【世界の街角から】

ベルリンの壁崩壊から24年
芸術と文化の町、ドイツ東部ドレスデン



〈トロント 中村智子〉

芸術と文化の町、ドイツ東部に位置するドレスデン(Dresden)。第二次世界大戦で町は壊滅的な被害を受けたものの、近年は観光地としても発展し、ドイツ東部の主要都市の一つとなっている。
フランクフルトから夜行電車に乗って約8時間(ベルリンからだと数時間)。一番安いドイツユーロパスを購入したので、3等客席のみ利用可。左右のブースにそれぞれ3つのベッドがある、計6人部屋のブースへと案内された。狭いベッドではあるが、簡易枕と毛布もあり、乗務員も頻繁に車内巡回しているので、一泊分の宿賃を浮かすことができた。そろそろこんな貧乏旅行は卒業したいのだが・・・。


▲ドレスデン中央駅

翌朝、目覚めた時にはすでに朝日が昇っていた。車窓の外はまるで、J・D・サリンジャーの小説「ライ麦畑でつかまえて」に描写されているような美しい光景だ。午前8時頃、ドレスデン中央駅に到着。駅から北に伸びる大通り、プラーガー通り(Prager Str.)にある宿を適当に探す。ヨーロッパではおなじみのIBISに立ち寄ると、空き部屋があったので、早速チェックインさせてくれた。しかも、日本のホテルでは必ずチャージされる早朝料金(だいたい一泊分の半分)も負けてくれた。何て寛容なんだ、ドイツ人。


▲古典的な建造物が多いドレスデン


▲古めかしい建物の間をトラム(市電)が走っている

その後、町を散策。ドレスデンは、先の大戦で壊滅的な打撃を被ったにもかかわらず、現在の町の建造物は伝統的なものが多く、町の雰囲気も古典的だ。わずかに残された廃墟や瓦礫(がれき)から、昔の姿を忠実に復元しようとした人々の懸命な思いが伝わる。町の中心にある聖母教会は、世界中からの寄付で長年かけて再建されたそうだ。


▲町の中心にある聖母教会。第二次世界大戦で壊滅的被害を受けた後、世界中からの寄付で再建された

町の狭い路地にはレストランやバーが並び、地元民で賑わっている。また、週末になると芸術家の個展や演奏会も多く開かれ(残念ながら私がドレスデンに滞在したのは平日だったのだが)、芸術と文化面での人々の関心の高さがうかがえる。


▲地元民で賑わうレストランやパブが並ぶ狭い通り

夕方になると、エルベ川の河川敷に屋台が繰り出し、ソーセージ、サワークラウト、ジャガイモ料理やビールを堪能することができる。そう言えば、フランクフルトのマイン川河川敷でも屋台が軒を連ね、たくさんの人々が思い思いに集っていたっけ。カートのようにして運べるピアノを持ってきて演奏する人、ギターを奏でる人、ローラーボードで爽快に走る人、ジョギングをする人、ビールとソーセージを片手に読書にふける人など。河川敷屋台文化はドイツ発祥なのだろうか。
思いもしなかった、あのベルリンの壁が1989年に崩壊して24年。壁崩壊後のドイツ情勢はどのような変遷をたどって今日に至ったのか興味があったが、河川敷屋台で出会ったドレスデンの地元民いわく「実のところ壁が崩壊した時よりも、1993年にEU(欧州連合)が発足して、1999年に貨幣がマルクからユーロに変わった時の方が生活としては大変だったよ。壁がなくなったからといって、わざわざ西側に引っ越すわけじゃなかったし、昔も今も東側で満足だよ。別に西側のことも気にならない」。


▲ドレスデンの観光名所「君主の行列」

はたまた西ドイツ出身の知り合いは「西側の人間には、壁が崩壊しようが全然関係なかった。東側の人間が裕福な西側とどうしても融合したかっただけ」とのこと。何なのだろう、この変な温度差は。まあ、世界でも有数の安定した国なのだから良しとしよう。


▲クリスマスマーケットも開かれる

初めて訪れた東部ドイツの地、ドレスデン。クリスマスマーケットのシーズンも美しいと地元民が話していたので、次回は是非とも、個展や演奏会を見るためにも、週末の冬に滞在してみたいと思う。

(2013年11月7日号)



 



 
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