【世界の街角から】

太陽と白い家並み、フラメンコ、オリーブ・・・
スペイン・アンダルシア地方を行く (3)
歴史の街「セビリア」& 古城のホテル「カルモナ」


〈リポート・いろもとのりこ〉

セビリア(Sevilla)と聞けば、すぐに思い浮かぶのはロッシーニのイタリア歌劇「セビリアの理髪師」(原作はフランス人ボーマルシェの戯曲)だろう。スペルからスペイン語風に表示すると「セビージャ」または「セビーリャ」になるようだが、日本人には「セビリア」のほうがわかりやすいので、そのように表記する。



■グアダルキビル川沿い交通の要所、セビリア

前日滞在したカディスから北へ160キロほど行くと、スペイン第4番目でアンダルシアでは一番大きい都市、セビリアに到着。人口は約70万人。グアダルキビル川沿いにあって、交通の要所として発達した。712年、アフリカ大陸からジブラルタル海峡を渡って来たイスラムのモーロ人に制服され、500年以上イスラム文化が繁栄したところである。すぐれたイスラム建築が多いのも特色だ。

13世紀半ば、キリスト教のレコンキスタがセビリアからイスラム勢力を排斥し、新たな発展をとげた。コロンブスが1492年に発見したのは、アジアのインドではなく、新大陸アメリカであった。それを証明したのは、セビリア港から出発したアメリゴ・ヴェスプッチ(イタリア人)だった。


▲スペインで最大級といわれるセビリアのカテドラル

グアダルキビル川の東側にある旧市街にカテドラルをはじめ、見どころが集中している。カテドラルはスペイン最大で、ヨーロッパでもローマのサンピエトロ寺院、ロンドンのセントポール寺院に次ぐ規模を誇っている。


▲イスラム風宮殿、アルカサル

カテドラルに隣接する「ヒラルダの塔(Giralda)」、カテドラルの前にあるイスラム時代の宮殿「アルカサル」、おなじみの歌劇「カルメン」に登場する旧タバコ工場(現在はセビリア大学)、スペイン広場、黄金の塔、民族博物館・・・などなど、歴史がいっぱい詰まった所ばかりである。

■カルモナの麦畑の丘にそびえるイスラムの城、パラドール

大都会のセビリアには泊まらず、そこから東に40キロほど行ったカルモナ(Carmona)のパラドール(Parador)に宿をとった。カルモナの町に入ると中世の街そのままで、狭い曲がりくねった石畳の道路が続く。道は極端に狭いので、車が通ると歩行者は壁にへばりつくような感じになる。もっとも街ができた中世には、今日のような車社会を想定していなかったであろうから無理もない。


▲カルモナの街並み


▲旧市街の道路はこのように大変狭い

2つ城門を通り抜けて坂道を上り、たどり着いたのはまさにイスラム風お城そのもの。要塞を目的に建てられた城だけあって、外見はどっしり頑丈そうだ。アラブの城をカスティーリャ王国の国王、ペドロ一世(在位1350〜1369)が宮殿に改装したもので、あのイサベラ女王も滞在したことがあったという。


▲カルモナの丘の上にそびえるお城のホテル「パラドール」。下は一面の麦畑

この城は日本とも関係がある。天正遣欧少年使節(1582年、九州の大友宗麟らキリシタン3大名の名代としてローマに派遣された4人の少年)や、慶長遣欧使節の支倉常長(はせくら・つねなが)一行もこの城を訪れている。支倉常長は伊達家の家臣で、伊達政宗の命によりヨーロッパ視察に出航。1615年スペインに到着した。


▲パラドール・ホテルの入り口

この歴史的に由緒あるお城は、パラドール・ホテルとして一般に開放されている。パラドールは、スペインで1928年から始まった古城を改装した観光ホテルのこと。現在、全国に94カ所あり、経営は半官半民。最近は古城の改装ばかりではなく、超モダンなパラドール・ホテルもできている。


▲天井が高いホテルのロビー


▲タイル模様が美しいホテルの中庭


▲ホテルの屋外プール

カルモナのパラドールは街の一番頂上に建てられていて、テラスから見わたすアンダルシア平原の一面麦畑のパノラマ景色は圧巻である。ホテルの中はイスラム風の内装をそのまま生かし、天井の高いロビーやレストラン、中庭、エレベーターのドアのタイル装飾まで細部にわたりイスラム文化の名残が感じられる。しかし、寝室やバスルームは改装されて使いやすくなっている。パラドールに泊まらなくても,観光名所として訪れる人は多い。


▲カルモナの旧市街にある城門


▲一般の人の住宅の玄関にも美しいタイルが・・・

カルモナの町はパラドール以外にサンペドロ教会、元宮殿を改装した博物館、市場、手作り陶器の店などがある。小さな町なので散歩しながらひとまわりしても数時間もあれば十分。狭い道路に建てられた民家の入り口のタイルがそれぞれちがっていて、美しさに見とれてしまうほど。そこにもイスラム文化を継続している空気を感じた。

次はカルモナから約100キロ東へ行ったコルドバ王国の首都だったコルドバを紹介します。(次号につづく)

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【取材を終えて】
出発前にカルモナのパラドールをウェブサイトで見ると、いかにも古城という感じで、インターネットはうまくつながらないのでは・・・と半分あきらめていた。ところが旅行中に滞在したホテルの中で一番スムーズにつながったので、びっくりしてしまった。というわけで、その週の「e-nikka」(5月22日号)は、ほとんどカルモナのパラドールで校正を済ませ、次の宿泊地グラナダでアップすることができた。何事もイメージだけで決めるのはいけないと、つくづく感じた。

(2014年7月17日号)



 



 
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