キューバのカマグエイ州(前編)
小学校や農家を訪問、人々の生活にふれる 


〈 オンタリオ州ロンドン市 ウィルソン夏子 〉

「またキューバなの?」
旅行に出かけるなら、まだ行ったことがない国に行きたい、と私は思ったが、夫は賛成しない。
「何度も行ったことがある国に行けば行くほど、その国が理解できるし、理解の程度も深まる」と彼は言う。
「それはそうかもしれないけれど。でも、もうキューバはもう十分に見たと思うけれど・・・」

しかし旅費を考慮すれば、やはりキューバがお買い得になるのだった。それで、今回は、少なくともまだ行ったことがない「Camaguey」(カマグエイ)を訪れることになった。キューバの国の中央にあり、首都ハバナ、そしてサンティアゴ・デ・クーバという町に次いで、3番目に大きい都市ということだ。

「オラ・サン Hola Sun」というキューバ政府と関連をもつ旅行会社を使った。往復飛行機代、1週間のホテル代、そして食費が含まれる費用一切込みの旅行である。格安で、650カナダドル(どんぶり勘定で6万5千円)という価格の時もあり、運がよくて、直前格安の切符が買えれば、一人350ドルと信じられない価格の時もまれにはある。私たちが乗ったチャーター機は「クバーナ」という名前の飛行機だ。旅行したのは2014年5月初旬のことである。


▲黒塗りの飛行機には国名も飛行機の名前もなかった(トロントのピアソン国際空港にて)


▲同じ飛行機でも風景によってこんなに印象が違う。(筆者には)美しく見えるのは椰子の木のせいだろうか(キューバ・カマグエイの空港にて)

機内の3人掛けの席で、私たちの隣に座ったのは、アンジェロという大柄なカナダ人。彼女はキューバ人の知り合いのためのおみやげとして、45キロ相当の荷物を持ってきたそうだ。大人用、子供用の古着や下着、4、5足の古い靴、ノートやペンなどの文房具、シャンプーやトイレットペーパー、薬、洗剤、洗濯用せっけん、等々。45キロといえば、私の体重前後だから、「物」に置き換えれば、私の重さはそういう日常品で置き換えられるんだなあ、と話を聞いていた。

彼女によると、ある偶然でキューバ人家族と知り合い、家族どうしで付き合い始めてもう10年以上もたったということだ。 「今、近所の人たちが、私の家を建ててるの」と言って、彼女は私たちに写真を見せてくれた。

コンクリートのブロックが積み立てられ始めたところで、真っ四角のかわいい家だ。すべて手作業なので、完成するまでには相当の年月がかかるかもしれない。が、そんなことは、全然、彼女は気にしていない。
「多分、このあたりに、窓を作って・・・」と、彼女は、今はまだ青空になっている空間を指差した。

家を建てるとなれば、 水道、下水、電気など専門の職人さんが必要とされると思うけれど、それらも全部、近所の人たちで済ますそうだ。というわけで、彼女は、2、30人の村人を雇っているらしい。「特別、お金持ちではない」と言うアンジェロだが、こんなふうにキューバ人を援助しているのを知って、すごい人がいるんだなと感心した。


さて、機内ではランチが配られた。私はラザーニャを選ぶと、オレンジジュースとロールパンとサラダとケーキが付いていた。ラザーニャでお腹がいっぱいになったので、他のものはそのままにしていた。
すると、アンジェラは言う。
「残ったもの、全部頂いてもいいかしら」
というわけで、夫のも含め、小さなバターまで彼女は自分の袋に入れた。
「食べ物は、なんでも無駄にしたくないの。それに、友達の家族がすごく喜んでくれるし」

いったんアンジェロと話しはじめると、話題はどんどん深まっていく。
「私の友達は、自分の家族のほかに親戚の子も預かっているのよ」とアンジェロ。
「どうしてなの?」
「その子のお母さんが亡くなったからよ」
「まあ、どうして?」
「家庭問題が起きたのよ」
「どんな問題なの?」
「お母さんは、ちゃんとしたキューバ人の夫がいたのに、あるカナダ人男性と知り合って、彼女は、『結婚式』を挙げてしまったの」
「ええっ」
「だから、彼女の夫が、それを知った時、憤慨して奥さんを殺してしまったの」

それまであまり関心のなかった私の夫が聞く。
「そのダンナさんは、捕まったの?」
「もちろんよ。彼は裁判にかけられて、20年だかの禁固刑を受けたの。だから娘は育てられないでしょ」
まるでテレビドラマを見ているような話だ。
「私の友達は、空港に来ているはずだから、着いたら紹介するわ」と言った。

聞いていた通り、カマグエイの飛行場では4、5人の友人たちがアンジェロを待っていた。女の子はピンクのブラウスを着て、とてもかわいい子だった。雨が降っていたので、傘を差して、みんなが笑顔で私のカメラのために並んでくれた。ただし、許可がないので、ここでその写真を掲載できないのは残念である。


▲昼間見たカマグエイの飛行場の建物


▲空港で荷物を待つ人々


▲電化製品であろうか、家族のために持ってきた人

私たちの宿泊先はプリサ・サンタルチアというホテル(3星)だった。
滞在中、ホテルからの一日バス旅行に参加した。無料だったからだ。
まず、「ランチョ・キング」という名前の牧場へ。カウボーイが客を迎え、ロデオ(荒馬乗りなど)を披露した。カマグエイ州は農業が主要産業である。


▲ホテル「ブリサ・サンタルチア」の庭


▲ランチョ・キング牧場ではカウボーイが客を迎えてくれる


▲小学校で生徒におみやげを配る観光客

そのあと、小学校を訪れた。生徒におみやげを配る観光客。この学校では、毎週、ホテルからの客を迎えているので、生徒もそれに慣れているようで、教室も整っていた。

小学校の向かい側にある農家。家には冷蔵庫、テレビがあり、清潔そのものだった。ここで女主人が供してくれたエスプレッソのコーヒーはおいしかった。もちろん、キューバ産である。


▲バス旅行で訪れた農家


▲彼女はこの農家の主(あるじ)である

十分も
話せばすでに
友となり
するめの味か
旅の世界は

(続く)

(2014年8月21日号)



 



 
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