【世界の街角から】

太陽と白い家並み、フラメンコ、オリーブ・・・
スペイン・アンダルシア地方を行く (2)
ジブラルタル海峡に突き出た英領ジブラルタル


〈 リポート・いろもとのりこ 〉

スペイン・アンダルシア地方のマラガから約120キロ西南へ行ったところにジブラルタル海峡がある。そこに突き出た小さな半島が英領ジブラルタル(Gibraltar)だ。人口3万人足らずの小さな町だが、対岸にアフリカのモロッコをひかえ、大西洋と地中海を結ぶ海上交通の要所として、また歴史的にも重要な位置にある町である。



今回、ジブラルタルを訪れるまで、ここが英領であることを認識していなかった。歴史をひもとくと、スペインの王位継承戦争の間にイギリス軍に占領され1713年のユトレヒト条約で英領となり、今日までイギリスの統治が続いている。


▲スペイン側からジブラルタルの岩山「ターリク山」を見る


▲英領ジブラルタルに入る税関。右端は歩行者用入り口

ジブラルタルの町に入るには税関があり、パスポートが必要である。「車で行く場合、税関で並び待たされるので、車はスペイン側に駐車して行った方がいいですよ」と、レンタカーのオフィスで言われたので、その通りにした。たしかに車の通路はすごいラインナップだった。

というわけで、駐車場に車を置いて徒歩で国境の税関に。パスポートを見せてもオフィサーはおしゃべりばかりで全然見ていない。いかに形式的税関かがわかった。税関を抜けたところに市内路線バスの停留所があったので、ジブラルタルの観光ナンバー1スポット「ターリクの山(The Rock)」にのぼるロープウエー駅まで乗ることにした 。


▲バスの中で飛行機が目の前の滑走路を通過するのを待つ


▲バスの前方、遮断機の向こう側の滑走路に飛行機が着陸

バスに乗って間もなく、長時間の停車。いや、バスだけではない。ほかの車も歩行者も交通はすべて止まっている。 前方には、大きな遮断機が下がったまま。車内は暑苦しくなってきた。
聞くと、ジブラルタル空港の滑走路になっていて、そこに飛行機が着陸するので、それを待っているのだという。かなりの時間がたって、ジェット旅客機が到着、目の前をものすごいスピードで通過して行った。そのあと、こんどは離陸する飛行機が通過。だいぶ待たされて、やっと遮断機があがった。

これで交通の動きが再開されたわけだが、こんなことが一日に何度もあるのだという。それにしても、道路が滑走路を突き抜けるというユニークさには驚いた。

バスの運転手に「ロープウエー駅まで徒歩20分」と言われ、暑かったのでバスに乗ったのだが、このバスが住宅街をぐるぐる回って、おまけにロープウエー駅には直接行かず、かえって時間がかかってしまった。

ジブラルタルの街並みは古めかしく趣(おもむき)があって、英国のどこかの町を見ているような感じがした。 ここでの通貨はポンド。ユーロも使えるが、交換率は不利になっている。

■ターリク山頂から見渡すジブラルタル海峡の雄大な景色

ターリク山頂までのロープウエーは約15分おきに発着しているが、混む時はかなり並ぶようだ。標高426メートルの山頂までロープウエーの所要時間は4〜5分ほど。
展望台から望む景色は圧巻。このすぐ先にアフリカ大陸があるのだ、と思うと感慨深くなる。眼下に見下ろす港には大型クルーズ船が停泊していた。そういえば、クルーズのお客もだいぶ山頂に来ていた。


▲ターリク山頂へのロープウエー


▲ターリク山頂からジブラルタル海峡をのぞむ。海峡の対岸はアフリカ大陸のモロッコ

ジブラルタルの岬は切り立った岩山になっている。事典によると、ここは古代より「ヘラクレスの柱」として知られている。紀元前カルタゴのハンニバル将軍の侵攻、ローマ帝国を脅かしたゲルマン民族の大移動、ウマイヤ朝の支配、イギリスの植民地化など、戦略的に重要な役割を果たしてきた。

現在、海峡の北岸イベリア半島側のジブラルタルにはイギリス軍が駐屯し、南岸のモロッコの岬はスペイン領になっていて Ceuta(セウタ)という所にスペイン軍が駐屯している。イギリスとスペインが海峡を往来する船舶を南北両岸から監視しているかたちになる。

ところで、今、この海峡の海底を通り抜ける「ジブラルタル・トンネル」の工事が計画されているのだそうだ。もしヨーロッパ大陸とアフリカ大陸を結ぶこのトンネル計画が実現すると、世界史の中で画期的な出来事となるだろう。


▲山頂展望台で人待ち顔のおサルさん。眼下の港に停泊するクルーズ船が見える(右端)


▲ついに観光客の頭に・・・

ターリク山のもうひとつの名物は「おサルさんたち」。山頂のいたるところにいて、人の肩に乗ったりする。ひっかかれることもあるので気をつけるよう係員から注意された。

ターリク山の中腹にサルの住み家があり、エサを求めて人のいるところに出てくるのだそうだ。サルは9世紀にアラブ人が持ち込んだといわれている。また、「この山にサルがいる限り、イギリスの統治が続く」という言い伝えがあるとか・・・。


▲ツーリストでにぎわうメイン・ストリート

小さなジブラルタルの町の中心街メイン・ストリートは観光客でにぎわっている。フリーポートのため、免税で買い物ができるとあって、貴金属や電気製品の店に人気があるようだ。
帰りは商店街をぶらぶら歩きながら税関へ向かった。途中、出会った人から「スペインへ行くの?」と聞かれ、一瞬「えっ?」。そうです。イギリスからスペインに行くのは間違いないのです。

■大西洋に面した紀元前からの良港カディス

ジブラルタルを後にして、さらに西北へ約70キロ行くと、大西洋に面した港町カディス(Cadiz)がある。ここは、紀元前からの良港で、1492年コロンブスのアメリカ大陸発見によって、スペインの植民地経営の本拠地となった。新大陸から持ち出した産物はこの町からヨーロッパ各地へと運ばれた。

また、1805年のイギリス・スペイン戦争の時には、スペイン艦隊がネルソン提督率いるイギリス艦隊との海戦に臨むため、カディスの港からトラファルガー沖へ向けて出航したという歴史的港でもある。現在は漁業を中心にした港湾都市となっている。


▲大西洋に沈む夕日(カディスにて)

カディスの旧市街は狭い道路が交差し、教会や歴史資料館、広場に面したところにはバル(Bar=タパスバー)が軒を並べるスペインのごく一般的な街である。ただ、町の西端の海岸から眺める夕日は見事だった。ちょうど宿泊したホテルが海に面していたのでスパニッシュ・サンセットをたっぷり堪能することができた。

翌日は、アンダルシアで最大都市セビリアとカルモナへ。(次号につづく)

(2014年7月10日号)



 



 
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