太陽と白壁の家、フラメンコ、オリーブ・・・
スペイン・アンダルシア地方を行く (1)
歴史と漁港の街、マラガ(Malaga)


〈リポート・いろもとのりこ〉

スペインの最南部、アンダルシア地方は太陽の光がさんさんとそそぐいかにも明るいイメージの土地だ。日本の四国より少し広いくらいのこの地域は、地中海に面した温暖な気候、歴史にすっぽり包まれ、年中雪をかぶっているシエラネバダ山脈などが連なるなど、実にバラエティーに富んでいる。


▲アンダルシアの地図


アンダルシア地方の一番の特色は、イスラム教とキリスト教が入り混じった独特の文化を織りなしていることだろう。8世紀初めから約800年間もイスラム教徒によって支配されていたのだから当然のこと。しかし、15世紀後半になってキリスト教の支配になっても、彼らはそれまでのイスラム文化を壊さず、維持した。後世に素晴らしい文化を残したことになり、感謝の念を抱いている人は多いにちがいない。

フラメンコ発祥の地でもあり、白壁の家並み、オリーブの畑、シェリー酒・・・と、アンダルシアはスペインの中でも最もスペインらしいところのような気がする。今年、5月半ばから約10日間、この地方をレンタカーで回ってきた。今週から6回にわたって、シリーズで紹介します。まずは出発点のマラガから。

■歴史と海の香りいっぱいの街、マラガ

日本人にとって、「マラガ」がどこにあるか知っている人は案外少ない。しかし、「ラ・マラゲーニャ」の歌を知っている人は多いのではないだろうか。そう、「ラ・マラゲーニャ」は、「マラガの娘」の意味で、マラガで生まれた曲といわれる。そのせいか、旧市街ダウンタウンのあちこちで歌やギターのメロディーがライブで流れている。もちろん、フラメンコ風の曲もある。


▲マラガのレストラン街で「ラ・マラゲーニャ」を歌うミュージシャン

マラガはもともとフェニキア人によって築かれ、その後、ローマ人やアラブ人に支配された古い歴史のある町である。その跡があちらこちらに残っていて、歴史建造物で見るべきところも多い。人口約56万人、スペインでは大都市である。


▲マラガのエル・パロ・ビーチでおなじみ、イワシの塩焼き。小舟に海岸の砂を詰め、木の切り株を燃やして魚を焼く


▲イカやアジもおいしそう


▲イワシのグリルは、なぜか1皿11尾

そして、何と言っても地中海に面した街であり、魚の集荷地としても名高い。スペイン旅行を計画した昨年春ごろ、ちょうどNHKで「スペイン語講座」が始まり,その番組でマラガの海岸のレストランで焼いた魚介類をリポーターが食べるシーンがあった。小ぶりのイワシをおいしそうに食べていたのが印象的で「マラガに行ったらイワシを食べるぞ!」というのがひとつの目的になっていた。

マラガ旧市街の中心地、マリーナ広場のバス停で11番のバスに乗って東へ20分くらい行くとエル・パロ・ビーチ(Playa de El Palo)に到着。海に面して焼き魚を食べさせてくれる店がずらり並んでいて、さながら江ノ島の海岸風だ。

小型の廃船に詰めた砂の上で木の切り株を燃やして魚を焼く。店によっては店内のグリルで焼くところもある。魚の種類はイワシ、イカ、アジ、タイ、サバなど。イワシは、なぜかどこも1皿11尾(12尾ではない)で、4〜5ユーロ(6〜8カナダドル)。思わず「安い!」。よく焼けているので、頭からしっぽまで骨ごと食べられる。「Que rico !」(ケ・リコ!=美味しい!)


▲エル・パロ・ビーチ

ビーチはところどころ湾になっていて、白砂の遠浅なので子供たちが遊ぶにはもってこい。釣りを楽しんでいる人もいる。ここは観光地というより、地元や近郊の人たちの憩いの場所といった感じ。海岸にせまる山の手は色とりどりの花に囲まれた高級住宅地になっていて、きれいな家が建ち並んでいる。

■歴史の重みを感じさせられる旧市街

マラガの旧市街地はカテドラルを中心に徒歩10分くらいのところに見どころが集中しているので便利。ホテルもその近辺に多い。


▲荘厳なカテドラルの正面


▲カテドラルのパイプオルガン。同じ物が向かい合ってもう1台ある


▲夕日に映えるカテドラルの鐘楼

まずはカテドラル。16世紀から18世紀に建てられたゴシック、ルネッサンス、バロックなどさまざまな様式の荘厳な建物である。特に街の中心部にあるカテドラルには天井まで届く2つの壮大なパイプオルガンが置かれ、その演奏はクリスチャンでなくとも心にひびくものであった。


▲ピカソ美術館の入り口。館内は撮影禁止です

カテドラルのすぐ後方にマラガ生まれのピカソの作品を展示している「ピカソ美術館」がある。建物は16世紀のブエナ・ビスタ宮殿を改造したもの。絵のほかに陶器や彫刻など204点が常設されている。ピカソ夫人のオルガや息子パウロの肖像画もあり、興味深い作品がたくさん収められている。
www.museopicassomalaga.org


▲イスラム時代の宮殿「アルカサバ」の入り口


▲アルハンブラ宮殿をほうふつさせる「アルカサバ」の中庭


▲ローマ時代に建設された野外円形劇場の跡

ピカソ美術館から歩いて4〜5分のところにイスラム時代の要塞風宮殿「アルカサバ」とローマ時代の野外劇場の遺跡がある。幾何学模様のタイルや噴水のある庭などミニ・アルハンブラといった感じ。城壁外のローマ劇場は、タイムスリップしそうなくらい原型をとどめている。小高い丘に建てられたこの建物は狭い階段を上りながら散策。眼下をながめるとマラガの街や港の景色が美しい。
アルカサバの先にもっと高い「ヒブラルファロ城」がある。ここは重要な砦(とりで)でもあった。現在はパラドール(半官半民経営のホテル)になっている。レストランだけ利用することもできる。


▲アルカサバから山の頂上にある「ヒブルファロ城」が見える

このほか、サンティアゴ教会、ピカソの生家、マラガ美術館、人形の家博物館、民族博物館など、マラガは見どころいっぱいである。

■よく食べ、よく飲み、音楽を楽しむマラガの人々

カテドラルの近辺にはバル(Bar=タパスバー)やレストランがひしめきあって、週末は歩行者天国となるブティック街などがあり、陽気なマラガ人の社交の場である。彼らはよく食べ、よく飲み、歌い、踊る。


▲マラガのコミュニティー祭りで踊る子供たち

旧市街と海岸の間は広い公園になっており、ヤシの並木や花々が美しい。海岸通りの散歩道にもレストランが並んでいる。その公園の中に野外劇場があって、ちょうどコミュニティーのお祭りをやっていた。各地域から選ばれた素人の歌手や踊り手が楽しそうにパフォーマンスを繰り広げていた。多分、知り合いが多いのだろう、観客も一緒に踊り出す光景がよく見られた。まさにマラガ人気質を象徴しているようだった。


▲イスラム風建物のマラガの中央市場

公園から西へ10分ほど歩いたマラガの中央に流れるグアダルメディナ川の近くに市場「Mercado Central de Atarazanas」(アタラサナス中央市場)がある。イスラム時代は造船所だったところで、14世紀の中央門が残っている。


▲鯛(たい)専門店


▲こちらは貝の専門店


▲白魚がどっさり


▲エビ専門店

中に入ると、魚介類専門店、肉類専門店、野菜類、その他の店がきちんと分けられていて清潔感があふれている。さすが魚の集散地。タイ類、エビ類、イワシ・アジ、貝類などそれぞれ専門に扱っている店が軒を並べている。オリーブの種類の多いのにも驚く。マラガ市民の胃袋を支える市場だけあって、大にぎわい。
マラガには行きと帰り合計3泊した。時計周りにアンダルシア地方の旅は、ジブラルタル海峡を望む英領ジブラルタルへ・・・。(来週号につづく)

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【取材を終えて】
これまでにメキシコ、ドミニカ共和国、コスタリカ、ペルーなど中南米には10数回訪れているが、いつも感じるのは「人はいいが、時間にルーズ」。なにか頼むと「シンコ・ミヌートス(5分待って)」と言われる。この5分がくせもので、15 分だったり、30分だったり・・・。聞くと、この言葉は5分という意味ではなく、単に「あとで」という意味らしい。スペインも同じだろうと覚悟していたら、意外や意外、時間にキッチリ正確なのだ。「ここからその場所まで歩いて4分」とか、「8分」とか、ぴったりの時間を言ってくれる。交通機関や公の建物の開場時間も秒刻みで正確。先入観で決めつけてはいけないと反省した。

(2014年7月3日号)



 



 
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