【インタビュー】

トロント本願寺・遠藤竜平開教使
「皆様と出会いのご縁を大切に・・・」


浄土真宗トロント本願寺の藤井朋文開教使の後任として、9月1日付で遠藤竜平(えんどう・りゅうへい)開教使が就任した。


▲遠藤竜平開教使


▲日本に帰国する前任者の藤井朋文開教使(左)とともに。遠藤開教使とクリスティーナ・ヤンコ開教使(右)

遠藤開教使は埼玉県志木出身の31歳。父親は泌尿器科専門の医師で、川越市の病院に勤務している。
小学校を終えた後、東京・新大久保にある私立海城中学・高校で学ぶ。毎日、満員電車に揺られての通学だった。
「進学校として知られる中高一貫校でしたが、将来、医者を目指していたわけもなく、お坊さんになるなど想像さえしていませんでした」

そうしたある日、学校の図書館で一冊の本に出会った。
「手塚治虫(てづか・おさむ)の漫画『ブッダ』です。これが私と仏教との最初の出会いでした。それまでは特に宗教的に深い考えはなかったのですが、私はその本の仏教の世界観に衝撃を受け、いつか将来は仏教を学びたいと思うようになりました」

じつは、高校時代、勉強中心主義の学校生活で精神的にもあまり楽しいものではなかった。そんな時、姉のクラスメートにお寺の人がいて、その人を通して京都の中央仏教学院の存在を知った。本願寺派の僧侶育成の専門学校である。大学受験の浪人生活をしていた遠藤さんは、中央仏教学院に入学を決意した。
「いま思えば、他力本願ではなかったのかなあと・・・」


▲中央仏教学院の生徒だった当時、同学院の講堂にて。後列右から4人目(2005年、京都)

本科1年、研究科1年の計2年間、寮と学院で修行した。
勤行(ごんぎょう)は厳しかったという。ふだんは朝6時に起床、掃除。法衣に着替えて講堂で45分間の勤行。それから朝食をいただく。スーツに着替えて学院に行って1時間の勤行の後、授業を受ける。昼食は寮で食べて、午後からまた学校で授業。5時から再び勤行。講堂のたたみに正座してお経を唱え、法話を聴くといった日課だった。

「2年間の寮生活を通して、大勢の素晴らしい先生方や先輩、同期の仲間に支えられ、仏教の世界に引き込まれていきました。そして、僧侶の仕事をしたいという気持ちに駆られました」

どうしても僧侶になりたいという強い願望を抑えきれず、中央仏教学院を卒業後、同校の書道の先生で住職のお寺(大阪)で1年間、法務員を務める。初めての寺院生活を経験した遠藤さんは、もっと仏教・浄土真宗について勉強したいと考え、京都の龍谷大学の仏教学科に入学。ここの社会人コースで25 歳から29歳まで4年間、学んだ。

3年生の終わりの春休み、貴重な体験をする。龍谷大学の短期留学プログラム(BIE=Berkeley Internship and English Program)で米カリフォルニア州バークレーに5週間留学したのだ。
最初の3週間はESIという英語学校で英語の学習をし、浄土真宗センターでアメリカの歴史・文化などの授業、あとの2週間はボランティアワークで、環境保護のコースを選択した。

「カリフォルニア州立大学バークレー校や下宿先でインターナショナルな友人ができ、貴重でエキサイティングなアメリカ生活を経験しました」

遠藤さんは、バークレーの浄土真宗センターで開教使の桑原浄信コーディネーターと出会う。ある日、桑原氏が自宅に招いてくれた。食事をいただきながら、桑原氏が言ったことばが「開教使にならないか?」。これが、遠藤さんが開教使になるきっかけを作ってくれたことになる。

「その時は迷いがあったのですが、海外で仏法を広めることは大変チャレンジングな仕事だと考えました。日本に帰り、大学4年になって、その方向に傾いていきました」


▲カリフォルニア州バークレーを拠点として行われる開教使養成研修IMOPに参加した際、通っていた英語学校のサウジアラビアの学生とIMOP生がサウジアラビア料理屋で食事を楽しむ。遠藤さんは奥中央(2013年9月)


▲浄土真宗本願寺派シアトル別院を訪問。右から2人目(2013年11月)

7月、開教使になるための研修、国際伝道講座を本願寺で受講。その後、バークレーを拠点としてアメリカ各地で学ぶ開教使養成の研修 IMOP(International Ministerial Orientation Program)に参加した。
世界各地から開教使が集まるセッションで、青木龍也カナダ開教区総長と会う。そこで青木氏から「カナダで開教使をやってはどうか」と誘いがあった。機は熟していた。喜んでこの話を受ける。
浄土真宗本願寺派僧侶、遠藤竜平さんは、こうして開教使としてトロント本願寺に着任した。

カナダでの抱負は?の問いに、「今まで実に大勢のかたがたとの出会いのご縁に恵まれました。これからも皆様とのご縁を大切に、しっかりと仕事をしていきたい」という答えが返ってきた。

昨今、人々の宗教ばなれの傾向が言われているが、その点についてどう考えているのだろうか。
「仏教でいうと、仏の教えがもたらす智慧(ちえ)と世界観には、ものすごく深いものがあって、世の中の見方を根本的に変える深い洞察があります。力強く生きていくパワー、人生を実りあるものにする、これが世界平和にもつながるのです。私は仏の教えを出来るだけ多くの人に広めたいし、これを皆様と共有できれば、ありがたいです」

遠藤さんは好きな言葉として「自信教人信」を挙げる。これは浄土真宗の七人の高僧のひとりが説いた言葉で、「自ら信心をもって念仏の教えを人に伝えていく」という意味なのだそうだ。
「カナダでこの言葉を実践できるように努力していくつもりです」とファイトを燃やす。活躍が期待される。

〈 インタビュア・色本信夫 〉

(2014年9月18日号)



 
 


 
 
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