【和食セミナー】

日本映画祭「武士の献立」上映にちなんで
懐石遊膳橋本で「一汁三菜」再現&セミナー


今年も6月12日(木)からトロント日系文化会館(JCCC)で「トロント日本映画祭」が開催される。オープニングは朝原雄三監督の「武士の献立」を上映。昨年、ユネスコ文化世界遺産に「和食」が認定されたことから世界中で「和食」ブームが起きている。そういう意味でもこの映画はオープニングにふさわしいのだろう。




「武士の献立」の舞台は、料理上手の春(上戸彩)が嫁いだ先は加賀藩に代々つかえ、料理をまかなう包丁侍の家。しかし、夫(高良健吾)は料理が大の苦手。そこで春は夫に必死で料理の指南を始める。料理を通して難局を乗り越える家族の絆(きずな)を描いた話題の映画である。

トロント日本映画祭では各映画にスポンサーがつくことになっているが、「武士の献立」は、JCCC内にある「懐石遊膳橋本」がスポンサーとなった。そこで、オーナーシェフの橋本正樹さんは「この機会により多くの方に和食の本来の姿を知ってほしい」と同映画を研究し、映画で作られている料理を一部再現、上映前の6月8日、店内でセミナーを行った。

まず「懐石料理の背景」、つまり和食の歴史を橋本さんの長男・昌幸さん、次男・圭(けい)さんの2人が分かりやすく、簡潔に日本語と英語で解説してくれた(日英2カ国語で解説されたプリントが出席者に配られた)。

■京料理は公家から、本膳料理は武士から・・・

和食が「饗応膳」として公家のもてなしの食事作法、形式が始まったのは平安時代(794〜1185年)である(ヨーロッパではパリのノートルダム寺院の建築が1163年に着工した)。

鎌倉時代(1185〜1336年)に入ると、権力が公家から武家に移り、料理は質素で素朴なものになり、仏教精神の精進料理が発達した。

室町時代(1338〜1573年)には武士の幕府政権が京都に移ったことで、公家形式の料理が復活して、料理技術や食材の質が向上した。武士の礼法とともにさまざまな形式や流派ができ、正式な饗応料理としての献立「本膳料理」が確立(ヨーロッパでは1338年英仏戦争が始まる)。

安土桃山時代(1575〜1603年)に入ると、外国の文化が入り日本料理の技法にも取り入れられた。さらに「豪華さ」と「わびさび」を同時に兼ね備えた文化が生まれた。また、茶道の発達により、「懐石」「温石(おんじゃく)」という言葉が生まれた。

江戸時代(1603〜1868年)は町人文化が盛んになり、贅(ぜい)を尽くしたさまざまな文化が発達した。武士から生まれた「本膳料理」も内容や膳の数が発達し、さまざまな料理形式が生まれ、料理茶屋の普及によって「会席料理」が発達した(1608年、フランスがカナダ・ケベックを建設)。


▲一汁三菜の献立膳

明治(1868年〜)、大正、昭和と時代が移り、宴会を主体とした「会席料理」、茶事を主体とした「懐石料理」が確立された。ともに「一汁三菜」が基本で、この形式が和食の基本となり、饗応料理、本膳料理の形式を背景として現在の懐石料理に受け継がれている。

■「一汁三菜」を再現、試食会

セミナー当日、橋本さんの手による「一汁三菜」がもてなされた。この中の一部は、映画「武士の献立」で作られた料理だそうだ。内容を紹介すると・・・

▲清まし仕立て(枝豆玉子豆腐・三つ葉・酢橘) ▲お菜(鮎の砧巻き・里芋寒天寄せ)
▲焼物(鱒西京漬け・花ゆりねの黄身酢) ▲煮物(鳥冶部煮・金沢産すだれ麩・南瓜小倉煮・隠元豆)


◎汁──清まし仕立て(枝豆玉子豆腐・三つ葉・酢橘)
◎御飯──白御飯・ゆかり
◎お菜──鮎ときゅうり、卵薄焼きの砧巻き・里芋寒天寄せ
◎焼物──鱒西京漬け・花ゆりねの黄身酢
◎煮物──鳥冶部煮・金沢産すだれ麩・南瓜小倉煮・隠元豆

橋本さんの話によると、「平安時代の味付けは大変シンプルで塩と酢くらいしかありませんでした。江戸の中期になると、みそを作ったことから、しょう油ができ、味つけに変化が出てきたのです」

出しに関しては、「京都は昔は昆布出しだけでしたが、東京が鰹出しを使っていたことから、鰹出しも取り入れるようになりました。しかし、加賀料理は昆布出しだけで作ります」と。

また、「懐石料理」の言葉の由来を「お坊さんがお腹のすいたのを補うために石を温めて、懐(ふところ)に入れて空腹をしのいだことからつけたそうです」と、興味深い話をしてくれた。
そのこともあって、「懐石料理」は腹八分をモットーにしているという。もっとも、「懐石料理」という名前が一般化したのは明治以降100年くらい前だというから、和食の歴史から見るとそれほど古くはないそうだ。

今回のセミナーで今まで知らなかった和食についての知識を得ることができ、繊細かつ美味な料理をいただいて心豊かな気分になった。


▲橋本正樹さん(写真中央)が手書きした献立を背景に、右は長男・昌幸さん、左は次男・圭(けい)さん

「懐石遊膳橋本」では、今後も「一汁三菜」のセミナーを続けて行く予定。参加希望者は下記へ問い合わせを。

Tel : 905-670-5559 / 416-444-7100

www.kaiseki.ca

〈取材・いろもとのりこ〉

(2014年6月12日号)



 
 


 
 
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