【列車に乗って】

大自然カナダを満喫
大陸横断4,500キロVIA鉄道の旅



▲参加したブロガー・チームの集合写真 (Photo : Rishad Daroowala, Canadian Tourism Commission)

カナダ観光局とVIA鉄道が世界各地から28名のブロガー/フォトグラファーを募り、カナダの魅力をソーシャル・ネットワークを使って伝える旅の企画「Journey to Tbex: Cross-Canada Blogger Train」。
私が参加したのは、VIA鉄道「カナディアン号」に乗車して4,500キロを走破する「ルート1」でした。5月18日(土)にトロントからエアカナダでバンクーバーに向かい3日間を過ごした後の21日(火)、パシフィック・セントラル駅からVIA鉄道に乗り込み、先週号でお伝えした「TBEX Toronto」が終了する6月2日(日)までの2週間、盛りだくさんのスケジュールで鉄道の旅を体験しました。
この企画、全体としては下記の3つのルートが用意されていました。

ルート1:バンクーバー→ジャスパー→ウイニペグ→トロント
ルート2:ハリファックス→モンクトン→モントリオール
ルート3:ガンダー(ニューファンドランド・ラブラドール州)→プリンスエドワード島(P.E.I.)


▲ルートマップ

私が参加した「ルート1」のチームは総勢13名。カナダ、アメリカ、ドイツ、オーストラリア、イギリス、メキシコ、韓国、インド、中国、日本の10カ国からの選抜チームで、期間中にそれぞれのブログ、YouTube、Facebook、ツイッター、インスタグラムなどを通して現地からリポートを行いました。


▲バンクーバーの PACIFIC CENTRAL 駅に停車中の「カナディアン号」

4,500キロは「大陸横断」にふさわしい距離

一口に4,500キロと言いますが、ブリティッシュコロンビア州、アルバータ州、サスカチワン州、マニトバ州そしてオンタリオ州の5つの州を横断し、西部標準時間、山岳時間、東部標準時間と3つの時間帯をまたにかけるルートは、まさにカナダの風景を見尽くすことができる壮大なものです。
これを実現したのが、1851年〜55年に行われた大陸の東西を結ぶ鉄道建設。わずか5年間でルートが完成したというのも驚きですが、完成してから150年以上経過した今も当時のルートを使っている歴史の重みを感じます。

大陸横断列車は、1955年に当時のカナディアン・ナショナル鉄道(CN)が「スーパー・コンチネンタル号」を、またカナダ太平洋鉄道(CPR)が「カナディアン号」を走らせていましたが、列車での旅が衰退する中で1987年にCNとCPRの旅客部門を引き継いだVIA鉄道(カナダ国営企業)が両列車を統合し、現在は「カナディアン号」として運行を続けています。
車両は1950年代にアメリカの「Budd Company」で製造された、伝統のプルマン客車と呼ばれるもの。ひときわ目立つ外観のステンレス製の流線型車両は、鉄道での大陸横断旅行が全盛期であった当時最も流行したデザインです。
内装は特別な業者に依頼して改造した豪華な仕様で、以来50年以上もの間、大切にメンテナンスされながら古き良き時代を今に伝える希少な現役レトロカー。「走るホテル」と呼ばれた設備とサービスの伝統は、今も息づいています。
バンクーバーから、途中どこにも降りずにまっすぐトロントまで向かうと、車中4泊5日の旅、バンクーバーを午後8時半に出発し、5日後の午前9時半にトロントに到着します。
(シーズンは週3便、トロント発もある。詳細はこちらのブログ参照:
http://blog.makotophotography.ca/2013/05/journy-to-tbex-viavia.html


私たちは、出発地点のバンクーバーで3泊、途中、ジャスパー2泊、ウイニペグでも2泊しましたので、実際にバンクーバーから一直線にトロントに向かったらどんな感じかはわかりませんが、それでも寝台車で朝を迎え、窓の外に広がる大草原を見つめていると「カナダはやっぱり広い」という感じがひしひしと伝わってきます。
車窓から見える景色で言うと、バンクーバーからジャスパーまでのロッキー山脈に向かう圧巻の「山越えルート」(後述)、ジャスパーからサスカトゥーン、ウイニペグ、サドベリーを経由してトロントに向かう「草原ルート」に分かれます。
ジャスパーまでの山越えルートは、寝ている時以外はほとんど食堂車か展望車で美しいカナディアン・ロッキーの景色に釘付け。一方、ジャスパーから先のルートではラウンジで雑誌を読んだり、個室でパソコンを開いて仕事をしたり、夜はまたまたラウンジで居合わせた乗客とワインを飲みながら過ごしたりと、ゆったりとした「大陸横断鉄道の旅」の醍醐味を満喫します。
特にウイニペグを出てからは携帯の電波が届かないエリアをただひたすら走るため、普段はどこまでも追いかけてくる電話やEメールからしばし解放されて、まるで「離れ小島」でのんびり休暇を過ごしているような気分になりました。


▲列車最後尾のドームカーでは、展望座席がイチバン人気

乗客は圧倒的に多いシニア層

乗車中は、一日3回ある食堂車でのお食事と列車最後尾のパークカーのラウンジで過ごす時間も多く、いろいろな人との会話が弾みました。
例えば英国ロンドンから来たというシニアのカップルは、ロンドン〜シドニー(オーストラリア)まで50日間かけてクルーズ船で到着。ニュージーランドを飛行機で往復して観光の後、さらに太平洋をバンクーバーまでクルーズ。そこからVIA鉄道に乗り、一路トロントへ。トロントで数日過ごした後、VIAでニューヨークへ行き数日の観光の後、さらにクルーズ船でロンドンへ帰るというルートだと話してくれました。

「さすがに長かった」というロンドン〜シドニー間のクルーズの旅。「飛行機の方が速いのでは?」との問いに「飛行機は嫌い」とキッパリ。長時間狭い座席に座り、セキュリティー・チェックなどストレスがたまることが嫌なのだそうです。
同じラウンジで出会った夫婦はトロントに住んでいて、奥様の故郷香港に旅行。途中、韓国に寄り、香港からクルーズでバンクーバーへ。そこからVIA鉄道に乗り、ジャスパーで2泊した後、トロントに向かうルートを選択したそうです。
食堂車で出会ったオーストラリアからの旅行者は、やはりクルーズ船でバンクーバーまで来て、そこからVIA鉄道に乗ってジャスパーまで。そこからレイクルイーズ、バンフを回ってバンクーバーまで戻り、本国に帰るというルートです。

皆さんお話を聞いていると、旅好きの人ばかりで経験は豊富。たくさん楽しい話を聞かせていただきましたが、どなたもクルーズ+大陸横断鉄道という組み合わせを選んでいるのに、ビックリしました。まさに「一生に一度の旅」ですね。
私が乗車したカナディアン号は「Sleeper Touring Class=寝台車ツアークラス」と座席タイプの「Economy =エコノミー・クラス」に分かれていました。特に寝台車ツアークラスはラウンジや食堂車を無料で利用できる特典があり、値段や区間によって使い分けているようでした。

気になるお値段をウェブサイトで調べてみると、バース型上下寝台は上段が大人1人$1,541.32、下段が若干高く$1,813.65。2人用の個室はバンクーバーからトロントまで1人で占有すると$3,487.18、2人で使うと1人$2,324.41で合計$4,648.82。エコノミークラスになるとぐっと値段が下がって、大人1人$578.56となります(6月11日調べ)。


▲気が合うと話も弾むラウンジでのひととき

長距離旅行の楽しみ方を学ぶ

さて、道中に出会ったこうした人たちから学んだ「長距離旅行の楽しみ方」を・・・。ひとことで言うと、この手の長距離鉄道旅行は「出会い」を楽しまなければ損とのこと。いやいや、皆さんおしゃべり上手にはビックリしました。個室に4,000ドルも払ってそこにあまりいない、というのも何ですが、実際、窓の外を眺めていても飽きてしまうのが現実。誰かと話したいと思うこともありますよね。
そんな時、相席となる食堂車や列車最後尾のラウンジはソーシャルな場に変身します。特に列車最後尾のパークカーと呼ばれるラウンジ車両にはガラス窓が大きく取られた広いスペースがあり、夜になるとお酒のサービスもあります。

食堂車で、ラウンジで出会う人と交わす挨拶は、まず自分の名前と出身地から。「東京から来たの? 私日本に行ったことあるわ」というような具合で、自然と会話が始まります。確かに英語が苦手な我々日本人は、こういった見ず知らずの外国人(まあ、カナダでは私自身が外国人なのですが・・・)と会話するのはなかなか骨が折れることでもあります。
とは言え、食堂車ではせいぜい話しても10分くらい。ラウンジは、そこにいる人たちとウエルカムな感じになればお酒も入って1時間2時間とよもやま話に花が咲きますが、無理に話すこともありません。
無料のコーヒーやジュースをラウンジに取りに行ったついでに、その辺にいる人にちょっと話しかける程度でもずいぶん気持ちは変わるものです。

また、ジャスパーから先のルートでは、ラウンジや展望車両でワインテイスティングがあったり、同乗しているミュージシャンによるミニコンサートがあったりするので、ちょっとしたプログラムに参加するのもいいでしょう。
結局、私はロンドンから来た夫婦、トロント在住の夫婦、オーストラリアからの夫婦と意気投合してしまい、ウイニペグまでの道中はラウンジに入り浸っていました。「こんな旅の仕方もあるものなのだな」と、こちらも私にとっては「一生に一度の旅」の思い出となりました。


▲カナディアンロッキーの名峰ロブソン山に向かって進む「カナディアン号」

「一生に一度は乗るべし」ジャスパールート

旅の思い出と言えば、忘れられないのがバンクーバーからジャスパーまでの車窓風景。本当に美しかったです。
徒歩で行くと、先頭の機関車から最後尾のパークカーまで約10分はかかる20両編成の「カナディアン号」(車両の数は時により変更される)。ジャスパーの山越えルートは機関車が1台増えて3台で全体をけん引します。終始ゆったりとしたスピードで、最初は川沿いを、さらには渓谷を抜けて森の中を一路ロッキー山脈に向かい、最後はロブソン山を正面に見えるルートに入ります。

この直前には、VIA鉄道からしか見ることができない珍しい「ピラミッド滝」を通過。車内アナウンスの後、列車はゆっくりと滝が見られるようにさらに低速運転します。ロブソン山が見える頃になると「This is Canadian Rocky Mountains!」というアナウンスと共に、このルートで見られる景色のハイライトが目の前に出現。車窓から見る美しいロッキー山脈の姿は、本当に「一生に一度は見るべきカナダの風景」! あまりの素晴らしさに、夢中でシャッターを押したことを今でも鮮明に覚えています。

時刻表によれば、トロント発の場合、ジャスパー到着は午後2時半。川沿いの渓谷風景が美しいクリアウォーターを通過するのが午後8時頃ですから、進行方向を正面から右手にロブソン山が見えるはずです。
バンクーバーからは、クリアウォーターが午前9時前で、ジャスパー到着が午後4時になり、こちらもロブソン山を正面から左手に見るようにしてVIA鉄道が走って行きます。
大陸横断を満喫したいのなら、トロントまでVIA鉄道で。カナディアン・ロッキー観光を重視するなら、ジャスパーでレンタカーに切り替え、レイクルイーズ、バンフ、オカナガンとドライブするルートも人気だと聞きます。


▲ウイニペグで、来年完成予定の「カナダ人権博物館」に花火が上がった

ウイニペグから北極熊を見る鉄道の旅も

ジャスパーとウイニペグにそれぞれ宿泊したのですが、ジャスパーではラフティングなどにチャレンジし、小熊や羊(ひつじ)といった野生動物にも遭遇して、大自然を満喫。ウイニペグでは、チャーチル行きの「ホッキョクグマ観光がいいらしい」という情報を入手しました。
10月〜11月上旬にかけて見られるホッキョクグマ。チャーチルではツンドラバギーという専用の乗り物に乗って、観察ができるのだそうです。チャーチルへのアクセスのことを聞くと「行きは絶対VIAがおすすめ」とのこと。ウイニペグ発の列車は毎週火曜と日曜発。正午にウイニペグを出て、2日後の午前9時に到着します。さらに現地の人に聞くと、1月・2月にはチャーチルでも奇麗なオーロラ鑑賞ができ、VIA鉄道からオーロラが見られる「オーロラ列車」として有名なのだそうです。

2007年に、ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンがダブル主役の「The Bucket List」というハリウッド映画がありました。この映画では、偶然病室で出会った2人が自分の人生の残り時間が少ないことを告知され、モーガン・フリーマンが一枚の紙に「Bucket List(棺桶リスト)」と書いて一度は捨てたはずのものをジャック・ニコルソンが拾ったところから物語が始まったと記憶しています。
人生でやり残したことを後悔しないように、リストを作って実行する。もし私がバケット・リストを作ることを考えると、VIA鉄道で行くカナダ大陸横断鉄道の旅はかなり上位に書き込まれるのではないかと、旅を終えて思うところです。

・参加者と企画の詳細:
  http://canadakeepexploring.tumblr.com/journey-to-tbex
・VIA鉄道ウエブサイト:
  http://wcs.ne.jp/via/

※旅の全体記録については、下記ウエブサイトをご覧ください:
http://www.makotophotography.ca/train/main.html

【撮影/取材 平田誠 http://www.makotophotography.ca

(2013年6月13日号)



 



 
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