【カナダ観光めぐり】

開拓時代カウボーイの生活を再現

アルバータ州バー・ユー牧場(Bar U Ranch)


〈 カルガリー・奈良由貴子 〉

Bar U Ranch(バー・ユー牧場)は、アルバータ州カルガリー市から南へ約100キロ、州道22号(通称:カウボーイ街道)沿いのロッキー山脈の裾野(すその)に広がる大平原にあります。
カナダ国立公園は、バー・ユー牧場の最も成功した牧場経営の草分けの歴史を保護、維持し、後世に伝えるために、カナダ唯一の国立公園が管理する牧場として、1991年、367エーカーの土地を国の史跡としました。


▲バー・ユー牧場入り口


▲入り口から眺める牧場施設

ここは、1882年から1950年までの約70年間にわたり、企業としてのバー・ユー牧場の本社が置かれた所で、その当時の世界中でもっとも有名な牧場のひとつに名を連ねています。まさしくカウボーイ発祥の地のひとつと言えるでしょう。
アルバータ・フットヒルズと呼ばれるこの地域は、質のいい牧草が育ち、チヌーク風(冬にロッキー山脈から吹き下ろす乾燥した暖風)がたびたび吹き、雪を溶かすので放牧が容易であること、十分な降水量が望め、山から流れてくる小川があり水に恵まれていることなど、数々の条件を満たすカナダ有数の牧場地帯なのです。


▲Bar U(バー・ユー)の刻印


▲親切に案内してくれたパークスカナダ(国立公園)のマイクさんと馬のコディー

バー・ユーとは、商標名で、横棒のバー「−」と、アルファベットのユー「U 」の組み合わせです。ここの牧場で飼育された牛や馬に、焼き印として押して品質を保証していました。
最盛期には、100人以上のカウボーイ(従業員)がいて、500頭の馬を調教し、15台の馬車で6万頭の牛を15万7千エーカーの土地に放牧していました。
1900年代初期には、パーチェロンと呼ばれるフランス原産の品種の馬の飼育で世界最大の牧場でした。パーチェロンは力が強い馬で、電気やガスのない時代に、馬車を引いたり、耕地をたがやしたりするのになくてはならない馬でした。
その頃、日本の皇族もこの地を訪れ、パーチェロンを購入し、日本に連れて帰ったという、日本とも縁があるところなのです。


▲回転テーブルのある円卓

カナダ大陸横断鉄道が完成すると、中国から鉄道建設のために働きに来ていた中国人たちが失業し、鉄道沿いの牧場に職を求めて移ってきました。そして、中国人が料理人として働くようになると、円卓の上に回転盆を置く中国文化が根付いていきました。初めは馬車の車輪を回転盆に利用していました。

▲クックハウス1階、女性料理人の部屋

男の仕事である牧場には、初めは女の人は一人もいませんでした。しかし、戦争が始まり、男の人が出兵し、人手不足になってから女の人が料理人として牧場で働くようになりました。
クックハウスと呼ばれる生活の拠点となる調理小屋は、一階に調理室、食堂、カードゲームなどの娯楽室と女性料理人の部屋があり、単身で働きにきているカーボーイたちは、二階で共同生活をしていました。後に、水道や電気が引かれるとシャワーとお手洗いが増築されました。調理室の奥には、自家発電の冷蔵室も完備され、生活水準が格段に良くなりました。
洗面所の薬棚や食料貯蔵室には、私たちが今も使用しているなじみ深いメーカーの薬や小麦粉の昔のパッケージが陳列されていて、当時の生活ぶりそのままに保存されています。来園者には、親子三代の姿も多くみられ、おじいさんやおばあさんが自分たちの思い出を孫に見せてあげられる貴重な場所なのです。
ここでは、今も昔が生き続けています。薪(まき)をくべて、温度調節をするオーブンで焼いたクッキーをいただくと、木のぬくもりが感じられ、心温まる味がしました。


▲蹄鉄(ていてつ)作りに欠かせない鍛冶屋の仕事場


▲パーチェロンが引く馬車に乗って園内を巡る

牧場内には、銀行、郵便局、鍛冶屋さんや革細工屋さんもあり、一つの街を築いていました。約100年前の牧場本社の建物は、補修を重ね今も大切に残されています。
入り口から、パーチェロンが引く馬車に乗り、郵便局や貯蔵庫を通り過ぎ、小川を越えて、集会所に着くと、たき火でいれたカウボーイコーヒーがふるまわれました。このコーヒーの美味しさにはビックリ。今までカナダで飲んだコーヒーの中で一番美味しかったです。サラリとのどの渇きをいやしてくれ、昔のカウボーイたちも飲んでいたかと思うと、すっかり自分がカウガールになった気分になってしまいました。
たき火を囲み、丸太の木に座って、歴史家のビルさんが語る、牧場だけではない、当時のカナダや世界の歴史ばなしにみんな熱心に聞き入っていました。「カウボーイ」が、男の人の憧れの職業だったからか、一人で来ている年配の男性が多く、見知らぬ同士でもすぐにうちとけ、昔ばなしに盛り上がっていました。


▲これがチャックワゴン・炊事車


▲去年の「チャックワゴン・ビーフシチュー大会」優勝者デレックさんと息子さん

この日は、「第5回バー・ユー チャックワゴン・ビーフシチュー大会」が開催されていて、8チームが腕を振るっていました。ルールは、ダッチオーブンと呼ばれる重いふた付きの鉄製の鍋を使い、100年前と同じようにたき火で調理することです。
昨年の優勝者、デレックさんは「カルガリー・スタンピード」のレストランのシェフ。味の秘訣は?と尋ねたところ、「じつは、息子のレシピなんです」と、こっそり教えてくれた。そして、シチューを煮ている鍋の脇で焼いているチキンは、「これは、息子のランチ用です」と、野外調理を楽しんでいた。
チャックワゴンとは、牧場に食事を運ぶ炊事車のことです。


▲開拓時代の衣装で、ビスケットの生地をのばす


▲ビーフシチューが煮えるまで音楽演奏を聴きながらのんびりと待つ人たち

レストランでいただいたのは、もちろんカウボーイシチュー。よく煮込まれたシチューのお肉は、口の中でとろけ、野菜の甘みが染み出ていて、ほどよいトマトの酸味がアクセントになっていて、とても美味しかったです。
レストランは、週末、閉園時間の後も営業していて、ロッキー山脈に沈む夕日を眺めながらディナーがいただけるおすすめレストランです。

カルガリー・スタンピードは、毎年7月にカルガリーで開催されるカウボーイのお祭りです。このお祭りを101年前の1912年に始めたのは、このバー・ユー牧場の経営者の一人です。そして、カウボーイたちが、チャックワゴンレースでスピードを競うようになりました。 これからも、故郷に帰る気分にひたる人、または、開催されるイベントを楽しむために訪れる人でにぎわうことでしょう。8月にはロデオ、9月には馬の力比べ大会など・・・。これらに合わせて何度でも訪れてみたいと思うような牧場でした。

バー・ユー牧場(Bar U Ranch)
■開園期間:5月下旬から9月下旬まで
■入園料:大人$7.80、シニア(65歳以上)$6.55、子供(6歳−12歳)$3.90、幼児は無料、家族$19.60
■ウェブサイト:www.pc.gc.ca/lhn-nhs/ab/baru/index.aspx

(2013年8月1日号)



 



 
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