【活躍する新二世】

イタリアンパスタ店とベーカリーを経営
寺内虔之介& 酷之介さん兄弟



〈取材・いろもとのりこ〉

「活躍する新二世」は、戦後カナダに移住してきた新移住者の子供たちで、各分野で活躍している人たちを取り上げるシリーズものである。今回はトロント郊外マーカムのJ−TOWNでイタリアンパスタ店とベーカリーを経営する寺内虔之介(てらうち・けんのすけ)& 酷之介(こうのすけ)さん兄弟にスポットを当ててみた。

■虔之介─素人から出発、研究を重ね人気店に

兄の寺内虔之介さん(以下、通称「ケン」で表示)は1983年、寺内政治(まさはる)さんと弓月(ゆづき)さんの長男としてトロントに生まれる。13歳のときに音楽の登竜門であるキワニス音楽祭の「フルート15歳以下部門」で優勝。当時の「日加タイムス」でも取り上げたので、読者の中には記憶に残っている方もおられるだろう。


▲「「Shiso Tree Cafe」のオーナーシェフ、寺内虔之介(てらうち・けんのすけ)さん

将来はフルートの道を進むのかと思われたが、15歳のときに母親の弓月さんが病死して状況は一変した。「フルートは母がサポートしてくれていたので、亡くなってからだんだん興味がなくなってきました」とケンさん。その上、政治さんが経営する「ベーカリー中むら」が最初のエグリントン店から現在のJ−TOWN 内の店に移転したばかりで、レッスンなどにかかる費用の捻出もたいへんだった。

というわけで、高校卒業後はセネカ・カレッジに入り、インターナショナルビジネスを2年間学ぶ。卒業後はトロントのダウンタウンのクラブで6年間、DJ(ディスクジョッキー)をやっていた。
「そんなとき、J−TOWN の家主からJ−TOWN 内にスペースがあいたので、何かやってみないか、と話が持ち上がりました。弟の酷之介と相談して、2人のパートナーシップでイタリアンパスタの店をやってみようということになったのです」

こうしてケンさんがオーナーシェフとしてパスタの店「Shiso Tree Cafe」(シソ・ツリー・カフェ)をオープンしたのは2010年10月。その前にイタリアンレストランで料理の修業をしたのかと思ったら、「いえ、全くしていません。家で料理を作るのは好きだったので、何とかなると思っていたのです」。ちなみにこの店をオープンするに当たって、父の政治さんには何の相談もせず、兄弟2人だけで進めたという。


▲「Shiso Tree Cafe」店内


▲掘りごたつ風の席もある

開店後のお客の反応はどうだったのだろうか? 「いやぁ、現実は厳しかったです。1日目で素人ではだめだ、とわかりました」とケンさん。当然と言えば当然のこと。それから彼の修業道が始まる。
まずは、つての紹介でトロントの高級フランス料理店「Auberge du Pommier」で自分の店が休みの毎週月曜にキッチンに入り、レストランの仕組みや仕事の流れを学ぶ。「料理そのものというよりオーガナイズ、マネジメントが勉強になりました」。ここでの学習は3カ月ほどで終了した。

その後は自分でメニューを研究し、試行錯誤でオリジナルメニューを生み出す。「スペシャルメニュー」として黒板に書いて、お客の反応をうかがいながら、さらなる研究を重ねた。そうした努力が実って、開店1年後くらいから次第にクチコミでお客がついてくれるようになった。


▲オリジナルのスペシャルメニュー


▲キッチンでソースの仕込み中

「土地がら,中国系のお客様が多いので、彼らの好むシーフード系パスタが人気です」。とりわけオリジナルメニューの「お好み焼きパスタ」や「スモークサーモンクリーム・パスタ」に人気がある。


▲人気のお好み焼きパスタ


▲スモークサーモンクリーム・パスタ

「Shiso Tree Cafe」の席数は60席。キッチンに2〜3人、ウエートレスが4人(交替制)などスタッフのマネジメントも大事な仕事のうちである。

将来は「週末、ライブがやれたらいいなあ、と計画しています」。来年に結婚を控え、ますます仕事に意欲を燃やす。

ここで政治さんに父親から見たケン像をうかがった。
「ケンは典型的B型で、Going my way。自分のペースを守る性格だから端から干渉しないようにしています。自分のことは自分で責任を取れ、とだけ言っています」

【Shiso Tree Cafe】
Unit#1− 3160 Steeles Ave. East, Markham
Tel : 905-479-9319
オープン時間:火・水・木・日曜=午後12時〜9時、金&土曜=午後12時〜10時
(月曜休み)
E メール:shisotree@gmail.com
*リカーライセンスあり

■酷之介─小遣い稼ぎのパン作りからベーカリー経営に

弟の酷之介さん(以下、通称「コウ」で表示)は1985年生まれの28歳。高校を出てから、オンタリオ州ハミルトン市のモホーク・カレッジ音楽科に進み、ドラムを専攻する。卒業後、トロントのヨーク大学に入り、さらに音楽を学ぶ。兄弟ともに音楽好きは母の弓月さんの影響のようだ。

政治さんが経営する「ベーカリー中むら」でパン作りをするようになったきっかけは「学生時代、ちょっと小遣い稼ぎのアルバイトのつもりでした」と、コウさん。その後、本格的に店のマネジメントに関してもやらなければならない状況になり、今ではすっかり経営の方もまかされている。


▲「ベーカリー中むら」の寺内酷之介(てらうち・こうのすけ)さん

パンの仕込みは早い時は午前3時から始まる。「もう慣れましたから・・・。店を経営していくにはシステムをしっかりさせないといけないと思っています」と、すでにりっぱな経営者ぶりである。

ベーカリー中むらではバラエティーに富んだケーキ、食パン、オリジナル・デニッシュとざっと種類は40種ほど商品ケースに並ぶ。コウさんはケーキ部門は専門の職人にまかせて自分では作らない。その分、マネジメントに力を入れている。


▲パン作りからこの世界に入った


▲店のロゴマークつきカボチャあん入りパン

現在、パートなどを含めパンとベーカリーに9人、キャッシャーが3人と12人の従業員をかかえている。これをうまく回転させていくのが、コウさんの腕の見せどころである。コウさんはベーカリーのマネジメントとともに、「Shiso Tree Cafe」のマネジメントも見ている。名目はケンさんとコウさんの共同経営という形になっているそうだ。

政治さんにコウさんの仕事ぶりをうかがうと、「コウのほうは典型的A型でオーガナイズが得意。よくやっていますよ」。

【ベーカリー中むら】
Unit #9− 3160 Steeles Ave. East , Markham
Tel : 905-477-3555
オープン時間:火・水・木・金・土曜=午前10時〜午後7時、日曜=午前11時〜午後6時(月曜休み)
Eメール:info@bakerynakamura.com
ウェブサイト:www.bakerynakamura.com

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〈取材を終えて〉
どっしり大型の兄、ケンさんは体格通り性格もいかにも「太っ腹!」という感じ。弟のコウさんはしっかり計画を立てて行動を起こすタイプに見えた。性格の違いが補い合えて「ちょうどよいコンビ」となっているのではないだろうか。 戦後新移住者たちの世代の交替を感じさせる寺内兄弟に声援を送りたい。

(2014年1月1日号)



 
 


 
 
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