【ひと】

弁護士からフラメンコダンサーに
さらなる飛躍を目指す「蓮華」主宰
石塚理恵さん


4年ほど前、e-nikka でトロントで女性弁護士として活躍する石塚理恵さんのインタビュー記事を掲載したことがある。それ以前から趣味としてフラメンコを踊っていたことは聞いていたが、その後、弁護士をやめてフラメンコに力を入れてしまうとは・・・。それほど、彼女にとってフラメンコは魅力的な存在というか、彼女の魂そのものかも知れない。


▲フラメンコとのかかわり合いを語る石塚理恵さん

フラメンコとの出会い
石塚理恵さんは埼玉県狭山市に生まれ、東京練馬区の富士見高校を卒業後、中央大学法学部に進む。卒業後、証券会社に勤務。その後、2004年に弁護士の資格を取るためにモントリオールへ。マギル大学のロースクールで法律を学び、数々の資格試験の難関を突破して2009年に弁護士の資格を取得,トロントで法律事務所に入り、働いていた。

フラメンコとの出会いは「日本で証券会社に勤めていたころ、運動不足解消のためフラメンコダンス教室に通ったのが始まりです」と。それまで、父親がギターを弾いていたことに影響されたのか、ジャズダンスをやったり、友達に誘われてフラメンコショーを見に行ったりして何となく興味を持っていた。しかし、当時はフラメンコダンサーとして舞台に立つことまでは考えていなかったという。

日本で始めたフラメンコはモントリオールでも趣味として続けた。「カナダへ来る前にインターネットでフラメンコ・スタジオを調べ、良さそうな所をすでに決めていました。だからモントリオールに到着した翌日にレッスンに行きました」。ここで出会った先生が彼女の運命を変えた。

その師匠はケベック出身のミリアム・アラード(Myriam Allard)という、スペインでも有名なダンサーである。当時の大阪のフラメンコ・シアターレストラン「エル・フラメンコ」(東京店は新宿の伊勢丹会館にある)でも半年ほど出演していたので、日本でもその名が知られている。

「ミリアムとの出会いがなかったら、これほどまでフラメンコにのめりこまなかったでしょう。基礎からフラメンコの心意気まで学んだのです」
トロントに移ってからも機会を見てはモントリオールまで習いに行っていたそうだ。もちろん、トロントでも有名なエスメラルダ・エンリケ(Esmeralda Enrique)さんのスタジオに通い、習っている。

また、勉強と経験のため毎年スペインのフラメンコの本場、アンダルシア地方のヘレスで開催されるフェスティバルに参加し、ここでも舞台に上がって踊っている。


▲スタジオでギタリストや歌手とアイデアを出しながらひとつの作品を創造していく


▲練習風景

人生でやりたいことをやる・・・「蓮華」誕生へ
苦労してなった弁護士を2年前にやめ、現在、昼間は会社員として働き、夜はフラメンコダンサーとしてレストラン・シアターで踊ったり、フラメンコスタジオで練習をしたり新しい作品を創作している。「ほとんど毎日、仕事のあとはフラメンコに時間を費やしています」

フラメンコを踊る人はダンサーでありながらミュージシャンでもある。「その一体化した存在に胸がざわめき、体を動かすことでその世界に入ることが魅力」と理恵さん。

「今、自分が一番やりたいことは何?と考えたとき、フラメンコだったんです」
そこで誕生したのが理恵さんが主宰する「蓮華」(れんか)である。
「せっかく私が日本人なのですから、日本の文化をフラメンコに取り入れて融合させたら素晴らしいものができるのでは・・・と考えました」。そこから仏教のシンボルの花、ハスを連想して「蓮華」というグループ名が生み出された。

理恵さんはフラメンコの枠にとらわれない、自由な表現から新たな芸術が生まれると信じている。トロントにいるからこそ生まれる発想なのかもしれない。
2013年10月トロントで開催された「フラメンコ世界フェスティバル」では、日本の「四谷怪談」をフラメンコにした作品「怪談」を披露し、大きな反響を得た。


▲2013年10月に開かれたトロント国際フラメンコ祭りでの舞台で「怪談」を踊る石塚理恵さん。東洋の要素を加味したユニークなフラメンコが大好評を得た( Photo by Levent Erutku Photography )


▲「怪談」のフィナーレは「さくらさくら」も入れて・・・石塚理恵さん( Photo by Levent Erutku Photography )

今年2月に上演する予定の「108」では、 仏教のお経を取り入れ、「さくらさくら」をフラメンコ風にアレンジしたり、演出に工夫をこらしている。そのユニークな表現に観客は大いに刺激を受けるであろう 。

日本文化の精神とフラメンコの融合をめざす
「蓮華」のメンバーは、理恵さんをはじめ歌手のピリさん、ギターのディノさん,もう一人の歌い手のジーナさんの4人。ピリさんは昼間は学校の教師で、ジーナさんは働きながら看護師を目指して勉強中、ディノさんはプロのギター奏者としてレストランシアターで演奏したり、生徒たちに教えているそうだ。4人は練習の日にスタジオに集まると、 アイデアを出し合い、試行錯誤で創作的かつ独創的な作品を生み出そうと研究に余念がない。

現在、出演が決まっているのは2月18日(火)午後8時からトロント市内の有名なレストラン・シアター「Lula Lounge」に出演すること。さらに9月に開催されるモントリオール国際フラメンコフェスティバルに日本人として初めて出演する予定である。もちろん、「蓮華」のメンバーとともに。


▲今年2月18日(火)に行われる「蓮華」の「108 」公演ポスター

「2013年にトロントのフラメンコフェスティバルで発表した『怪談』からヒントを得た『108』をもっとふくらませて1時間くらいにし、さらにいろいろなアイデアを加えて日本文化の精神とフラメンコの融合を目指した作品に仕上げて行きたいと考えています」

トロントにはスペイン人のダンサーやスペインの血が流れる南米出身のダンサーがたくさんいる。その中で日本人がフラメンコダンサーとしてやっていくにはかなりのハンディがあると思われるのだが、その点について・・・・。

「それは本場のスペイン人には勝てない部分もあります。しかし、自分は自分らしく、マイナスをプラスに転化して芸術性を高めて行けば決して負けないと思います。また、そうなるように努力していくつもりです」

今年のエト、午(うま)年の年女でもある石塚理恵さん。「蓮華」を率いて馬のように駆け巡る飛躍を期待したい。

■Lula Lounge での公演「108」
◎日時:2月18日(火)午後8時開演
◎アドレス:1585 Dundas St. West, Toronto
( Dufferin St. と Lansdowne Ave. の間 )
◎チケット:$12(前売り券)、$20(当日券)
http://www.eventbrite.ca/e/108-tickets-9737528209?aff=es2&rank=2&sid=89230bcf750611e394ad1231391edcec

「蓮華」ウェブサイト:www.larenkaflamenco.jimdo.com(フラメンコ教室の情報など)

お問い合わせ:Email : larenkaflamenco@gmail.com

〈インタビュア・いろもとのりこ〉

(2014年1月9日号)



 



 
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