【モントリオール世界映画祭】

「ふしぎな岬の物語」吉永小百合=審査員特別大賞
「そこのみにて光輝く」呉美保=最優秀監督賞


8月21日から9月1日までの日程で、第38回モントリオール世界映画祭が開催された。今年は諸事情で開催が危ぶまれていたのだが、地元映画ファンの期待に応えて、74カ国から出品の401作品が上映された(うち51作品が初上映)。また、短編映画の部門では160作品が上映されるなど、盛況のうちに幕を閉じた。
グランプリはメキシコの「完全なる従順」(ルイズ・ウルクイザ・モンドラゴン監督)に贈られた。

今回の映画祭では、19作品がコンペティション部門にノミネートされた。日本の作品は、成島出(なるしま・いずる)監督、吉永小百合さんが主演及び初プロデュースを務めた「ふしぎな岬の物語」と、呉美保(オ・ミポ)監督、綾野剛(あやの・ごう)さん、池脇千鶴さん主演の「そこのみにて光輝く」。
審査の結果、見事、「ふしぎな岬の物語」が審査員特別グランプリを、「そこのみにて光輝く」の呉美保監督が最優秀監督賞を受賞した。

「ふしぎな岬の物語」

吉永さんは、受賞式の挨拶で「このような素晴らしい賞を頂き、私たちスタッフ一同を代表して感謝申し上げます」と流ちょうなフランス語で話した。


▲審査員特別グランプリを受賞した「ふしぎな岬の物語」の主演・吉永小百合さんと阿部寛さん

また、受賞後の記者会見では、「人と人が絆(きずな)を持って生きていくことの大切さをうたっている作品が、外国でこんなふうに受け止めていただけたというのはうれしいし、今、つらくて悲しい思いをしている人が日本でも多いと思うのですが、そういう方たちに希望を与えられたらという思いでいます」と答えた。

「ふしぎな岬の物語」は、作家・森沢明夫氏の小説「虹の岬の喫茶店」が原作で、舞台は、千葉県房総半島、鋸南町の明鐘岬(みょうがねみさき)に実在する喫茶店がモデルとなっている。成島監督と吉永さんが原作にほれ込み、映画化にこぎつけた作品だそうで、主人公の喫茶店の女主人「柏木悦子」を演じた吉永さんにとって、50年以上の映画人生で初めてプロデュースした作品ということもあって、思い入れの深い作品であった。


▲吉永小百合さん


▲吉永さんと阿部さん。後ろには映画「ふしぎな岬の物語」のポスターが・・・(写真:降旗恵/ココモントリオール)

公式上映後の記者会見に、共演した甥(おい)「柏木浩司」役の阿部寛さんと臨んだ吉永さんは、「つらい寂しい状況の中でも明日に向かって生きていくというメッセージを世界中の方たちに送ることができたらという願いを込めて作った作品です」と述べた。阿部さんも「我々は一人で生きているのではなく、それぞれの人生で意味を持つ友人・家族と一緒に生きています。我々はみんな支え合っています」と、映画に込めた思いを語っていた。

「そこのみにて光輝く」

「そこのみにて光輝く」で最優秀監督賞を受賞した呉美保監督は、「みんなでモントリオールに来れたから、それが何よりのご褒美だと思っていたのに、さらにこういう賞を頂いて、サプライズですごくうれしかったです」と受賞の喜びをかみしめた。壇上では、「芥川賞に何度もノミネートされて全部落選した原作者の佐藤さんが報われた気がして、胸がいっぱいです」と挨拶をした。


▲映画「そこのみにて光輝く」関係者の記者会見。(右から)呉美保監督、主演・綾野剛さん、池脇千鶴さん(写真…降旗恵/ココモントリオール)

「そこのみにて光輝く」は、北海道出身の作家で、41歳で亡くなった佐藤泰志(さとう・やすし)氏の原作。函館の短い夏を舞台に、格差社会の底辺で生きる希望を失った若い男女2人が運命的に出会い、あきらめていた人生を取り戻そうとするラブストーリーである。主人公の男性を綾野剛さん、女性を池脇千鶴さんが演じている。

「飛行機や新幹線などの乗り物の中で本とかが読めない、酔ってしまうというか・・・。それがとてももったいなくて嫌です」と語る呉監督。
「思い入れのあるシーンはどこですか?」という質問に、「ラストシーン、つまり終わり方をどうするかというのをすごく考えて何度も脚本家と話し合いをしました。彼らがラストシーンであそこまで最後に行き着いた、もしかして底辺かもしれないけど、その状況の中で朝がきた、ひとつの『きざし』みたいなもの、どんな最悪な状況でも救いはあるという思いをラストシーンに込めました」と答えてくれた。

▲綾野剛さん ▲池脇千鶴さん


公式上映後の記者会見では、愛を捨てた男「佐藤達夫」を演じた綾野剛さんは、「モントリオール映画祭が選出する映画が好きで、念願がかなった。この地で自分たちが作った映画を見てもらえることがとてもうれしい。質疑応答のときも、まずは映画の感想を皆さんが言って下さって・・・。まず自分の気持ちを伝えることって大切だなと思いました。それは日本人の僕らには足りないところだと思います」と、言葉を選びながら自分の気持ちを真摯(しんし)に伝える姿が印象に残った。

一方、愛をあきらめた女「大城千夏」を演じた池脇千鶴さんは、今回の役づくりについて、「この映画は脚本自体とっても生きていて、読みながらいっぱいイメージが浮かんできました。最初に浮かんだことをそのままやっただけです」と笑顔で答えた。

■アカデミー賞外国語映画賞部門出品が決定
「そこのみにて光輝く」が第87回米国アカデミー賞外国語映画賞部門の日本出品作品に決定したことが発表されました。 喜びのコメントが来ました!

綾野剛さん「たいへん光栄です。この作品を、日本映画を届けられるチャンスをいただいて感謝しています」

呉美保監督「私たちの映画が、また世界の人たちに見てもらえるチャンス。ありがたいですね。これまでの奇跡に感謝しながら、また奇跡が起きてほしいな、なんて、ぜいたくなことを考えてしまいます」

〈 リポート・小柳美千世 〉

(2014年9月11日号)



 
 


 
 
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