【世界の街角から】

画家ジョージア・オキーフの世界を訪ね
サンタフェ・・・ゴースト牧場ハイキング 


〈 トロント・牧野憲治 〉

私とワイフはたまたまアリゾナ州スコッツデール(Scottsdale)に用事があり、それならついでにと、ジョージア・オキーフ美術館のある、隣のニューメキシコ州のサンタフエ (Santa Fe)まで足をのばしてみました。そこから、ジョージア・オキーフ(Georgia O’Keeffe 1887−1986)がアトリエを持ち、彼女が徘徊したゴースト牧場へ行ってハイキングもやろうということになりました。


▲アリゾナ州スコッツデールにて、砂漠のサボテン

ゴルフに興味のある方なら毎年スコッツデールで行われるPGAフェニックスオープンをテレビなどでご覧になったかもしれません。私もスコッツデールで、このようなサボテンや岩だらけのアリゾナ砂漠のゴルフに挑戦しましたが、ちょっとフェアウエーを外れる度に「ガラガラ蛇に注意」の立て札に出会い、その度ごとにぺナルテーを払って早々にフェアウエーに戻ったものです。
そのせいもあってスコアは良くありませんでした(後日、トロントのゴルフ友達いわく Good Story !)。このあたりに生息するサボテンは巨大で、高さが12−18メートルにも達しますが、成長速度は極端に遅く、最初の10年では4センチにも達しないそうです。その寿命は150−200年ということです。
アリゾナ州は、あのグランドキャニオンで有名ですが、西側はラスベガスのネバダ州とカリフォルニア州、東側は私たちの目指すサンタフェがあるニューメキシコ州に隣接し、そして南はメキシコの国になります。


▲ジョージア・オキーフ美術館の入り口(ニューメキシコ州サンタフェ)

さて、ジョージア・オキーフといえば、エロチックな印象を与える花や、砂漠で風化された動物の頭蓋骨などを描いた画家としても有名ですが、1900年代半ば頃から、彼女は光と影の画家エドワード・ホッパー(Edward Hopper)などと共に、長年にわたって絵画世界に君臨してきたフランス画壇にアキアキしたよとばかりに、ほとばしり出てきたいわゆるアメリカ流写実派(またはモダニズム)の主流の一人として活躍した画家でもあります。
アリゾナ州のフェニックス飛行場から、まずニューメキシコ州最大の都市アルバカーキ(Albuquerque)まで飛行時間約2時間、そこからレンタカーを1時間走らせて、今や世界に名の知られた芸術の街、また州首都でもあるサンタフェに到着。

私達がサンタフェの名を知ったのは、その二十数年前にサンタフェの画廊がトロントへやって来て展覧会を開き、そこで新進画家の油絵を2点買ったからです。その画廊のオーナーの女性がニューメキシコの光について熱を込めて話してくれたのを思い出し、連絡したところ、画廊は今でもサンタフェにあり、私達が買った画家の一人は亡くなったが、もう一人は健在で活躍しているということまで分かりました。


▲ジョージア・オキーフ作「山羊の頭と白のホーリーホック(Hollyhock=タチアオイの花)と小さな丘」 ブルックリン美術館提供


▲ジョージア・オキーフ作「私の夏の前庭」 ジョージア・オキーフ美術館提供

まず、サンタフェではトロントへ来た彼女の画廊を含めすべての画廊を見てやろうと、勇んで出掛けましたが、これがなかなかの重労働であることが分かりました。画廊が集中しているのはキャニオン・ロード(Canyon Road)ですが、ざっと100軒も在るので、次第に取捨選択するようなりました。それでも終日がかりになりました。
興味を持った作品、刺激を受けた作品、才能に感嘆した作品など幾多ありましたが、これだけ大量に見ると、次第に感覚がまひして鑑賞能力が低下し、ふと、この膨大な量の作品がどの程度売れるのだろうかなどと余計なことを心配したりしました。
近頃、経営業などで使われるオプチマイゼーション(Optimization)の見方でいえば、画廊見学は10軒くらいが限度というところでしょう。私たちがトロントで買った絵の画家は、作風がかなり変わっていてちょっと抵抗を感じましたが、値段が格段に上がっていたのには喜びました。

ジョージア・オキーフ美術館はさいわい離れた静かな所にあり、また彼女の絵は画集などで知っていたのでゆっくり原画を楽しむことが出来ました。ここにある彼女の作品は、油絵、水彩画、木炭、パステルなど約1,000点。またホッパー、ベントンなど同時代の画家の作品も展示されていて見ごたえのある美術館です。


▲ゴースト牧場のチムニーロック(煙突岩)


▲連なる崖(がけ)=(ゴースト牧場)

次に、サンタフェから車で1時間ぐらい走って、目指すゴースト牧場のあるアビキュー村(Abiquiu)に到着しました。ゴースト牧場とは実際には2万1,000エーカー(85平方キロ)もある谷間全体を指します。長い歴史を持ち、1700年代にはスペイン人が所有していたそうですが、この名はスペインの民話にある「魔女たちの牧場」(The Ranch of the Witches)から来たということです。
ウィスコンシン州出身のオキーフは1930年代にここの自然に魅せられて住みつき、アトリエを構えて多くの風景、花、また風化した動物の骨、頭蓋骨などを描きました。彼女友人にいわく「ここは空もちがう、空気もちがう、風もちがう。しかしあまり人には知らせないで」。


▲チムニーロック(煙突岩)山の頂上から見下ろす(ゴースト牧場)


▲ボックスキャニオンのハイキングルート(ゴースト牧場)


▲ハイキング中の筆者・牧野憲治夫妻(ゴースト牧場)


▲ボックスキャニオン(ゴースト牧場)


▲ボックスキャニオン、ハイキングルートの岩場(ゴースト牧場)

オキーフも歩き回ったと思われる山道が、今は三つのハイキングルートになっており、それぞれ 、キッチンメサ(Kitchen Mesa)、ボックスキャニオン(Box Canyon)、チムニーロック(Chimney Rock)と名付けられています。いずれも急勾配の山道や岩場などがありますが、難しくなく、いずれも3時間以内のハイクです。
そして期待どおり、ニューメキシコ砂漠の光をあびて見事にそびえたつ岩壁の色彩、広大に展開する谷間、これも広大な空と雲の変化など十分に味わうことが出来ました。しかしこの光と空気を絵にするには写真からでは難しいと思いました。〈終わり〉

(2014年3月13日号)           

 



 
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