【食べある記・トロント編】

「トップ・オー・ザ・セネター」跡に
新装開店した新名所「ジャズ・ビストロ」


〈 取材&撮影:デムスキー恵美 〉

店内に足を踏み入れてまず目に飛び込んでくるのは、フロアの真ん中に鎮座し、真紅に輝くスタインウエイのグランドピアノ。「レッドポップス」と呼ばれるこのピアノは、世界にただ一台のカスタムメイドで、今年春のオープニングに合わせてバンクーバーのショールームから搬送されてきたものだそうだ。インテリアは赤、黒、ゴールドで統一され、クラブ内には洗練された高級感が漂う。

トロントジャズシーンのランドマークとして、長年親しまれたクラブ「トップ・オー・ザ・セネター」(Top O’ The Senator)がドアを閉じてから8年が経過した。「ジャズ・ビストロ」(Jazz Bistro)のオーナー、コリン・ハンター氏と奥さんのジョーンさんは、ぜひトロントに本格的なサパークラブを、と物件を物色していたところ、立地条件、サイズなど、多くの点で条件を満たしたのがかつて「トップ・オー・ザ・セネター」のあった場所だったという。


▲「ジャズ・ビストロ」の外観。地下鉄ダンダス駅、マシーホール、ライアーソン大学などがすぐ近くにある

見渡せば、地下鉄ダンダス駅、マシーホール、エド・マービッシュ・シアターそして、エルギン・シアターなどが近距離にあるダウンタウンの一等地であり、ここは劇場帰りの観客が立ち寄る人気スポットにもなっている。

オーナーのハンター氏は、旅行業界で成功を収めたビジネスマンであると同時に、これまで9枚のCDをリリースしているプロのシンガーでもある。温かさと心地よさを感じさせるこの雰囲気づくりは、演奏アーティストとお客さんの立場をよく理解しているハンター氏と、インテリアを担当したジョーンさんとの名コンビが成せる業(わざ)といえるだろう。


▲吹き抜け造りの2階から1階を望む。写真左側上部が入り口付近。奥にダイニングエリアや演奏ステージが・・・

クラブの造りは1階がバー、演奏ステージ、ダイニングエリア、2階にはダイニングエリア、貸し切り用のスペース、バーなどがある。2階フロアは吹き抜け構造になっているため、食事をしながら1階のジャズ演奏を楽しむことができる。2階には大型テレビスクリーンも設置されているので、どこに座ってもライブ演奏が見られる。さらに上階に上がると、完成間近の屋上パティオとレストランにたどり着く。7月上旬にオープン予定のこの3階スペースは、下階のジャズ演奏スペースから独立した構造になっている。


▲オープン間近の屋上パティオ。1階のビストロからは独立した構造になっており、専用エレベーターが利用できる

スイスで腕を磨いたフランス料理シェフ自慢の味

サパークラブ「ジャズ・ビストロ」のチーフ・シェフは、ブラドリー・ゴードン・マクドナルド氏。スイスで長年にわたり腕を磨いたフランス料理のシェフであるが、昨秋には横浜のレストランから招待を受けるなど、なかなかの国際派である。素材の新鮮味とテクスチャーを大切にした調理と健康志向の薄味仕立て、そして盛り付けの中にもモダンなオリジナリティーが生かされている。キッチンのオーブンで毎日焼き上がるパンの味もまた格別。同様に、甘みを抑えた各種オリジナルデザート類もおすすめだ。


▲アペタイザーの蒸しアスパラガス+ローストマッシュルーム、ポーチド・ダックエッグ、シェイプド・トリュフとアボカドムース付きモザイクトマトサラダ


▲サマーメニューとして新たに加わったタラゴン風味ワイルド・サーモン


▲コーニッシュヘンのワイルドマッシュルーム詰め

食事は火曜日から土曜日までがランチ(11:30 am−3:00 pm)とディナー。日曜日はジャズブランチ(12:30pmより)の特別メニューが用意されている。日曜日以外のジャズライブは、カバーチャージと飲み物でも可。月曜日は定休日。


▲2階の一角にあるビデオスクリーン付きの小会議室。グループ用のダイニングエリアに隣接している


▲この日のライブ演奏はおなじみ、デイブ・ヤング、ロビー・ボトシュ、テリー・クラークによる「オスカー・ピーターソン:『ナイト・トレイン』に捧げる夕べ」であった。

■演奏スケジュール
ライブ演奏の週間スケジュールは、以下の通り
(月)定休日
(火)注目のカナディアンや地元アーティストの演奏
(水)ラテン音楽の夕べ
(木、金、土)国際ステージで活躍する内外のアーティストによる演奏
(日)ジャズブランチ(12:30 pmより)
※演奏スケジュールの詳細、ディナーの予約についてはウェブサイトをご覧ください。
Jazz Bistro
251 Victoria Street, Toronto
416-363-5299
www.jazzbistro.ca

■トロント・ジャズ祭、クラブシリーズの会場
「ジャズ・ビストロ」は、2013年度、トロント・ジャズ・フェスティバル、クラブシリーズ会場のひとつになっており、モーリー・ジョンソン、ビル・チャーラップ、カルメン・ソウザ、ロベルタ・ガンバリーニなど、国際ステージで活躍するボーカルやピアノの大物がずらりとラインナップに名を連ねている。なお、ジャズフェス期間中でもランチ、ディナー、サンデーブランチは通常通りのメニューが用意されている。
www.torontojazz.com

そして「ジャズ・ビストロ」には、「トップ・オー・ザ・セネター」で18年間、マネジャーを務めた大ベテラン、シビル・ウォーカーさんが総支配人(ゼネラルマネジャー)として大活躍している。トロントのジャズの歴史と伝統は、このダウンタウンの音楽のオアシスを中心にこれからも生き続けてゆくことだろう。
【Text & Photos by Emi Demski】

(2013年6月20日号)



 



 
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