太陽と白い家並み、フラメンコ、オリーブ・・・
スペイン・アンダルシア地方を行く (5)
イスラム文化の結晶、アルハンブラ宮殿


〈リポート・いろもとのりこ〉

アンダルシア地方でのイスラム文化の結晶ともいわれるグラナダのアルハンブラ宮殿(Alhambra=スペイン語の発音はアランブラに近い)は、グラナダ市内東部の丘の上にあり、街を見下ろすように建てられている。



グラナダは、紀元前後のローマ時代から栄え、8世紀にイスラムのモロ人が侵入した後は1492年のレコンキスタ(再征服)までイスラム教徒のイベリア半島支配の拠点となっていた。

イスラムによるグラナダ王国が建設されたのは1238年(日本では鎌倉時代)。ナスル朝の初代王、アル・アフマールは、国家の基礎を整えるため商工業の発展に力を入れた。そして経済が潤うとアルハンブラ宮殿内に王宮を建設した。その城が、目もくらむような内装の美しさで世に名高い「ナスル宮殿」である。

■細工の美しさが幻想の世界へ導く、ナスル宮殿

アルハンブラ宮殿の建設はアル・アフマール王が没した後も続き、1350年ごろ完成したと見られる。当時、城内にはモロ人貴族を中心に約2000人以上が住み、モスクや市場や住宅街が整備されていた。貴族の宮殿は7つあったそうだ。


▲ナスル宮殿のライオン宮


▲ライオン宮の中庭のライオン像。噴水は当時、水時計だったという

中でも「ナスル宮殿」は、外見は優雅ではないが、一歩中に入ると言葉を失うほどの細工の美しさが幻想の世界へと導いてくれる。そのあまりの美しさに「王は魔術を使って作ったのではないか」と思わせたほど。


▲ナスル宮殿の見事な細工


▲鍾乳石飾りの天井


▲気が遠くなるような細かい細工

しかし、この栄華は1492年に終焉(しゅうえん)を迎える。最後の王ボアブディルは、カトリックのイザベラ女王に城を明け渡し、家来と共に北アフリカへ逃げた。その後、王位継承戦争やナポレオン戦争などを経て、アルハンブラ宮殿は荒れ果ててしまった。19世紀の米国人作家、ワシントン・アービングの「アルハンブラ物語」が出版されたことで再び世界で注目をあびた。そのおかげで修復作業が進められ、一般公開がされるようになった。現在もまだ修復作業は続いている。


▲アルハンブラ宮殿からアルバイシンを望む


▲中庭に池がある「コマレス宮 」

ナスル宮殿の中には、向かい側のアラブ住民地区アルバイシンを望む「メスアール宮」や青い池が涼しげな「コマレス宮」、ライオンの像が並ぶ噴水で有名な中庭のある「ライオン宮」などがある。見事な天井の鍾乳石飾りも見逃せない。

■広大な庭園の美しさも一見に値する

アルハンブラには城外の北に位置する「ヘネラリフェ」という庭園と、城内に「パルタル」という2つの大きな庭園があり、いずれも美しい花々や木々が見る人の目を楽しませてくれる。


▲アルハンブラ宮殿の城外にある庭園「へネラリフェ」


▲シエラネバダの雪解け水を利用した噴水(ヘネラリフェ庭園)

「ヘネラリフェ」はナスル朝の夏の別荘に使われたといわる。そこにはグラナダの北にそびえるシエラネバダ山脈の雪解け水を利用した噴水が設けられていて「水の宮殿」とも呼ばれる。


▲パルタル庭園内の塔から見える宮殿

ナスル宮殿を出たところにある「パルタル庭園」はイスラム時代は貴族に住居やモスクなどが建っていたそうだ。アルバイシンを見下ろす塔があり、展望台となっている。

■アルカサバ、カルロス五世宮殿、ヘラの塔・・・

アルハンブラ宮殿の中には、このほかに戦争の要塞としての「アルカサバ」がある。宮殿内で最も古く、ローマ時代の砦(とりで)跡にモロ人が9世紀に築いたもの。アルカサバの先端に城内で一番高い物見塔の「ヘラの塔」がある。階段を上がって行くのは大変だが、頂上はグラナダ周辺が一望のもとに眺めることができて景色が素晴らしい。


▲アルハンブラ宮殿のなかでは異質な「カルロス五世宮殿」

「カルロス五世宮殿」は名前の通り、本来のイスラム王の建物ではなく、スペイン国王カルロス五世が1526年に新婚旅行でアルハンブラ宮殿に来たときに建設を決めた宮殿。この中では異質のルネッサンス様式の宮殿である。現在は博物館と美術館になっている。


▲宮殿内パラドール(ホテル)のレストランからパルタル庭園を望む


▲遠方に連なるシエラネバダ山脈。手前左は宮殿の一部

また、宮殿の敷地内にパラドール・ホテルがあり、宿泊しなくても「パルタル庭園」を望むテラス・レストランがある。ここは穴場で、あまり人が来ないので、ひと休みするのはもってこい。おすすめします。

〈アルハンブラ宮殿入場チケット入手情報〉

◎オープン期間と時間:毎日オープン(1月1日&12月25日は休み)、3~10月/午前8時30分〜午後8時、11月〜2月/午前8時30分〜午後6時

◎入場料:10ユーロ(約$15)
ナスル宮殿は、人数が制限されていて、30分ごとに300人が入場できる。そのため、入場券に時間を指定されている。チケット売り場は午前8時にオープンするが、観光シーズンはかなり行列ができて待たされるので、あらかじめインターネットで予約しておいた方がよい。支払いはクレジットカードを受け付けている。
www.alhambratickets.com

インターネット予約の場合、確認の書類はプリントして持参し、当日チケット売り場でチケットと交換してもらう。

◎見学にかかる時間:宮殿の見方、回り方にもよるが、広大な敷地に数々の建物や庭があるので、たっぷり1日とっておいたほうがよい。靴は歩きやすい運動靴をおすすめ。

次は、アンダルシア地方の旅の最後としてアルハンブラ宮殿以外のグラナダの町の紹介をします。(次号につづく)

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【取材を終えて】
アルハンブラと聞くとすぐに思い浮かべるのがギター独奏曲「アルハンブラの思い出」。あの切ない、心にしみるメロディーは一度聞くと忘れられない。あの曲は、スペインのギタリスト、フランシスコ・タレガが1896年に作曲したもの。すでに100年以上もたっているのだ。いろいろな歴史がこめられているアルハンブラを彷彿(ほうふつ)させる曲である。
お城の外見は、フランスの中世の古城のように優雅ではないが、中に入ると息をのむような感動は、どう語っても表現できそうにない。百聞は一見にしかず。

(2014年7月31日号)



 



 
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