カフェ、ビストロ、食料品店、各国総菜屋・・・
パリの胃袋「モントルグイユ街」


〈 リポート・いろもとのりこ 〉

かつてパリの中央市場「Les Halles」(レ・アール=東京の築地市場にあたる)から北方面につながるモントルグイユ街(rue Montorgueil)は今でも多くのカフェ、ビストロ、あらゆる食料品店、各国お惣菜屋がひしめきあって、「パリの胃袋街」とも呼ばれている。


▲人、人、人でにぎわうモントルグイユ街(通りの北側から撮影。向こうにレ・アール駅の改造工事中のクレーンが見える)


▲カフェレストランも並ぶモントルグイユ街。レ・アール駅側から見た風景 

歴史とともに変革するレ・アール(中央市場)

中央市場「レ・アール」は12世紀に造られ、パリ市民に親しまれていた。その後、ナポレオン時代の1866年に鋳鉄によって建て替えられ、時のパリ市長オスマン氏のいわゆるパリ都市改造の一環として建築された。当時としては斬新なデザインで、ガラス張りの地上2階、地下1階の大規模な市場だった。

その後、レ・アールは100年以上もたって、人口の増加や交通の混雑などから1969年にパリの南、オルリー空港の近く、ランジス村に移転した。その広さは235ヘクタール(東京ドームの80倍)という。移転したあともレ・アールは数年間、新しい建物が立つまでは細々ではあるが肉や魚の卸しや小売り店が営業をしていた。ちょうどそのころ、筆者はパリに住んでいた。

かつての市場跡は、フォーラム・デ・アールと呼ばれて、遊歩道、ショッピングセンターを中心に5本のメトロ(地下鉄)や郊外電車(RER)が入る交通の要所としても重要な場所となっている。しかし、この建物は複雑で、この地を熟知している人以外はレ・アールへのアクセスや出口をさがすのが大変、と評判がよくない。

そこで、2011年から「レ・アール大整備計画」が行われ、現在も進行中である。完成にはまだ数年かかるようだが、今度はすっきりわかりやすいフォーラムができ上がるか楽しみである。

パリの古い歴史を持つマレ地区に隣接「モントルグイユ街」

レ・アール(中央市場)が移転して40年以上になるというのに、レ・アール駅の前にある古いサント・ユスタッシュ教会(St. Eustache)の東側から北へのびているモントルグイユ通りは相変わらず「食」を求めてくる人でにぎわっている。この通りのすぐ近くに古い歴史を持ち、今は若い人たちの人気スポットとなっている「マレ地区」(Marais)がある。


▲訪れた5月半ばは甘いいちごの真っ盛り


▲創業170年以上の老舗レストラン「L'ESCARGOT」


▲魚屋。ここでマグロを買って刺し身にしていただいた

マレ地区は今でも中世の雰囲気を持つ建物が残っており、狭い石畳の迷路のような道路はヨーロッパの地方の旧市街を思わせる。大小のミュージアムやオリジナル・ブティック、ギャラリーなどが多く存在する。さらにかつてパリで力を発揮していたユダヤ人居住地区でもあり、シナゴグ(ユダヤ教会)もある。

エリザベス女王が立ち寄り人気も値段も沸騰「ストレー」


▲ケーキ屋のような寿司屋らしからぬ寿司屋も一応、通りにある


▲ドラジェ(アーモンドの砂糖がけ)のパッケージがかわいいチョコレート屋


▲テイクアウト専門のインド料理店。カレーはどこでも人気

モントルグイユ街にはカフェ、ビストロ、レストラン、ワイン専門店、チーズ専門店、野菜・肉・魚屋、パン屋、パティスリー(お菓子屋)、チョコレート専門店、フランス・イタリア・ギリシャ・中国・インドなどの総菜屋、もちろん寿司屋も2軒ある。それほど長くないこの通りに小さなスーパーマーケットは3軒もある。


▲パリで最古のお菓子屋「ストレー」


▲「ストレー」の店頭ではエリザベス英女王と店主が写った絵はがきが売られている


▲「ストレー」のケーキ類

この通りのなかでもっとも有名になったのが、パリ最古のお菓子屋といわれる「ストレー」(STOHRER、創業1730年 )である。間口は小さな普通の店だが、イギリスのエリザベス女王が立ち寄ったことでいっそう名前が知られるようになった。そのときの写真を絵ハガキにして店頭で売っているところは,日本も顔負けの商魂である。
それだけこの地区も今では観光化したのだろう。商品のケーキ類は同じ通りのお菓子屋の1.5〜2倍もする。また、今ではお菓子類だけでなく、お総菜や料理のケータリングなども手がけている。

実際に買い物をしなくても,歩いて見てまわるだけでも楽しい「モントルグイユ街」。決して高級レストランはないが、庶民的で親しみのわく店が並んでいる。お腹がすいたら、食べたい物はなんでもある、という通りである。


▲モントルグイユ通りから1本西のモンマルトル通りにあるパン屋「Regis Colin レジス・コラン」。賞を取って一躍人気になった(中央でバゲットを持っているのは筆者)

【取材を終えて】
筆者は今回、5月9日から16日まで1週間、モントルグイユ通りから一歩入ったところにアパートを借りて住んだ。最初はあのにぎわいを想像して、うるさいのではないかと心配したが、一歩入ると、うそのように静かだった。到着して最初にご紹介した写真の魚屋で買ったのは新鮮なマグロ。持参したワサビとしょう油、ワインでお刺し身を味わった。

(2014年6月5日号)



 



 
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