【ビジネス訪問】

ポジティブ精神でビジネスを発展
家の改装・造園「JIRO Home Builder 」
福島次郎さん


とかくカナダ人は家の改装、つまりリノベーションを好む国民性のようだ。それだけ家自体の土台がしっかりしているということだろうか。日本であれば「家を買うのは一生に1回」という人がほとんどだが、ここカナダでは5年ごとに家を買い替える人も多いという。そして買い替えるたびに大なり小なり、自分の好みに改装する。

というわけで、必要に迫られて改装ビジネスが盛んになるというわけだ。小さな直しは自分でやる人も多いが、キッチンやバスルーム全体となると、素人には手が出せない部分も出てくる。

世界中の国々から移住してきているトロントでは、建築関係のビジネスはイタリア系が多いといわれる。その中で日本人ビルダーとして活躍しているのが「JIRO Home Builder 」の福島次郎さんである。


▲福島次郎さん

■家の改装から日本式お風呂まで広範囲な職域
トロントでは本格的に改装ビジネスを看板にしている日本人は少ない。もっとも福島さんもこのビジネスの最初はいわゆる修理専門の「ハンディマン」からスタートした。本格的に現在のようなビルダーとして看板を掲げるようになったのは10数年前である。

ここでざっと仕事の内容を挙げてもらおう。
「キッチン、バスルーム、リビングルームなどのリフォームをはじめ、インテリアのデザイン、設計士による必要なパーミットの受託、外周りのデッキ、造園、石の歩道など広範囲にわたっています」と、福島さん。さらに日本式お風呂の設置も請け負っているそうだ。必要に応じてプロのデザイナーに依頼することもある。

とかくお客とのトラブルが生じやすいこの種のビジネス、福島流お客対策をうかがった。
(1)お客さまの望むことをしっかりと聞き、お客さまを知り尽くすことでニーズに応える。
(2)工事中のお客さまのストレスを最小限にする (コミュニケーションを密にし、スケジュールにできるだけ合わせる、毎日の工事現場の掃除と整理整頓)
(3)何か問題が起きたときは、早急の問題解決法の提案
(4)工事中にご近所の方々と交流関係を持ち、不満やクレームに即時対応する
・・・などである。日本人のお客を重んじるサービス精神がうかがえる。


▲キッチンの改装


▲バスルームの改装

■養殖業を目指していたのがビルダーに?!
福島さんは最初から建築関係の仕事を望んでスタートしたのだろうか?
「実は魚の養殖ビジネスを目指していたんですよ」。これまた畑違いというか、どこでどうなって魚から板や石を扱うことになったのだろうか。
福島さんは1974年、広島市生まれの39歳。「高校を卒業すると父親から家を出て社会勉強をしてこい、と言われましてカナダにやってきました。子供のころからカナダの雄大な大自然にあこがれていました。今のように情報が多くないころでしたから、ずっとカナダにあこがれを持っていたんですね」

とりあえず、ESLスクールに通い英語の勉強をして、学生ビザを取得した。TOEFLも自分で勉強してパスした。

「もともと魚の養殖業に関心があったので、当時養殖技術の進んでいるカナダで学び、自分で養殖ビジネスをやってみようと考えていたんです」
そこで,トロントから北東約100キロのLindsay(リンゼイ)市にあるフレミングカレッジで2年間養殖技術について学ぶ。

「日本人のせいか、特に鯉(こい)の養殖に興味を持ちまして、学校内で僕の教授がやっていたのをボランティアで手伝っていました。しかし、うまくいきませんでした。そのあと、ピカリングでニジマスの養殖の仕事を1年ほどやりましたが、会社が倒産してしまいました」

「他者が行っている会社ばかりを当てにしてはならない、何か自分でやらなくては、と思っていたころ、イーストヨーク(トロント市東部地区)の市庁舎内でスモールビジネス・コンベンションが開かれたのです。そこで偶然、建設会社のオーナーに『池のキット(付属品)を販売したいのだが、やってくれないか』と声をかけられ、このチャンスを逃したくないと思い即座に承諾しました」

これが現在のビジネスに通じる出会いであった。「過去を振り返ると、さまざまな人たちの助けでここまでこられたと思います。その方々には感謝しきれません。今後は人のために何かサポートできる人間に成長していきたい」とのこと。

■「なんでもやればできる」・・・根っからの積極的性格
池のキットのビジネスは、キットを販売して設置までする仕事であった。もちろん、福島さんにはそれまでそのような経験はない。しかし、子供のころから手先が器用だったので、少し教えてもらえればすぐに習得した。それに「できません」と言うのがきらいだった。

「なんでも勉強してやればできる、と信じていますし、不安感とか恐怖心とかあまりないんですね。分からなければ分かる人に聞けばいいのだし、聞くことは全くはずかしくないので、常に学ぶ気持ちで聞いています。それにだんだんいろいろな専門の方とネットワークもできてきて助かっています」。ポジティブな性格だと自他ともに認めている。

こうして、池のキット設置から造園、デッキ、石の設置などの仕事を2年間ほどやって、いよいよ29歳のときに独立し、「グリーンゴデス」という会社を設立。夏場は造園、冬場はリノベーションを請け負っていた。個人、デベロッパー、不動産会社をお客としてビジネスを運営していた。

▲木のデッキ ▲石の階段


▲木のパティオ ▲石のパティオ


庭をデザインするにはスタイルの統一性を重視するため室内のデザインを参考に、室内は庭を参考にしていく中で両者を同時にし、日本のデザインをアクセントとして取り入れればユニークなものができると確信。現在の「JIRO Home Builder 」を立ち上げたのである。

それから今日まで、決して順風満帆とはいかなかったこともある。
「最初のころは経験不足からどうしても見積もりよりコストオーバーになってしまうのですね。それはやはり自分の責任だし、プライドもあるので、オーバー分は自分で弁償し、損をしてしまったことが何度もあります」

また、反対に隣人の不良工事によりお客がベースメントに水がたまって困っていることがあった。だれもこの問題解決ができずにお客さんが困っていたときに、水はけ工事を造園デザインに取り入れ問題を解決してあげた。「ジローが来てくれて本当に助かった。感謝している」と言われたりすると、仕事冥利に尽きるというものだ。


▲石をモチーフにしたモダンなデザインの庭


▲ガレージを改造してガベージボックス入れを

■将来は日本に北米スタイルの家を建設したい
福島さんは現在、家の改築専門で新築は手がけていない。「新築の仕事をするにはまだ知識と経験不足。土台、基礎(ファンデーション)の技術が必要です。これは大変難しいし、また大事な仕事です。いつか、これにも挑戦したいと思っています」と。

さらに、「将来、日本でログハウスやビクトリア建築様式の家を建ててみたいと考えています。こちらからプロのデザイナーや職人を連れて行って、造ってみたいですね」。6年後の東京オリンピックに向けて、夢をふくらませる福島次郎さんである。

*問い合わせ:jhomebuilder@gmail.com Tel:647-967-5406

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〈取材を終えて〉

高校生のときにすでに柔道2段だったというがっちりした体格の福島さん。この仕事にはぴったりのように見受けられた。カナダ人の奥さんとの間に上は13歳から下は7歳の男の子4人のパパでもある。「いや、食べ盛りでたいへんです」と目を細める。きっと家でも頼りがいのあるパパなのでしょう。

〈取材:いろもとのりこ〉

(2014年1月16日号)



 



 
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