西、Harbord St. の角)
■Tel:416-688-2000 または 416-536-0079
■オープン時間:水・木・金・土曜の午後5時30分〜。日・月・火曜休み
www.jpco.ca
※オーナーのジャン・ピエール・シャレさんは ICI とは別にベーカリー「Le Matin」(Queen St. E.×Jones Ave. www.lematinbakery.com)を経営している。

〈 リポート・いろもとのりこ 〉

(2013年5月2日号)



 



 
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