【ジャムズネット】

世界に広がる在留邦人医療支援ネットワーク
「ジャムズネットカナダ」設立総会開かれる


海外における邦人医療支援ネットワーク「ジャムズネット」が広がりつつあるが、カナダでもこの組織が発足することになり、その設立総会が、1月22日午後、在トロント日本国総領事館さくらルームで開かれた。 「ジャムズネットJAMSNET」とは、Japanese Medical Support Network の略称で、カナダでの名称は「JAMSNET Canada」となる。


▲「ジャムズネットカナダ」設立総会に出席のメンバー。(左から)山本栄二トロント総領事、小谷野靖之領事、村上ゆりか看護師(日本大使館医務班)、許斐由起子さん(このみ・ゆきこ=臨床心理博士)、傳法清ジャムズネットカナダ代表、仲本光一医務官、安福和弘医師(トロントジェネラル病院)、岡田由佳さん(モミジヘルスケア)、大石久医師 (1月22日トロント総領事館にて)

総会には、ジャムズネットカナダ代表でJSS(ジャパニーズ・ソーシャル・サービス)副会長の傳法清(でんぼう・きよし)氏、在カナダ日本国大使館医務班の仲本光一医務官および村上ゆりか看護師、トロントジェネラル病院呼吸器外科医師の安福和弘(やすふく・かずひろ)氏および大石久氏、モミジヘルスケアの岡田由佳さん、トロント在住の臨床心理博士・許斐由起子(このみ・ゆきこ)さん、在トロント日本国総領事館からは山本栄二総領事、小谷野靖之領事、米谷佐知子領事班職員が出席した。当日出席予定であったジャムズネット(ニューヨーク)代表でコロンビア大学循環器内科教授の本間俊一氏は、悪天候のため飛行機の便が取れず、ニューヨークから電話会議の形で参加した。


▲設立総会の会議風景


▲ジャムズネットカナダの活動の一環として国際結婚アンケートおよび認知症キャラバンについて説明する傳法清代表(JSS副会長)

山本栄二トロント総領事が挨拶のスピーチを行い、ジャムズネットカナダの設立を歓迎、激励する言葉を述べた後、仲本医務官がジャムズネットの成り立ちを解説、傳法氏がジャムズネットカナダの活動としての国際結婚アンケートおよび認知症キャラバンについて説明、安福医師が特別講演、質疑応答が行われた。

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海外の在留邦人の数は、現在、約114万人とみられている。そして海外に出国する日本人は年間約1,700万人、うち70歳以上は82万人で、高齢者の海外旅行が増加しつつある。これらの人々の中で、訪問先の国で健康上の問題が発生して医師などにお世話になるケースが多い。もちろん海外に在住している日本人の中で身体的・精神的に問題を抱える人もいる。

2006年、ニューヨークで「ジャムズネット」がスタートした。米国日本人医師会が中心となり、在ニューヨーク日本国総領事館が側面支援するかたちで設立された邦人医療支援ネットワークである。本間俊一医師を代表に活動を行っている。ニューヨークでは2001年の「9.11」の経験から、危機発生時に在留邦人は災害弱者であるという認識が共有され、邦人自助の気運が高まっていたことが、ネットワークの形成につながった。
2009年、日本に帰国した人たちが中心となって「ジャムズネット東京」が設立された。2010年にはボストンがジャムズネットに参加、同年、トロントもJSSが参加。2013年にはバンコクで「ジャムズネットアジア」設立。ベルリンでは2014年に「ジャムズネットドイツ」が設立される。

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こうしたなか、カナダでも邦人医療を支援するネットワークの必要性を訴える人々が中心となり、「ジャムズネットカナダ」設立の運びとなったわけである。
この目的は、邦人医療関係者同士の情報交換・連携を行い、カナダ在留邦人の医療を支援する、としている。

すでにこの趣旨に賛同して、バンクーバー、カルガリー、トロント、モントリオールなどでメンバーになった人がいるという。カナダは国民皆保険で、治療費は基本的には無料だが、ワーキングホリデーなど短期滞在者や3カ月以内の移住者は州の医療保険に加入できないという現状。また、在留邦人にとって、病院での待ち時間が長いこと、患者と医師の言葉の問題(通訳のことなど)、ファミリードクター(家庭医)を探す問題、認知症の対応など、さまざまな問題が横たわっている。


▲仲本光一医務官

カナダは日本に比べてはるかに医療アクセスが困難な状況にあり、在留邦人は苦労を強いられているという背景がある。ファミリードクターの予約は1週間後、専門医の受診は半年から1年後、ER(救急医療処置)の待機時間6時間といったケースもある。またメンタルヘルス上の問題は言語的・文化的背景の理解が必要であるため、邦人によるカウンセリングが必要であるが、人材が少なく、かつ偏在している。

日本大使館の仲本医務官が約1年間、カナダの各地域を巡回した結果、地域によっては邦人医師・看護師・カウンセラーなどが少なからず活動していることが判明したという。「邦人医療関係者の一部は、コミュニティー支援、ボランティア活動の一環として、他の地域の邦人の相談を受けてもよいとの意思表示をされています」と仲本氏。

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「ジャムズネットカナダ」の設立趣意書によると、このネットワークは、代表を傳法清氏(JSS副会長)とする。事務局はオタワの日本大使館医務班に置き、メーリングリストの管理などを行う。参加メンバーは、カナダ在住の邦人医療関係者で希望する人、大使館医務班、総領事館の領事担当官とする。

活動内容としては、メーリングリストを通じて、互いの情報交換を行う。邦人からの相談を他地域の専門家に照会、あるいは、他地域での受診の場合の紹介を行うことを可能とする。随時、メンバー間の勉強会、一般邦人向けの医療講演会なども開催する。ニューヨーク、東京、アジア、さらに医務官などのネットワーク、他地域の医療関係団体との連携により情報交換を図り、照会・紹介先としても確保する。

仲本医務官は、「有事・緊急事態の発生時:大使館・総領事館として邦人の被害状況の把握などの情報収集、邦人に対する情報発信に有効です。また、テロや大規模な災害、新型インフルエンザ、ハリケーン、スノーストームなど、邦人支援のためのボランティアが必要になった状況でのリソースとしてもネットワークは有効に機能することが期待されます」と語る。


▲東日本大震災の被災地、宮城県南三陸町をボランティアで訪問した仲本光一氏(2011年4月)。現地を視察し、福島医大精神科、岩手県大槌町を訪問、ジャムズネットとして何ができるか検討した。その結果、ジャムズネットとジャムズネット東京は、福島、岩手・大槌町の支援を行っている

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官・民協同の邦人医療支援ネットワーク「ジャムズネット」では、「4つのつなぎ」と称して次の項目を掲げている。すなわち、(1)プロの情報を一般の人に平易な形でつなぐ、(2)海外邦人の悩みを専門家につなぐ、(3)世界に広がる海外邦人支援団体をつなぐ、(4)海外邦人の日本への思いをつなぐ。

ジャムズネットの今年(2014年)の予定の一部をご紹介すると、1月には、ジャムズネットカナダ設立総会(22日開催)、ジャムズネットドイツ設立、ヤンゴン医療セミナー(ミャンマー)、2月10日に東京・巣鴨で勉強会、4月11〜13日ニューヨークで「ジャムズネットワールド」の会議、7月に東京で一般向け講演会、8月JCOP(米国日本人医師会コミュニティー・アウトリサーチ・プログラム)申し込み開始、9月ニューヨーク「シニアヘルスウィーク」と、行事が目白押しだ。

関係者は、できるだけ多くの在留邦人がジャムズネットに関心を持ってくれるよう望んでいる。

・「ジャムズネット」のホームページ
http://jamsnet.org/

・「ジャムズネット東京」のホームページ
http://jamsnettokyo.org/

・「ジャムズネットカナダ」のホームページ
※しばらくの間は「ジャムズネット東京」のホームページをご利用ください。

〈取材・編集部〉

(2014年1月30日号)



 



 
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