良心的グルーマーとして顧客の信頼が厚い
「60 CARTIER DOG GROOMING」
マリー・レイ・ジュストさん


トロント郊外、リッチモンドヒル市の自宅で2005年から「60 CARTIER DOG GROOMING」を経営しているマリー・レイ・ジュスト(Marie Ray Giusto)さん。電話で話したとき流ちょうな日本語だったので、初めて会ったときは一瞬、驚いてしまった。しかし、生い立ちを聞けばなるほど・・・。


▲お店の表にある犬の彫刻と赤い番地の看板が目印

日本人の母とイタリア系アメリカ人の父との間に1962年ボストンに生まれ、父親の仕事の関係で小・中・高校は日本とアメリカを行ったり来たりした。というわけで日本語と英語のバイリンガルに。ボストンカレッジを卒業後、日本でブライダルショーや撮影のモデルをアルバイトでやっていた。25歳の時、宝石鑑定士の日本人男性と結婚。ふたりでビジネスを立ち上げ、マリーさん自身も宝石鑑定士の資格を取る。


▲マリーさんと愛犬のソニア(トイプードルのメス、14歳)

一転、グルーマーの道へ

「結婚当時、グレートピレニーズ・マウンテンドッグという大型犬の一種を飼っていまして、グルーミングに出すと当時で3万円くらいかかったので、なんとかせめてシャンプーくらい自分でできないものかと経験しましたが、その時はグルーマーになるなんて考えてもいなかったです」とマリーさん。

「その後、知り合いのグルーマーのところで10年近く気分転換の意味もあって週末手伝いをしていたのが、この道への縁かもしれません」

一人娘が10歳のとき、離婚して娘と共にハワイへ移転。そこで休暇でハワイの親戚を訪ねていたカナダ人男性とめぐり会い、再婚してトロントに住むことになった。トロントに来てすぐに約半年間グルーミングスクールに通った。
「時間つぶしのつもりで通った学校でしたが、これが具体的な独立への道となりました」

2005年、リッチモンドヒルの閑静な住宅街の一角にある自宅のベースメントを改造して、自宅の住所をそのまま付けた「60 CARTIER DOG GROOMING」の看板を掲げた。
「自宅だと子育てをしながら仕事ができますし、開店資金もそれほどかかりません」

開店にかかった費用は、床を張り替えたり、機材の購入などを含めても約5,000ドルでおさまったそうだ。ちなみにモールなどで開業する場合は5万ドルほどかかるという。

スタート時は、当然、お客ゼロだったが、フライヤーを配ってだんだんクチコミで広がり、現在では顧客数400を超えている。顧客は地元だけではなく,北はニューマーケット、南はトロントのダウンタウンからもお客が足を運んで来てくれるそうだ。

良心的値段の設定、ワンちゃんから信頼される喜びも

マリーさんのところでは,現在犬のグルーミングだけで、ネコは受けていない。サービス(仕事)の内容は、シャンプー、コンディショナー、歯磨き、爪切り&グラインディング、耳掃除、ドライ、ヘアカットなど。


▲自宅ベースメントを改造したグルーミングの仕事場


▲シャンプー用のバスタブ

標準のヘアカット値段設定は平均40から45ドル(タックス込み、チップは受け取らない)。これにはシャンプー、コンディショナー、歯磨き、爪切り&グラインディング、耳掃除が含まれている。場所にもよるが、ダウンタウンのグルーマーに比べるとかなり低価格になっている。

さらにグルーミングは One-on-One(1対1)方式で、予約を受ける時間帯は1匹のみしか受け付けていない。これは犬をケイジに入れて待たせたりするマスグルーミングのストレスを減らすためでもあるそうだ。


▲おとなしくマリーさんにトリミングしてもらうソニア

「基本的に、犬は体をあちこち触られて、1時間もテーブルに立たされているのは苦痛です。初めて来たときはいやがったことを、2回目、3回目とだんだん私の作業をまかせてくれるようになってきたときは、小躍りするくらいうれしいです。それだけでも感謝です。ワンちゃんとの信頼関係ができてきているっていうのが仕事の喜びですね」

日本とカナダのグルーミング事情のちがい

日本ではジャパンケンネルクラブの認定校で2年学んで、さらにショーグルームを目指すなら、それから1年以上のコースを受けることになっている。それだけ日本のトリマーはハサミの基礎力もあり技術もきわめて高いのが普通なのだそうだ。しかし、新人は修業期間があり、花のトリミングデビューまでかなりの期間がかかる。「その上、1匹に3時間かけて当たり前なので、1日に4匹できればすごいとされるくらいです」。かなり厳しい仕事のようだ。

では、カナダではどのようにしてグルーマーになれるのだろうか。
「カナダでは政府が認定したグルーミングスクールで約20週学んでサーティフィケート(資格証明書)をとってグルーマーになる方法と、どこかのサロンに見習いとして雇ってもらいながら(あるいはボランティアをしながら)、先輩たちからグルーミングを教えてもらうこともできます。ほぼ完ぺきにコミッション制なので(平均50%)1日に多くこなさないと収入が得られないことから、短時間で多く数を仕上げる工夫が進んでいます」

「そのために、ハサミで丁寧に仕上げる日本のトリミングより技術は断然劣りますが、1匹にかける時間が短い分、犬への負担は確実に減り(1匹にかける時間は平均1時間半)、1日に平均5〜8匹仕上げます」


▲サーテフィケートとかわいい犬のグッズ

▲時計にもワンちゃんが・・・

▲ワンちゃん図柄のクッション


ただ今グルーマーを募集中

目下のところ、マリーさんのところでは顧客が増え、予約を取るのに平日予約で1〜2週間、週末予約で1カ月待ちの状態。現在、パートタイムのグルーマーに手伝ってもらっているが、それでも手が足りない。待ちを減らすため、さらにサーティフィケートを持っているグルーマー経験者を募集している。

「私のサロンでの研修がみっちり3カ月間必要になりますが、そのあとは、その方の状況が許せば、その方の自宅で独立していただいても結構ですし(設備的にプロ仕様であればですが)、それが無理なら90%コミッションで私のサロンでそのまま継続してもらってもかまいません。独立されるなら、ここでの新規を引き継いでいただける方に限ります。客を取った取られるという観念では仕事をしていませんので、どんどん独立してくださって結構です」

「大切なのは、私のサロンのポリシーを多くのグルーマーが引き継いで、犬、飼い主、グルーマーが3者ともハッピーになることが私の喜びです」と語る。

60 CARTIER DOG GROOMING
60 Cartier Crescent, Richmond Hill ON L4C 2N4
905-237-0977

www.60cartierdog.com

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【取材を終えて】

犬は本能的に人が犬好きか嫌いか分かるらしい。マリーさんはいかにも犬から好かれそうな雰囲気があふれている。「小さい時は日本で“あいの子“って言われ、いじめられたこともありました。最初は“あいの子”って何だろうと思いましたけどね」と、苦笑する。いろいろ苦労もあっただろうが、持ち前の明るさで我が道を突き進むパワーを感じた。「娘がこの4月から東京の武蔵野美術大学に入学したんですよ」と話すマリーさんの笑顔が印象的だった。

〈取材・いろもとのりこ〉

(2014年4月17日号)



 



 
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