【ひと】

味と目で楽しむトータル料理を提供・指導する
ケータリング、料理教室主宰の松井直美さん


〈 取材・いろもとのりこ 〉

2年ほど前からケータリングを、そして今年4月から体にやさしい野菜中心のメニューの料理教室を始めたトロントの松井直美さん。「作りやすい食材で目でも楽しめる料理」をモットーに、料理教室の評判は回を重ねるごとに評判が上がっている。


▲料理の盛りつけをする松井直美さん

実際に料理教室を訪ね、生徒さんたちと作り上げる料理の数々を見学し、試食させていただいた。料理のアイデアと味もさることながら、「あっ!」と驚くのは、テーブルセッティングの美しさである。「感動させることがうれしい」と話す直美さんの心配りがすみずみまで行き渡っている。


▲料理もさることながらテーブルセッティングも素晴らしい

まずは7月の料理教室のテーマ「インド風ベジタリアン料理」を紹介していただき、直美さんの料理に対する「こだわり」、そしてその「こだわり」のいきさつをうかがってみた。

■インド風ベジタリアン料理、野菜だけでも立派なコース料理に


今年4月から毎月1回(2日間、3クラス)の料理教室を開催して来た直美さん。メニューは手軽にできて体にやさしい野菜中心。7月は「インド風ベジタリアン料理」だった。1回の生徒の人数は6名。


▲ナンの生地を伸ばす直美さん


▲生徒さんたちも生地を伸ばしてナン作りを

教室の場所は、オーバートン恵(めぐみ)さんが経営する「和=なごみ」。以前、直美さんがケータリングをしたことで「料理教室」の話がとんとん拍子に進んだそうだ。


▲レント豆のカレー


▲ワイルドライス


▲焼き上がったナン


▲夏のビーンサラダ


▲デザートのココナツミルクプリン

「インド風ベジタリアン料理」のメニューは、
◎マンゴラッシー
◎レッドレンティルインド風カレー
◎ワイルドライス、
◎ナン(インドのパン)
◎夏のビーンサラダ
◎ココナツミルクプリン(ローズウォーター風味)
──以上6品である。

いずれも野菜ばかりだが、けっこうボリュームがあって、味のおいしさも伴い満足感で満たされた。

■12キロのダイエットに成功! 自分の体験をシェアできれば・・・

直美さんは1969年福岡県生まれ、熊本県育ち。熊本学園短期大学卒業後、証券会社や市役所に勤務。その後、オーストラリアに10カ月間留学したあと、議員秘書なども経験した。

1998年カナダへ。「日本で知り合ったカナダ人と日本で入籍して、カナダに住む彼の家族に挨拶に行くためトロントへ来ました。2〜3年で日本に戻るつもりがずっとカナダに住むことになりました」と、直美さん。

カナダではウェブの仕事や英語学校のカウンセリングやコーディネーター、営業、マーケティングなどの仕事をしていた。

これまでの経歴を見るとあまり料理には縁がない。直美さんの転機は、オークビルのオーガニックのパン教室「Jazzy Made」(クルー千春さん主宰)に通ったこと。ここで料理に目覚め、Food Handler(調理師)の資格も得た。

その後、直美さんは2児を出産(現在11歳と6歳の男子)。「2番目の子を出産したあと、産後太りに悩まされました。いろいろなダイエットに挑戦しましたがいずれも効果なし。それで食事を見直して12キロの減量に成功しました」

ベジタリアン料理に注目したのは、「フードセンシティビティーテストの結果と血液型ダイエットをフォローしていて、私の身体には野菜食を中心にしたほうが合うとわかったことと、体内のデトックスを進めるには、なるべく酵素が豊富な食事方法をしたほうが望ましいという結果が出たからです」

「また、ローフード食、食べ合わせについても勉強しましたので、これらの情報をぜひ、皆さんとシェアしたかったのが、料理教室を開いたきっかけです」
さらに「ベジタリアン料理はつまらない、美味しくない、満腹にならないという通常概念を覆したくて、野菜だけでどこまでできるか?に挑戦してみたかったのです」

しかし、今後、要望に応じてベジタリアンだけでなく、魚や肉料理もメニューに取り入れることを考えているそうだ。

■こだわりのテーブルセッティングのルーツは?

直美さんのテーブルセッティングは見る人に感動を与えるほど細かいところまでこだわっている。そのルーツはいったいどこにあるのだろう。

「私が子供のころ、同じマンションの別の階に住んでいたお料理上手のもてなし上手の叔父と叔母の家によく行きました。彼らは世界各国のきれいな器を集めていて、遊びに行くたびに凝ったお料理と素敵なテーブルセッティングで私をもてなしてくれました。今でも、その時のドキドキワクワク感を覚えています。当時『わぁ、私も大人になったら、こんな綺麗なお料理でおもてなししたいな』と。それと同時に料理を通して、人の心が癒やされることと、感動したことを覚えています」

直美さんがテーブルセッティングとフードスタイリングにこだわる原点は、彼女の子供時代の思い出にあったのだ。

■料理教室を経て広がる人の輪

料理教室に来る生徒たちとのつながり、そこから、また個人個人の世界が広がって行き、ここで得たお互いの情報も広がっていく。その楽しさも幸せにしてくれる大きな要因である。


▲料理を作ったあとは和気あいあい、おしゃべりしながら試食を楽しむ

「料理教室をやっていて一番の喜びは、皆さんの笑顔です。受講生の方が、喜んでくださることに幸せを感じます。お料理教室のモットーとしては、楽しく、和やかで、一緒に過ごす3時間が、心と身体の栄養になることを目指しています」

一方、苦労についてうかがうと、「メニュー構成です。主婦の観点から、なるべく、使い回しできる材料構成にすること、あまり手順が多すぎない作りやすいレシピにすること。そして、食物アレルギーやセンシティビティーのある生徒さんが何人もいらっしゃるので、全員が食べられるメニュー、を考えるのに時間がかかります」と。

「それと、自分のスタジオで教室を開いているのではないので、材料と、テーブルセッティングの山のような道具の持ち運びが大変です」。その苦労は見ただけで納得できる。器から材料、小物などものすごい量である。

■臨機応変なケータリングサービス

ところで、直美さんは料理教室より前に料理のケータリングサービスを行っている。「2012年のクリスマスに親戚関係のクリスマスパーティーで、アペタイザーとデザートのケータリングをしたのが、お金を頂戴する仕事として、初めてケータリングを行ったきっかけです。本格的にケータリングを始めたのは、2013年秋以降から」とのこと。

ケータリング先は、友人、知人、家族の紹介やクチコミが中心。そのほか、医療関係者のセミナーグループ、不動産エージェントの記念パーティー、会社の株主ディナー、ベビーシャワーなどがある。ケータリングの場合は、要望に応じてメニューを決めるそうだ。 つまり、ベジタリアンだけではなく、魚、肉など何でも応じる。料理の形態もエスニックから和風まで、ジャンルを問わないそうだ。

■広がる将来の夢、フードスタイリスト業界への参入

直美さんの料理にかける将来への夢は大きく広がっている。
「料理教室と連動して、Eレシピブック(インターネット料理本)の作成を考えています。ベジタリアン、ローフード、ビーガン、グルテンフリー、ラクトースフリーの食事方法も取り入れたレシピ構成です。お料理教室に興味があっても参加いただけない方に、ぜひとも情報をシェアしたいので手軽な価格でダウンロードできるEブックがいいのでは、と思っています」

また、「フードスタイリングをメインの仕事としたいので、なんとかトロントのフードスタイリング業界に参入したい、子供達への食育もやっていきたいことのひとつです。日本のフードスタイリストさんとコラボレーションで、日本でのお仕事もできればいいな、なんて勝手にどんどん夢ばかり膨らませています」

さらに、「将来的には、自分のスタジオを持って、お料理教室や完全予約制のディナーパーティーを提供できればいいなと思っています。舌だけでなく、目でも楽しめるお料理とセッティングを目指します。心と身体の栄養になり、美しくなる物、美容と健康は女性にとってテーマですので、お料理だけに特化せず、自分がいい!と感じた物はどんどん取り入れていきたいです」

最後に直美さんに人生のモットーを挙げてもらった。
「Experience, growth, contribution ・・・これが、私の生きる上での三本の指針です。これからも常に学び続け、自己成長を続けること、そして、コミュニティーに貢献すること。トロントにはいろいろな才能のある魅力的で面白い日本人の方がたくさんいらっしゃいますので、相互協力、そして発展できる環境が作れればいいなと思っています」と、結ぶ。

www.naomimatsui.com

松井直美さんへのお問い合わせは、
647-688-9602

naomi@naomimatsui.com

○   ○   ○

〈取材を終えて〉
気持ちを集中しながら料理を作り、飾り付けをしている直美さんを見ていると「本当に好きで自分自身が心から楽しんでやっているんだなあ」と感じた。だからこそ、他の人をも楽しませることができるのだろう。いろいろな器や小物を揃えるのも大変でしょうが、それも楽しみとか。「器を見て、料理を考えることも多いのですよ」と。これからどんな料理が生まれるか楽しみだ。

(2014年7月24日号)



 
 


 
 
(c)e-Nikka all rights reserved