【食の話題】

もうひとつの無形文化遺産「キムチ」
歴史・効能・作り方・種類・習慣


昨年12月、和食がユネスコの無形文化遺産に認定されたことは広く知れ渡っているが、同時期に韓国料理の「キムチ」も無形文化遺産に認定されたことは、日本ではあまり報道されなかったように思う。今やキムチは日本人の食卓には欠かせないほどすっかり食生活にしみ込んでいる。そのキムチの実体に迫ってみよう。

「白キムチ」から「赤キムチ」へ
朝鮮半島でキムチが作られるようになったのは13世紀ごろで、もともとは中国東北部地方で作られていた「酸菜」が伝わり、独特のキムチが生まれたという。持ちがいいように越冬用の保存食として作られたが、当初は青唐辛子を用いた「白キムチ」だったそうだ。

それが、16世紀に日本から赤唐辛子が伝わって現在の「赤キムチ」が生まれ、これが主になったという。ということはもともと日本とも深いかかわり合いがあったわけである。日本でキムチが家庭に浸透し始めたのは、1980年代初めごろからというから、ごく最近のことである。その後、激辛ブーム、韓流ブームなどがあって、すっかりおなじみになった。

キムチの乳酸菌が腸を正常に
キムチは乳酸菌の発酵食品で、腸の働きを正常にする働きがある。また、貧血を防ぐビタミンB12が含まれている健康食品でもある。
材料の唐辛子にはカプサイシンという辛味成分があるが、これは食欲増進や消化をよくし、辛味の刺激で体を温め,その上、エネルギーを消費させるので、脂肪を減らす効果もあるとか。キムチ作りに欠かせないニンニクにはアリシンという抗菌効果があり、ビタミンB1を作り出す効果もある。

とは言え、何の食品でもそうだが、食べ過ぎは禁物。特に発酵食品が健康によいことが分かっていても、塩気が気になるというもの。
そこで塩気を抑えたマイルドなホームメイドのキムチ味が評判のトロント・コリアンタウンの韓国食品店「E・MART」を訪ね、キムチ作りを見せてもらった。

独自のレシピでおいしいキムチを
週に2回、大量のキムチ作りに励むのは「E・MART」店のオーナー夫人、ミセス・リー。この道40年以上の大ベテランである。まずは材料からあげてみよう。

主材料の白菜は1〜2日間軽く塩漬けにしてからキムチソースと混ぜ合わせる。


▲軽く塩漬けしてカットした白菜


▲香辛料、フルーツ類を加えたホームメイドのキムチソースを加えて混ぜ合わせる

キムチソースは、ニンニク、しょうが、りんご、なし、玉ねぎ、アミ、フィッシュソース(魚醤)、ニラ、ホットペッパー粉など多くの材料を混ぜ合わせたもので、作り手によって味がかなり違ったキムチになる。

「うちのキムチの美味しさの秘訣は、まず塩漬け用の塩はシーソルトを使ってマイルドに仕上がるよう、気をつけています。もし、塩気が強いと思ったら水につけて塩出しします。それと自然のホットペッパー粉を使っていること。中には人工着色のものもありますが、でき上がりの味が悪いです。フルーツをたくさん加えているので、マイルドなよい味が出ます」と、ミセス・リー。


▲まんべんなくソースが行き渡るよう混ぜ合わせるミセス・リー


▲できたキムチは大ビンから各種容器に詰められる

E・MARTでは1回に5ケースの白菜(1ケース12個入り)を使ってキムチを作るそうだ。特別注文も受けている。

ところで、キムチの食べごろは、いつなのか、聞いてみると、
「サラダと同じで作り立てが一番おいしいです。しかし、1週間、2週間たつと、また違った味が楽しめます。食べる時期はその人の好みにもよります。発酵食品なので1年間は持ちますよ」と。


▲ミセス・リー自慢のキムチ

・キムチはそのまま食べるほかに、他の材料と合わせていろいろなバリエーションが楽しめる。代表的なチゲ鍋、チヂミ、キムチ入り納豆など限りなく広がっている。寒い夜にポカポカ体が温まるチゲ鍋などはいかがでしょう。


▲キムチ・チゲ(キムチ鍋)

【E・MART 】
696 & 698 Bloor St. West Toronto
(地下鉄クリスティー駅から東へ徒歩2分)
TEL:416-534-8878
毎日午前9時〜午後11時まで営業

豊富な種類
一般的にキムチというと白菜のキムチ(ペチュギムチ)を指すことが多い。そのほかに材料によっていろいろな種類がある。主なものは、
・オイキムチ──キュウリのキムチ
・カクテキ──大根のキムチ
・ポサムキムチ──生のイカやカキなどを白菜で包んで漬ける。あまり保存はきかない。
・ヤンベチュキムチ──キャベツのキムチ
・ムルキムチ──汁気の多い白菜キムチで、唐辛子とニンニクを使わない。

キムチ休暇&ボーナス?
その昔、韓国では11月がキムチを漬ける季節で、漬け込む日のことを「キムジャン」と呼ぶ。近所の人や親戚が集まって数百個の白菜を用いて作っていたそうだ。「キムジャン」は特別休暇として認められ、キムチ代のボーナスまで出る会社もあったという。

しかし、「キムジャン」の風習はだんだんすたれて、最近は特に都会では家庭で作る人が少なくなり、スーパーなどで買っていく人が増えているそうだ。その代わり、年中新鮮なキムチが手に入ることになった。

知名度
欧米で「SUSHI」という言葉を知っている人は、ある統計によると、60〜70%にも上るそうだが、「KIMCHI」はまだ約15%にとどまっている。今回の無形文化遺産の認定をきっかけにキムチ旋風が巻き起こるだろうか・・・。

〈 取材・いろもとのりこ 〉

(2014年1月30日号)



 
 


 
 
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