【展覧会&インタビュー】

中薗清香&裕美さん母娘
「押し絵・ちぎり絵展」トロントで開催
デモンストレーション通じて真髄を聞く


日本で半世紀以上、押し絵に携わっている中薗清香(なかぞの・きよか)さんの「押し絵・ちぎり絵展」がトロント在住の長女、裕美(ひろみ)さんも加わって5月3日(土)から11(日)まで、指圧・ヒーリングセンター「タオサンガ」(375 Jane Street, Toronto 416-925-7575)で開催されている。今回は「押し絵」20数点のほか、木目込み人形、ちぎり絵、カード類などが展示されている。


▲タオサンガでの「押し絵展」会場風景


▲中薗清香さん。とても80歳には見えない元気はつらつ


▲デモンストレーションで人形の髪の部分を作る

5月3日のオープニングの日には清香さんのワークショップが行われ、多くの人が細かい手作業の一つ一つに見入っていた。清香さんと裕美さんに押し絵とのかかわり合いや真髄をうかがった。

この道51年、清香さんの「押し絵人生」

清香さんは福岡県に生まれ、結婚して裕美さんを出産後、ご主人の仕事の関係で大阪府茨木市に移転。
「知らない土地で地域とのかかわり合いや何か気をまぎらわせることがあったらなあ、と思っていたとき、近所の方が『押し絵・ちぎり絵』をやっていて、そこを紹介してくれたのです」

それがきっかけで、この世界にどっぷりのめり込むことに。習い始めて2年後の1965年に「関西姿押し絵免状」を取得。1972年から95年まで師匠として指導に当たる。

その間、茨木市内を中心に清香さんが教授している教室の生徒たちの作品も含め、展覧会を4回開催している。


▲押し絵に使う道具類

そもそも「押し絵」とはどんなものなのだろうか?
布や和紙で絵を描くレリーフの細工絵で、人物や生物などを題材にしたものが多い。
その歴史について清香さんはこう語る。
「押し絵は平安時代(700年〜1100年頃)、びょうぶやふすまに施す張り絵から発した技法だといわれています。江戸時代の文化・文政(1804〜30年)に入って京都・大阪など上方の庶民に愛された人形浄瑠璃や歌舞伎役者、美人、相撲などを題材にした押し絵羽子板として流行しました。これが今でも日本の風物詩として、お正月の絵羽子板、ひな人形、節句などの工芸品が作られ、親しまれているのです」


▲作品展から「町娘」


▲「通りゃんせ」


▲「冥途の飛脚」より「梅川忠兵衛」

清香さんに「押し絵」の醍醐味をうかがうと、「完成したときの達成感が何ともいえない喜びです。特に顔がよくできたときはうれしいですね。顔のなかでも一番難しいのが目を入れる作業です。目の入れ方によって出来上がりがぜんぜん違ってくるのです。その目がうまく描けたときは本当にうれしいです」と、目を細める。


▲「桃太郎」


▲ちぎり絵。和紙をちぎった自然のぎざぎざに趣がある

当年80歳の清香さん。押し絵作りは、立ち作業が多いにもかかわらず、制作に打ち込む姿はとてもそのお年には見えない。毎年トロントを訪れるという元気はつらつの清香さんのパワーには、刺激を受ける人が多いにちがいない。

子供のころから「押し絵」と共に育った裕美さん

福岡生まれの裕美さんは、茨木市で育ち、神戸の夙川(しゅくがわ)学院短期大学美術科ビジュアルデザイン科を卒業、グンゼテキスタイル事業部などのデザイナーとして活躍。その後、フリーランスデザイナーをしているときに美術館を訪ねる目的で5カ月ほどヨーロッパを一人旅した。そのときに現在のご主人、フランス人のステファン・マルシニックさんと知り合い、結婚してトロントに移住。22歳の長男ケビンさんと18歳の長女カレンさんがいる。


▲木目込み人形(左は裕美さん、右はカレンさんの作品)

「押し絵は私が物心ついたときから母がやっていましたから、私も小さい時から見よう見まねで習っていました。初めて作品を作ったのは、12歳のとき、お友達の誕生プレゼントに制作しました」
そういえば、長女のカレンさんも押し絵や木目込み人形を制作している。母娘孫の3代にわたって人形づくりファミリーとなる。


▲ファミリー揃って、(左から)ケビンさん、裕美さん、中薗清香さん、カレンさん,ステファン・マルシニックさん

また、裕美さんはフランスでフランス料理も学んだことから、6〜7年前からトロントの自宅でフランス料理のクラスを開いている。月に1回のクラスで、生徒は1回5〜6人。5クラスを受け持っている。

「押し絵・ちぎり絵」のほうは、2005年にトロント日系文化会館(JCCC)で展覧会を開催したことがあるが、現在特に決まったクラスを持っているわけではなく、希望者があれば教えるという形だそうだ。

「将来は料理と押し絵を教えるスタジオを持つことができれば・・・と願っています」と、夢がふくらむ裕美さん。

連絡先:hiromiartisan@hotmail.com

〈取材・いろもとのりこ〉

(2014年5月8日号)



 



 
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