独自のトータルマイムに拍手喝采!
「バスカーフェスト」に来演した池田洋介さん



年々、盛んになっているトロントの夏の恒例行事「トロント・バスカーフェスティバル」。8月21日から24日まで開催され、世界各国から多くのパフォーマーたちが集まり、それぞれの技を競った。今年は日本からひとりのユニークなパフォーマー、池田洋介さんが参加。アーティスティックですっきりした演技「Hello Good Bye」に観客から惜しみない拍手がおくられた。


▲トータルパフォーマーの池田洋介さん(ヤング×ダンダスの路上ステージにて、8月23日撮影)

池田さんのパフォーマンスは、パントマイムとジャグリング、そしてマジックも加え、そこに音楽や映像などを組み合わせる全く新しいスタイルの芸である。決してエキサイティングな芸ではないが、ほのぼのとした中に笑いを誘う「癒やし系聴覚のマイム」とでも言えようか。

そんな彼のプロフィールもユニーク。京都市出身で、1999年京都大学理学部卒。
大手予備校の数学講師を務める傍らパフォーマンス活動を行う。昨年から講師を辞め、パフォーマンス活動に専念することに。現在39歳。

名門、京都大学を卒業して、いわゆる大道芸人になった池田さんに何が彼をパフォーマンスの道へと誘ったのか、そしてその魅力に迫ってみました。

■パフォーマーになったきっかけは?

昔から手品やパズルというものが大好きで、独学でテーブルマジックなどを習得しました。大学に入って奇術研究会に属し、そこで初の舞台を経験する ことになります。そのあと「タネのない」ジャグリングのおもしろさに目覚めて、これもビデオなどから独学で学習しました。

22歳くらいのころにジャグリングを路上で見せる大道芸と出会い、感動し、人前でパフォーマンスをすることにのめりこむようになります。

現在使っている道具などもすべてオリジナルで、マイムと音を組み合わせているのが特色です。


▲巧みな文字合わせ


▲表情豊かなマイム


▲自作の小道具を巧みにあやつる


▲道具がいつのまにか文字に

■カナダでパフォーマンスをするのは初めてですか? 印象は?

トロントの前にミシサウガのポートクレジットでもやりましたが、カナダは今回が初めてです。第一印象は、こんなに世界各国の人が住んでいるとは想像していませんでした。カナダといえばイギリス系白人社会と思っていたのですが、トロントはまさにマルチカルチャーの世界で、驚きました。そのせいか、パフォーマンスの時間帯によって反応が変わるのです。

■これまでにパフォーマンスした国、都市は?

日本各地をはじめ、バンコク(タイ)、ケープタウン(南アフリカ)、リンツ(オーストリア)、ルブリン(ポーランド)、ペリグー(フランス)などです。

■各国で特に思い出に残るエピソードは?

ケープタウンのイベントは初めて単独で行った海外公演だったので、とても印象に残っています。舞台は夜だけだったので、昼間は観光地を巡ったり、 山登りをしたりしていました。特にケープタウンは自然が素晴らしいところで、サファリパークで見た満天の星や、テーブルマウンテンから一望したパ ノラマの景色は生涯忘れないほどの思い出です。

リンツでは夜の特別な舞台に参加させてもらったのですが、僕の芸が終わった直後に割れんばかりの拍手が来て、鳴り止まなくなりました。カーテン コールでもう一度舞台に上がるとお客さんは総立ちで、この瞬間に「あっ、僕の芸は海外でも通用する」と確信できました。本当に素晴らしい瞬間でした。

フランスでは刑務所の中で慰問のパフォーマンスでした。観客は受刑者と看守,刑務所関係者だけで、最初は緊張しましたが、演技が進むうちにだんだん打ち解けて笑いが起こり、喜んでもらえてほっとしました。

■この仕事をやっていて「よかった」と思うことは?

こんなことをやっていなければ一生行くことはなかっただろうなという国に行く ことができることですね。タイや南アフリカは僕の中ではとても危険 なイメージがあったのですが、実際に行ってみると人々はとても優しく社交的で、今では大好きな国になりました。

見知らぬ場所でも、その場所でパフォーマンスをし、観客から歓声や拍手をもらうと、まるで自分がその街の一部になったような気がするのが、僕がとても気に入っている点です。

■ところで、日本の家族の反応は?

僕は3人兄姉の末っ子で、割合自由に育ちました。両親からも「あーしろ、こーしろ」と言われなかったですね。こうして世界中をパフォーマンスして行けるのもそのおかげでしょう。


▲マイムとジャグリングを組み合わせた足投げ帽子かぶせ


▲池田さんの演技に子供たちも大喜び

■将来どのようなパフォーマンスを目指していますか?

今やっているのは10年以上かけてすでにあるものを改善したり、新しい部分を付け加えたりしてできているもので、これからも新しいことをどんど ん取り入れて作品を成長させていきたいと考えています。

ウェブサイト:iky.no-ip.org
Email:ikeikey12358@gmail.com

○  ○  ○

【インタビューを終えて】
サティ作曲「ジムノペディ」のBGMで始まる池田洋介さんのパフォーマンス。冒頭に彼自身、「エキサイティングなパフォーマンスをお望みでしたら、他にたくさんあります」と観客に断ったように、決して奇抜な演技ではないが、どこかほのぼのさせてくれる。殺伐とした今の世の中、池田さんの「Hello Good Bye」パフォーマンスが人々に暖かく迎えられるのだろう。今後のご活躍を期待したい。

〈インタビュア・いろもとのりこ〉

(2014年8月28日号)



 
 


 
 
(c)e-Nikka all rights reserved