【カナダ観光めぐり】

セントローレンス川に沿って
ケベック・シャルルボワ、汽車の旅


最近、世界各地の汽車の旅といえば高速化されてあっという間に目的地に到着、という傾向が目立っている。その反対に、のんびり超ゆっくり鉄道の旅も各地に存在しているようだ。ケベック・シャルルボワ地方を走る Le Massif Train (マッシフ鉄道)もそのひとつ。何せ全行程140キロを約4時間弱かけて走るのだから・・・。


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ケベックシティーとシャルルボワ地方の La Malbaie (マルベ)を結ぶ鉄道「Le Massif de Charlevoix」が運行されるようになったのはつい2年前の2011年である。もっとも鉄道自体は1889年にケベック鉄道がケベックシティーからセントローレンス川に沿って北東へ約30キロの大聖堂があるSainte-Anne-de-Beaupreまで敷いたのが始まり。これはもっぱら大聖堂にお参りに行く人が利用していたようだ。

その後、1919年に現在のマルベまで延長され、そこに立つお城風ホテル「Le Manoir Richelieu」は裕福なアメリカ人たちが休暇を過ごす場所として人気に。20世紀半ばごろは交通手段として鉄道が全盛期で、この路線もCN(Canadian National)鉄道の手に渡って運営されていた。

しかし、自動車と道路の発達とともに鉄道はすたれ、1995年にCNはこの路線を再びケベック鉄道に売り渡したのである。ケベック鉄道は船積み用貨車のみ運行していたが、何とかもう一度観光列車として光を浴びせることができないか、と2009年に立ち上がったのが「Le Massif de Charlevoix」グループである。グループに大きな力を発揮しているのがシャルルボワの Baie-Saint-Paul (ベイサンポール)出身、シルク・ドゥ・ソレイユの経営陣だそうだ。

車窓からベルーガ(白イルカ)が見えることも・・・

汽車はケベックシティー中心地から車で15分ほど北東に行ったモンモランシー滝公園内の駅から午前9時30分に出発。滝のすぐ近くである。スーツケースなどは乗車前に駅で預けておくと宿泊するホテルに届けてくれる便利なシステムになっている。


▲モンモランシー滝のすぐ下から出発する


▲客車は天井が高く造られている

出発してしばらく行くと、Sainte-Anne-de-Beaupre の大聖堂の真横を通過する。そのあとは唯一の途中停車駅ベイサンポールまでセントローレンス川に沿って汽車の旅。車窓から川でたわむれる鳥や島の風景を見ながら2時間ほど過ごす。客席のテーブルにはGPS機能のタブレットが置かれていて、通過地点の地図が表示され、その土地の紹介映像が選択して見ることができるなど、旅を飽きさせないように工夫されている。スナックやコーヒーのサービスもある。


▲車窓からセントローレンス川を望む。テーブルの窓際にあるのがGPS機能付きタブレット


▲朝食代わりにもなるスナック

昼前に、ベイサンポールに到着。ここでマルベ行きが出発するまで約3時間を過ごす。到着前にベイサンポールでの過ごし方の案内がある。Pedicab(輪タク)による市内見物、レンタル自転車、ハイキング、ヘリコプター観光など。駅が同じ鉄道会社経営のホテル(後述)につながっているので、そこで食事を取ったり、町の中心まで歩いて散歩する人も多い。画家やクリエーティブな芸術家の多いこの町にはギャラリーがたくさんある。私たちは輪タクに乗り市内を通り抜けてセントローレンス川に面した岬の突端まで行った(乗る前に料金を確認しておくとよい)。


▲Baie- Saint-Paul(ベイサンポール)の湾を背景に、Pedicab(輪タク)とドライバーの若者

午後3時、汽車は出発、マルベに向かった。全行程140キロのうち85キロはセントローレンス川に面しているというだけあって、川、といっても幅が広く湖のような景色が続く。ベイサンポールを出発して30分ほどたったころ、車内アナウンスがあって、見るとベルーガ(白イルカ)の群れが遠くにはっきりと見えた。このあたりはセントローレンス湾に生息するベルーガが川を上ってくることがあるそうだ。

午後4時30分、マルベ駅に到着。出迎えのシャトルバスでホテル Fairmont Le Manoir Richelieu へ。ホテルの真ん前に10年ほど前にできたというカジノがで〜んと建っているのには驚いた。これを目当てにくるお客も多いそうで、雇用を含め町の活性化には大いに役立っているようだ。


▲マルベ駅。セントローレンス川の反対側は切り立った崖(がけ)になっている


▲夕暮れのホテル Fairmont Le Manoir Richelieu


▲セントローレンス川を望むホテルのカフェパティオと庭

帰りは、翌日の夕方5時マルベ発のケベックシティー行き汽車に乗車。途中、ベイサンポールで30分の停車時間があり、終点モンモランシー駅に到着したのは午後9時15分だった。この列車は4コースディナー(2前菜、メイン、デザート)が含まれることで人気がある(アルコール類は別払い)。乗車中、ほとんどの時間は食事や飲み物のサービスに費やされた。料理を請け負っているのは、ホテル Fairmont Le Manoir Richelieu ということで、オードブルのあと、メインは肉料理または魚料理を選ぶことができる。


▲オードブルのスモークサーモン入りパイ

超モダンな Hotel La Ferme(農場ホテル)

この鉄道でもっともユニークなのは、途中停車するベイサンポールの駅と直結している「Hotel La Ferme(農場ホテル)」だろう。ホテルのあるところは、120年以上前にさかのぼり、もともとは農場であるとともに尼僧院で病気の患者を介護する施設でもあったそうだ。その後、紆余曲折(うよきょくせつ)があって「Le Massif de Charlevoix」がホテルに建て直すことに。元の農場の雰囲気を保ち、環境に優しいことが条件だった。周囲を畑や牧畜に囲まれたユニークなホテルがオープンしたのは昨年2012年夏のことだった。


▲Baie-Saint-Paul 駅に到着した汽車と Hotel La Ferme の建物の一部


▲ホテルがあった農場の原型の模型が駅構内に展示されている

ホテル内は超近代的な造りになっていて、部屋のタイプはいろいろある。スイートからドーミトリー式のシングルベッドまで値段も$319から$49(シーズンによって変わる)と幅広い。まだオープンして間もないこともあって、お客はローカルの人が多いようだが、泊まった人たちに感想を聞くと、皆、「とてもいい」とほめていた。


▲ホテル内のレストラン。すっきり洗練されている


▲ホテルの野菜畑の中にあるスパ・セクション

■汽車のインフォメーション

◎汽車の出発時間や内容は季節によって変わり、いろいろなタイプを選ぶことができる。ケベックシティーから Baie-Saint-Paul 往復の日帰りコースやサンセット・ディナーコースなど。乗車料金はコースによって異なるが、私たちの取ったケベックシティーとマルベ往復(スナックや4コースディナー込み)は1人$275(+ Tax)だった。(2013年8月3日〜4日)。
汽車のスケジュールは www.lemassif.com を参照。

◎汽車の旅というのは、車窓の景色がものすごく変化に富んでいる場合やワイワイがやがやのグループ旅行をのぞいて時にたいくつすることがある。しかし、のんびり汽車の旅が好きな人には向いているかもしれない。

〈リポート・いろもとのりこ〉

(2013年8月15日号)



 



 
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